47 / 102
Ⅳ 凶禍
無慈悲な一撃
しおりを挟む「あちち、これは。
終焉の日に降るって言う、炎の雨じゃないッスか!
し、死ぬッス、みんな死んでしまうッス‼」
「落ち着くにゃ!」
錯乱するディガロの頭をネムネムが拳骨で叩く。
「あくまで一つの可能性ですが。
G様の精神がまだ完全に乗っ取られていなければ、ヘルキュイアスの魔力を弱らせ魔界に還す事が出来るかも知れません」
「あの魔神を弱らせる?
絵空事を」
「いいえ、絵空事ではありません。
例の洞窟に誘い込めば恐らくは可能でしょう」
「それってネム達が居たところにゃ?」
「はい。
そこまで誘導できれば、私の結界で聖の波動を増幅できます」
「……フライング、C」
失われた翼を再び形成すると、クレードは空へと羽ばたいた。
「C、ショック」
右手から放たれた凸ピンの一撃で、封魔の洞窟が崩壊を始める。
「なっ、なんて事するにゃ?!」
「困るんだよ。
せっかく邪魔者が居なくなるって言うのに、勝手な事をされてはねぇ」
クレードは不敵に笑った。
「あんたは仮にもヴァルサーンの王子にゃっ!
弟を殺す為なら、国が、人類が滅んでもいいって言うにゃか?!」
ラウォール山の空から遠ざかる背中にネムネムが叫ぶ。
「当然だ」
悪びれる気配もなく答えると、クレードの姿は彼方へと消えていった。
「仕方ありません。
こうなっては私達だけ……」
言いかけたセツハの心臓を魔神の黒腕が貫いた。
返り血が頬にかかり、地面に血溜まりが広がってゆく。
ディガロとネムネムはそれをスローモーションのように眺めていた。
「……よくも。
よくも、セッちゃんを」
飛び掛かろうとする弟の腕を素早く掴み、下山道へと放り投げる。
不意に飛ばされて一瞬放心するも、ディガロの怒りが収まる筈もない。
キッと姉を睨んで叫んだ。
「なにすんだっ!」
「ディガロッ‼
姉ちゃんが食い止めてる内に逃げるにゃ!」
緊迫した叫び声にディガロはハッと我に返った。
化け物と対峙するネムネムの顔が恐怖に引きつっている。
「に、逃げるなんて嫌ッス!
俺も一緒に戦うっ、セッちゃんの仇をとるんだ‼」
食い下がるディガロに向け、ネムネムは震える声で言った。
「……姉ちゃんは。
こんなやつにお前まで、殺されたくないにゃ」
友を失った悲しみ。
それはネムネムとて同じだった。
しかし、圧倒的な強者を前に冷静さまで失う訳にはいかない。
人の身では絶対に敵う筈もない神への反抗。
せめて自分が囮となって時間を稼ぐ事で、弟だけでも生き延びて欲しかったのだ。
0
あなたにおすすめの小説
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ
凜
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます!
貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。
前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜
Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。
そのご寵愛、理由が分かりません
秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。
幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに——
「君との婚約はなかったことに」
卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り!
え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー!
領地に帰ってスローライフしよう!
そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて——
「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」
……は???
お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!?
刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり——
気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。
でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……?
夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー!
理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。
※毎朝6時、夕方18時更新!
※他のサイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる