転生者G-転生前はゴキブリでした-

花鳴カナリア

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Ⅳ 凶禍

 星空に誓って

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「ここから先は私の独り言だが」

ファランはGから視線を外すと窓の外を見た。
雲のない夜空に星が煌めいている。

「王都から派遣された警備兵長の話によれば、一週間後。
王国各地に潜伏する反乱軍に対し、大規模部隊を動員しての掃討作戦が行われるらしい。
西のルッツベルク、南のガレムとの睨み合いが続く我が国にとって、連中はまさに獅子身中の虫だからな」
「……つまり、その間隙を突けば」
「残っているのは必要最低限の兵力。
城への侵入も比較的容易かろう」

飛行スキルを使えばここから王国まで半日の距離だ。
いま焦って事を起こすより、有利な展開に持ち込めるのは間違いないだろう。
しかし、それを聞いてGは首を横に振った。

「お世話になった反乱軍の人達を見捨てる事は出来ません」
「貴殿であればそう言うだろうと思っていた。
そこで、再びの独り言だ」

ファランはこほんと咳払いをして話を続けた。
マリエッタが後ろで笑いを堪える。

「いくら警備が手薄になるとはいえ、単独で城に向かっては謀反人として斬られに行くようなもの。
ならばいっそ、この情報を手土産に反乱軍と協力し、討伐隊と入れ違いに王都で騒ぎを起こしてみてはどうだ?
その混乱に乗じてなら、或いは苦難の道にも光明が射すやも知れんぞ」
「ファラン様ったら、大胆!」
「主の独り言を盗み聞くとは。
悪いメイドだな、マリエッタ」

小さな領主はニヤリと笑った。

「どのみち今日はもう遅い。
今晩だけでも頭を冷やし、じっくり考えてみるが良かろう」

言われてGは時計を見た。
そろそろセツハ達も戻ってくる頃だ。

「そうしてみます。
あの、ファランさん」
「なんだ?」
「色々有り難うございます」

見詰められ、ファランの頬が真っ赤に染まる。
恋の花が枯れるには、まだまだ時間が掛かりそうだ。
領主の館を出ると、満天の星が目に飛び込んできた。

「……懐かしいな」

前世でユリカと共に見上げた星空をGは思い出していた。
あの頃はこんな事になるなんて、思ってもみなかった。
世界がこんなに広かったとは。
そして好きな人の傍にいる事が、こんなに大変な事だったとは。
目が覚めれば自分はやはりゴキブリで、これがよく出来た夢なのではないかと思う時がある。
何もかもが儚い幻なのではないかと。
王子として転生し、自由に外を歩き回る事すら禁じられていた生活も。
陰謀によって祖国を追われ、反乱軍のアジトで身を潜めた三年間も。
気が付けばあっという間に過ぎ去ってしまった。
ようやく見付けたユリカと過ごした二週間。
振り向いて貰えないもどかしさを抱えながらも、Gの心は幸せで満たされていた。
あんなにも恋焦がれた人が、同じ種族かたちで、同じ目線で、傍にいてくれると言うこと、話し掛ければ同じ言葉で答えてくれると言うこと。
ゴキブリだった時に何度夢見たか知れない、人間同士であれば当たり前のやり取り。
そんな毎日を絶対に失いたくないと思った。

「待っていて下さい、二本足さん。
必ずGが助けに行きますから」



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