転生者G-転生前はゴキブリでした-

花鳴カナリア

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Ⅶ 王都の夜

 Gと言う名前

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「しかし、ユリカ様。
その者は女とはいえ賊ですぞ。
名前にしても偽名か何かに決まっております」

嘘を見破られた筈なのに、なぜか少し嬉しいGであった。

「偽名だなんて、そんな筈ないわ。
この子の真っ直ぐで純粋な瞳。
とても嘘を吐くような人には見えないもの」

ごめんなさい、ハルナーフさんが本当にごめんなさい。
後ろめたさを感じ、心のなかでユリカに土下座する。

「本当に少しだけ。
ちょうど退屈していたところだったし、クレード様がお戻りになるまでには終わるから」

兵士達は顔を見合わせると渋々折れた。

「良かった。
じゃあ、私の部屋にお連れするわね。
貴方達は交代の時間でしょう?
もう下がっていいわよ」
「そう言う訳には参りません。
私共はユリカ様の身辺警護をクレード王子より仰せ付かっております。
部屋の外で待機し、話が終わり次第その者を牢屋に連行します故、お気遣い無用に御座います」
「私だって冒険者の端くれ、腕には覚えがあります。
女の子一人を相手に遅れを取ったりしないわよ」
「こればかりはご容赦下さい」

アダムス達は一礼してユリカの部屋まで戻ると、扉の前に張り付いた。

「もう、融通が利かないんだから。
ゲボプリコさん、行きましょう」

二人の兵士の間を抜けて扉を開けたユリカに従い、Gは部屋の中に入った。
椅子を勧められ、机に向かい合って腰かける。

「さてさて、貴女は何者なのかしら?」
「こんな格好で解らないかも知れませんが、Gですよ。
二本足さんを助けに来たんです」
「……じー?
にほんあしさん?」

またGと言う名前が出てきた。
二本足さんとは、自分の事だろうか?

「よく解らないけど私はそんな名前じゃないし、人違いじゃないかな?」

ユリカは困惑した表情で答えた。
Gとか二本足とか、ゲボプリコとか、目の前の少女の口をついて出るのは奇妙な名前ばかりだ。
でもあの時たしか、クレード王子も『G』と言っていた気がする。

「ええと、つまりゲボプリコさんがGさんって事?
でも、ちゃんとした名前があるのにどうしてGなの?」
「……本当に記憶を失ってしまったんですね」

ネムネム達の命を救う代わりに転生神が出した条件。
それはユリカからGの記憶を消すこと。
そして、Gに残されていた寿命を死んだ二人に分け与えるというものだった。
いつ命が尽きるか解らない体で、Gはようやくユリカとの再会を果たせたのだった。

「……もしかしたら」
「……?」
「もしかしたら、このまますべてを忘れてクレードと結婚した方が、二本足さんは幸せなのでしょうか」
「……すべてを、忘れて?
貴女、どうしてそんなに悲しそうな顔を」

沈んだ声で呟いたGの言葉は、自分自身に問い掛ける為のものだった。

「ゲボプリコ~!
キジェットの村の機織娘、ゲボプリコはどこなの~?
あれほど迷子にならないでって言ったのに、本当に困った子だわ~~」

その時、塔の下から説明臭い呼び声がした。
王への謁見を終えて、ハルナーフ達がGを迎えに来たのだろう。



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