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Ⅶ 王都の夜
狼、吠える
しおりを挟む「明日は誰も殺さず、皆さんもどうか死なないで下さい」
「あ?
なんだこの青二才は」
「……ジーク。
ハルナーフと同じ転生者にして、この国の第二王子かい」
トルドーラは三角帽子の鍔をくいと上げると、Gを見上げた。
その瞳は白濁しており、視力を完全に失っている。
しかし、彼女は魔術の力で帽子に第三の目を宿す事で、通常の人間よりも遥かに様々な物を見通す力を持っていた。
「死相が見えるね。
それもかなり濃いやつだ」
「そんな事はどうでもいい。
それより、坊や。
さっきの言葉は聞き捨てならねえな」
ザズはそう言うなり、Gの首筋に鋭く尖った刃を這わせた。
「誰も殺さず、だと。
お前はそんな甘い考えで王国軍と戦おうってのか?」
刃先に小さな赤い筋が浮かぶ。
「殺るか、殺られるか。
戦にはこの二つしかねえ。
その覚悟がねえなら、とっとと帰んな」
Gはナイフをそっと撫で、その刃を分解した。
「なっ?!」
驚くザズを見て、トルドーラが腹を抱えて笑う。
「転生者だって言っただろ。
化け物にそんな刃物が効くもんか。
なぁ、ハルナーフ。
お前が連れて来た仲間だよな。
命を張って戦う覚悟のあたいらに、こいつは敵を殺すなと無茶を言いやがる。
その点について、事情の説明があってもいいと思うんだがね」
ハルナーフは目配せでGの了承を得ると、皆に大方の事情を説明した。
「……ずいぶんと胸糞の悪い話じゃねえか。
要はテメエの都合で反乱軍を利用して、俺達に危ない橋を渡らせようって事だろうが」
「……おっしゃる通りです」
「馬鹿馬鹿しい。
あたしらはリーダーであるハルナーフの招集があったから、はるばる王都まで来たんだ。
餓鬼の色恋沙汰に付き合う為じゃない。
惚れた女を助けるだけならアンタ一人でやりな」
「王都で暴れられるなら、俺はどんな理由でも構わんぜ。
もっとも殺さずとなれば、話は違ってくるがな」
「俺も正直、気が進まない。
だが、フロッシーは助けてやれと言っている。
だからお前に手を貸してやってもいい。
反乱軍の幹部の前でそれだけの綺麗事をぬかすんだ。
何かとっておきの妙案でもあるんだろう?」
そんなものはない。
しかし、すぐにバレる嘘を吐く訳にもいかない。
「そんな案は……」
その時、大きな足音と共に山賊風の男達がドカドカと室内に入ってきた。
「よう、ゴキブリ男。
相変わらずしけた面してやがんな。
そんなお前に山賊、改め山賊工房『暁の狼』が、とっておきの品を持ってきてやったぜ。
なぁ、オメエら!」
ブライツの掛け声に狼達が吠えた。
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