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Ⅸ Gとユリカ
支配と抵抗
しおりを挟むもう一度、クレードが剣で死体を刺す。
もう一度、もう一度、何度も、何度も。
「……やめて。
もう、やめて!」
Gのマントが首から外れ、ユリカの足元にふわりと落ちた。
裏地には複雑なルーンが刻まれた魔法陣が描かれている。
-これは、私が考えた魔神召喚の。
「そんな所に仕込んでいたとは、油断のならない害虫だ。
まぁ、死んでしまっては無意味だけどね」
クレードはユリカに刃を向けて笑った。
「いい事を思い付いた。
あの時と同じ質問をしようじゃないか。
これは前世で過ちを犯した君への慈悲だと思ってくれ。
君は本当は僕を愛してる。
そうだろう、ユリカ?」
「誰が、あんたみたいな人殺し!」
クレードは二、三度頭を振ると、ゆっくりとユリカに迫った。
「……どうしてかなぁ。
どうして君だけがいつも、僕の自由にならないんだ!」
「Gのした事は無駄なんかじゃないわ。
ずっと一緒だった私には解る。
あいつは万が一に備えて、私に魔法陣を託したのよ」
ユリカは確信を持ってそう言うと、呪文の詠唱に唇を踊らせた。
「元始の陰翳より生まれし破壊の君王よ。
混沌の翼を纏い、深淵の果てより来れ。
我が血、我が肉、我が骨を以て現世に獄界を顕現せよ」
「……待て、それは」
「G、召喚融合!」
大聖堂の屋根を貫いた雷がGの体を直撃し、激しく揺さぶる。
もうもうと舞い上がる煙の中央で立ち上がったのは、長い触角を額から伸ばした黒色の破壊神だった。
「行かなくてはなりませんね」
天界に召され、地上の様子を見守っていたGに転生神が言った。
「……決着をつけてきます」
「それが良いでしょう。
魔神の支配に抗う術は見付かりましたか」
「いいえ。
結局、人間への憎しみを消す事は出来ませんでした」
「……そうですか。
貴方が魔神に完全に支配されれば、私達は世界の守護者として貴方と戦わねばなりません。
そして神々によって滅せられた魂は転生する事なく、無となって消えてしまいます。
それでも、彼の地へ戻るのですか?」
Gは少しだけ困ったような表情を浮かべ、笑った。
魂が光の球となり、魔神となった現世の肉体へと戻る。
己の心の闇を広げた精神世界で、Gは魔神ヘルキュイアスと対峙した。
-虐ゲラレシ者ヨ。
-破壊ト殺戮ヲ、望ム魂ヨ。
無数の仲間達の死骸が積み上げられた山の頂上に、Gは立っていた。
-罪無キ同胞二仇ナス、人間ガ憎カロウ。
-我ト一ツト成リ、アラユル生命ヲ灰塵トセヨ。
「うぅっ!」
流れ込んでくる強烈な憎悪に呑み込まれそうになるGの手を、誰かが掴んだ。
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