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Ⅸ Gとユリカ
ツケ
しおりを挟む「G、魔神なんかに負けないで!」
現実世界から必死にGへと呼び掛ける声。
魔神の魔力によって現世へと引き戻された魂に向かって、ユリカは叫んだ。
掴んだ手から超回復が始まり、魔神の甲殻が再生されてゆく。
「……人間への、復讐」
真っ赤な瞳に炎をたぎらせて、Gは呟いた。
「人間さえ居なければ、こんな事には」
-憎メ、憎メ。憎悪ト呪怨ヲ我二捧ゲヨ。
このまま魔神に取り込まれ、すべて終わらせる事が出来ればどんなに楽だろうか。
怯えて過ごした日々を忘れ、虐殺された仲間達を忘れ、ただ世界を無へと帰すだけの存在になれたなら、辛い思いをする事も、痛みを感じる事もない。
蹂躙の先にどれだけ多くの悲しみが溢れようと、何も感じなければ、それを愉悦と出来るなら、過去を乗り越えたのと同義ではないか。
自分は最弱の生き物から神に等しき強者となった。
地上に溢れ返る害虫、人間を殺したっていいじゃないか。
どうせ奴等は無力な害虫の気持ちなど、解ろうともしない。
報復して、何が悪い。
「グオォォォーーッ!」
魔神の咆哮がクレードとユリカ、大聖堂の壁を吹き飛ばし、外に避難していた人々を瓦礫が襲った。
下敷きになって助けを求める人間達を見て、魔神が邪悪な牙を剥き出しにして笑う。
人間とは、なんと脆弱な生き物なのか。
炎の雨が降り注ぐ中、ヘルキュイアスは大聖堂から大空に羽ばたこうと両の黒翼を広げた。
「G!」
-ドクン。
少女の声に体が硬直し、動かない。
それは魔神にとって理解不能な現象だった。
「ごめんね……ごめんね。
Gの家族、Gのお友達、Gの仲間。
人間の都合で私達、本当にたくさん殺してきた。
それなのに殺される側になった途端に死にたくないなんて、そんなの許せないよね。
当たり前だよ、ね」
ユリカは崩落する建物の破片を避けようともせず、Gの前にゆっくりと進んだ。
「私達がこれまでしてきた事のツケを払う時だと言うのなら、私には貴方を、魔神を止める事は出来ない。
……だけど」
そっと、醜く変わり果てたGの手を取る。
その瞳にいっぱいの涙を湛えて。
「貴方が本当はどんなに優しい子なのか、私だけは知ってるつもりだよ。
だから……そんな貴方に、大好きなGに、魔神になんて私、なって欲しくない!」
「……ギィ……ボンバジ、さん」
漆黒の甲殻に亀裂が走り、破片がパラパラと床に落ちた。
「そこを退け、ユリカ!」
剣を構えたクレードがGの胸を貫く。
「ギィアアアァァァアアーーーッ!」
魔神はユリカを突き飛ばすと、クレードに鋭い爪を振り下ろした。
受け止めようとした剣ごと胸を切り裂かれ、飛行スキルで空へと逃れる。
「害虫がとんでもない化け物になりやがって。
ユリカ、僕と一緒に来い!
この国を離れるんだ」
急旋回したクレードは、ユリカの腕を強引に掴んだ。
彼のタキシードはもはや真っ赤に染まり、その表情には王子としての気品は微塵も感じられない。
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