転生者G-転生前はゴキブリでした-

花鳴カナリア

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Ⅸ Gとユリカ

 虫の声

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「逃げたければ一人で行きなさい。
私はここでGを待つわ」
「Gだと?!
あんなものがゴキブリなものか。
あれは神、すべてを破壊し尽くす魔神だぞ!
クソ、せっかく父を殺してこの国の玉座を手に入れたと言うのに」

音もなく放たれた魔神の光弾を、剣で弾き返す。
圧倒的なその力をまざまざと見せ付けられ、城の兵士達は己の使命も忘れて立ち尽くすのみだ。
ただ、そんな人混みを掻き分けて動く者の姿があった。

「……姉ちゃん、あれは?!」
「知らないにゃ!
とにかくあんなのが暴れたら、コンバットどころか国が滅ぶにゃよ。
お頭、子分達、あと反乱軍の人も、ショックガンであれを足止めするにゃー!」

Gのスキルが途切れた事に異変を感じて駆け付けた反乱軍の面々が、一斉にレーザーで魔神を狙撃する。
しかし、まるで効果がない。

「全然ダメッス!
こりゃあ逃げた方がいいッス!」
「続けて下さい、皆さん」

背後から声が響き、七つの銀針が魔神の足元に突き刺さった。

「針術結界、黄龍招来!」

天空で結ばれた光の帯が黄金の龍となり、魔神の体を貫く。
魔神は胸を貫通されながらも黄龍の首を捕らえると、真っ二つに引き裂いた。

「……僅かにダメージは与えられましたが。
なんですか、あの怪物は」

表情を滅多に表に出さないセツハが、目を見開いて驚いている。

「やめて!
こんな姿だけど、私の大事な友達なの!」

いつだってそうだったな。
ユリカは前世の事を思い出していた。
受け入れられない容姿をしていると言うだけで、人間はいつも彼らを否定し、忌み嫌い、殺そうとする。
傷付いたGの胸に手を当て、治療するユリカ。

「何やってるッス!
せっかくセッちゃんが与えたダメージを」
「なんでみんな、Gを苛めるの?
なんで殺そうとするの?
どうして同じ生き物として、理解してあげようとしないの?!」

髪を振り乱して叫ぶユリカの前にクレードが着地した。

「気持ち悪いからさ。
不潔だからさ、増えて建物をバイ菌だらけにされちゃ、堪らないからさ!
見つければ殺す、当然だ、何が悪い。
こんな醜悪な化け物を殺して何が悪いんだ!」

ユリカは両手を広げてGを庇った。

「殺す事でしか、なんにも解決できないの?
殺さなくちゃいけない命なんて、本当は何一つ無いんじゃないの?」

傷だらけの体で自分とクレードの間に立つ少女の姿に、再び魔神の心は揺れた。

-何故、斯様ナ一人ノ人間如キニ、我ノ心ハ乱サレル?

「……知りたいですか?」

完全に取り込んだ筈の生け贄の声に、魔神は驚愕した。

「破壊の魔神、ヘルキュイアス。
貴方はGと同じです」

闇で多い尽くされていた精神世界に光が射し、そこに小さな若葉が芽吹いた。

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