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Ⅸ Gとユリカ
決着
しおりを挟む「大切な人達を奪われた事で、貴方もGも乗り越える為の力を欲した。
哀しみを憎しみに、憎悪を力に。
貴方も初めから、世界に破壊をもたらす存在などではなかったのですね」
-覗イタノカ、我ノ記憶ヲ。
「ギリギリまで同化すれば、きっと覗けると思っていました。
ヘルキュイアス、太古の王国の守護神よ。
己を信じ、崇拝していた民を滅ぼされた深い悲しみ、そして恨みが、貴方を魔神の姿へと変えてしまったのですね」
-神代ノ時。
我ヲ慕イ、集ッタ者共ガ居タ。
然シ、戦争ガ始マルト、彼等ハ次々ト命ヲ落トシ、国ハ滅ビタ。
民ヲ護レズシテ、何ガ守護神カ。
以来、我ハ破壊ノ力ダケヲ欲スル存在ト成ッタ。
「……他に道は無かったんでしょうか?」
-……。
「この世界は理不尽です。
G達を創造した神の予想すらも、とっくに越えて一人歩きをしているのですから。
だけど、悲しみを癒す方法は、憎む以外に無かったのでしょうか?」
若葉の上には一匹のゴキブリとなったGがいた。
その数百倍も大きな魔神が、今は大人しく虫の話に耳を傾けている。
「ヘルキュイアス。
憎み、滅ぼし、それで貴方の心は満たされましたか?
長い時を経て、心の傷は癒えましたか?
Gにはそうは思えません」
ゴキブリから少年の姿に戻ると、Gはヘルキュイアスに手を差し伸べた。
「Gと一緒に探しませんか。
誰も傷付けず、大切な人達を守る方法を」
Gの精神世界の壁が崩壊を始め、光が満ちてゆく。
-断ル。
我ノ心ヲ乱シ、懐柔シヨウトハ、食エヌ虫ケラヨ。
不快、実二不快デアル。
小賢シキ汝ノ肉体ナド、我ニハ不用。
二度ト相マミエル事ハアルマイ。
全身を覆っていた装甲から解放され、Gの体が床に倒れた。
「……なんとか。
お帰り願えたみたい、ですね」
「G!」
立ち上がったGの背中にユリカが抱き付いた。
「二本足さん。
ご無事で何よりです」
「この、馬鹿ゴキブリ!
どうしていつも、いつも、そんなに無茶ばかりするのよ!」
「GはただのGですから。
無茶でもしないと大切な人を守れないんです」
照れ臭そうに微笑むGの頭を、ユリカがそっと撫でた。
「優しいGのまま、人間になれたんだね」
「……二本足さん。
あんまり動くと、あの、見えますよ」
視線に気付いて慌てて見ると、ドレスの胸元が破け、ちらりと下着の色が覗いていた。
「どこ見てんのよ、この変態ゴキブリーーッ!」
「見てません、見てません!
ピンクのレースなんて見てま……」
パシーーン、と頬を打つ音が響く。
「もっかい死んで来なさい!」
「イタタタタ。
クレードに刺された時より痛いんですけど」
「知らないわよ、って、クレードは?!」
「ジーク、避けてっ!」
ハルナーフの言葉に咄嗟にユリカを抱えて飛び退くG。
その頭上から放たれた剣の真空波が、石床を紙切れのように切断した。
「戻ってくれてありがとうよ。
これでお前さえ死ねば、すべてが丸く収まる」
「クレェェェェドーーーーッ!」
黒い羽で飛翔し、Gが空中のクレードへと迫る。
ガキンッ!
剣と剣がぶつかり合い、その衝撃で大気が裂けた。
「クハハハハッ!
何度やってもお前は僕には勝てない。
能力の差なんだよ、生まれ持ってのね」
「……たしかにお前は強い。
それはG達が混ざりあった存在だからだ。
お前はGと同じスキルを持ち、力や性質までもそれ以上に多く取り込んだ。
それなら……」
「何をブツブツと!」
目で追えない程の斬撃の応酬。
徐々に押され始めるG。
「それなら、Gが克服したと思っていた弱点は、実はお前に受け継がれていたと言う事になる!」
Gは懐からスプレー缶を取り出すと、クレードの顔に噴射した。
「ギャアアァァァアアアーーーーーッ‼」
空中で悶絶し、真っ逆さまに墜落するクレード。
固い地面に落下すると、白衣の王子は動かなくなった。
「……し、死んじゃった、の?」
訊かれたGは手に持っていた缶のラベルを見せた。
「死なないように作ったんでしょう?」
「え?」
その手に握られていたのは、ユリカが完成させた除虫剤だった。
「これで死ぬのはネジ曲がった根性だけですよ」
Gはにっこりと笑った。
「それ、いったいどこで」
「前世で死んだ後、転生神に無理を言って持たせて貰ったんです。
これは二本足さんの努力の結晶ですからね」
懐かしそうにラベルをさするユリカ。
【使用上の注意】
人体、虫ともに無害な薬品を使用しておりますが、くれぐれも嫌いな上司の顔などに噴射しないよう御注意ください。
ショックで寝込んでしまう場合があります。
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