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終章
Gの選択
しおりを挟む「……終わったのね」
ハルナーフのスキルで武装を解除され、牢屋に連行されるクレードを見ながらユリカは呟いた。
前世から、いや、もしかしたらそれ以前から続いていた因縁への決着。
Gが居なければこの世界でも、自分はあの男に殺されていただろう。
「お疲れ様にゃ~!」
「最後は意外と呆気なかったッスね」
「まぁ、悪党の最後としては、華々しく散るよりよっぽど相応しかろう」
ネムネム、ディガロ、ファランらがG達の周りに集まる。
「皆さんが駆け付けてくれたお陰です。
本当に有り難うございました。
それにしても城の兵士達、やけに大人しくなりましたね」
国王殺害がクレードの仕業であり、Gが第二王子である事が知れ渡ると、彼等は反乱軍との戦いを次々と放棄した。
護るべき主君を失い、完全に戦意を喪失したのだ。
変わり身の早い貴族達はGにすれるだけの胡麻をすると、そそくさとそれぞれの領地に帰っていった。
情けないやら、呆れるやらである。
「ジークぅ、無事で良かっ……きゃあ~!」
ハルナーフは一日一度は転ばなければ気が済まないらしい。
「おぅ、糞チート。
そっちも無事だったみてぇだな」
ザズやレイザーク、反乱軍の面々がハルナーフの後ろにずらりと並んでいる。
彼等はGの願い通りに一人も欠ける事なく、最後まで王国軍を手玉に取ったのだ。
「……これからヴァルサーンはどうなるのでしょうね」
それは誰もが抱いている疑問だった。
「ジークが王様になればいいじゃない~」
「それは名案にゃ」
しかし、Gにその気は毛頭なかった。
「人間への憎しみを抱き続ける者などが、王になるべきではありませんよ。
より良い未来に向けて変わらねばならないのです。
この国も、G自身も」
その言葉を聞き、忙しなく瓦礫の海を往き来していたゲルゼフ大臣が恭しく膝をついた。
「ジークロハネ様。
ヴァルサーン王国はまだまだ戦乱の渦中。
諸国からの侵攻に対抗する為にも、偉大な指導者を必要としております。
……おっと、十秒も過ぎてしまいましたな。
大至急、明日の正午に戴冠式を執り行いますので、その様にお心置き下さい」
「そんな、勝手に決められても。
Gは戴冠式なんてしませんよ?」
「ジークロハネ様。
私も多忙な身。
反論は明日の式で伺います故、これにて失礼」
「あ、ちょっと、ゲルゼフ!」
言うだけ言って、行ってしまった。
優秀なのは良いが、相変わらず人の話を聞かない男である。
「じ、ジークロハネ国王様!」
血相を変えてやって来たのは、ゲボプリコに一目惚れしていた門番だ。
Gは咄嗟に顔を隠した。
「国王なんかじゃありません!」
「そのお顔。
失礼ながらどこかで」
「会ってません、初対面です。
それよりも用件は?」
「……はぁ。
ジークロハネ様に申し上げます。
ルッツベルクとガレムが同盟を結び、二十万の軍勢で我が国に進軍を開始した模様です」
「二十万?!
大変じゃないですか!
早く国王に……」
そこまで言ってGは口を閉ざした。
父はもう居ないのだ。
「我が軍の数は?」
「国境付近に五千。
全軍かき集めても二十万には届かぬかと」
「……また、大勢の人が死んでしまう」
どうして人間は終わりのない争いを続けるのだろうか。
「どうすんだよ、ゴキブリ男。
今回ばかりは殺さず、傷付けずってのは無理っぽいぜ?」
「まるで見計らったように攻めてきたわねぇ」
「……Gが行って両国を説得します」
「脳ミソまでゴキブリサイズかよ、オメエは。
そんなもん、相手が聞き入れる訳ねえだろうが」
「やってみなければ解りません。
フライング、G!」
太陽の光を受け、空に茶褐色の羽が煌めく。
少年は愛しい人を見た。
少女もまた、こちらを見つめ返している。
「Gは人間を傷付けたくないと望みながら、心の奥底では滅ぼしたいと思っていました。
クレードとの戦いは終わりましたが、そんな自分に打ち勝つ為にも行かなければなりません」
「……解った。
行って、そして帰っておいで。
王子でも英雄でもなく、皆から愛される一人のゴキブリとして」
少年の胸に宿る覚悟を知り、ユリカは止める事が出来なかった。
その背中が遠ざかり、星のように小さくなる。
「ずっと、待ってるから」
その数日後。
ヴァルサーン北の国境付近で、第二王子が死んだと言う噂が広がった。
武器も持たずに敵軍に拘束され、そのまま処刑されたそうだ。
しかし、その真偽を確かめるには些かの時を要する。
何せ、ゴキブリとは本当にしぶとい生き物なのだから。
転生者G 第一部 完
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