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第3話
ーーー13年後ーーー
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あれから13年の歳月が流れた。
現在、私、津山萌衣は20歳を迎えた。
私には母のように絵の才能もなく、なりたい夢もない。
小学校の卒業文集には【私の夢は小学校の先生になることです】
なんて響きのいい理想の夢を書いてみたけど、実際はただのフリーターだしバイトも週3日しか働いていない。
とにかく、私は熱しやすくて冷めやすい上にいつも中途半端ですぐに飽きてしまう。
13年経っても子供の頃とは何一つ変わっていなかった。夢もなければ、何がしたいのか、何をしたらいいのかさえまだ見つかっていない。母が有名芸能人でなくてよかったと思った。親の七光りなんて騒がれ、その子供がフリーターなんて週刊誌に取り上げられた日には、多分、私の性格から考えると外も歩けなくなるだろう。
―――それに、卒業文集で書いた「私の夢は小学校の先生になることです」
という世間から見たら立派な夢だろうと思うかもしれないが、それも本当は書くことが見つからず、隣の席の子が書いていたものを見て、適当に書いただけの「私の将来の夢」だった。
私はゴロゴロとベッドに横になりスマホ画面をスライドさせながら「バイト探し求人広告」を見ていた。
その時、「コンコン」とドアを叩く音が聞こえ、私は腰を起こし、その方角に視線を向けた。
「萌衣、ちょっといいか」
その声は私の父、康介(45歳)である。
「あ、うん…」
ゆっくりとドアが開き、父が部屋に入ってきた。
「何? 手短にお願い。私も忙しいし…」
たいして忙しくもないのに、私は父とどう接していいのかわからなくて
そっけない態度であしらう。
「萌衣、お前ももうハタチになった」
「うん。それが何?」
「……それでだ、単刀直入に言うが…」
「うん…」
「この家を出て行きなさい」
「え?」
父が言ったその言葉に、私は一瞬、時間が止まったみたいに唖然とした。
まさか、父からそんな言葉が出てくるなんて思ってもみなかったからだ。
「どうして…?」
私は意味がわからなくて父に聞いた。
「萌衣もハタチになったんだ。そろそろ自立して一人で生きていくことを考えてもいいんじゃないかな」
「でも、私、アパート借りられるほど仕事してないし…貯金もない」
「ああ、それは知っている。だから、これを持っていきなさい」
「え?」
そう言って、父はそっと通帳を差し出す。
「これ…」
そのまま父から通帳を受け取った私は【津山萌衣】名義の通帳に呆然とする。
「雪子が萌衣の為にコツコツと積み立てしていた通帳だよ。雪子が亡くなってからは
俺が引き継いでお前がハタチになるまで積み立てていた」
私はペラペラと通帳をめくっていく。
「え…うそ…こんなに?」
その額に私は驚く。
「300万円はある。しばらくの間、生活は大丈夫だろう。その間に正社員になれる仕事を見つければいいさ」
「お父さん…」
「それからこれは雪子から萌衣がハタチになったら渡してくれと
頼まれていた手紙だ」
「え…」
私は父からその手紙を受け取った―――。
母がそんな手紙を書いていたことさえ、私は全然知らなかった―――。
「はい、わかりました」
私も変わらないといけないと思った。
確かにこのまま、この家にいて何不自由なく暮らせば生活は心配ないだろう。
でも、それでは私の為にならないと、父は思ったのだろう。
「お父さん、私はこの家を出ます」
「そうか…」
父は少し寂しそうな背中を私に向けていた。
「萌衣、これだけは言っておく。たとえ一人暮らしをしても、どこで暮らしていても
「萌衣は俺の娘だから、それだけは覚えといてくれよ」
「うん…。わかってるよ」
「そうか…。俺の話はそれだけだ」
そう言って、父は部屋を出て行った。
歳を重ねるたびに私も父も言葉数が減り、思春期を迎えた頃から私は必要以外は父と距離を置いていた気がする。
でも父は千恵子さんとの間には子供は作らず不器用な父は精一杯、私に愛情を注いでくれていた。
私を突き放すのも父の愛情だったんだよね。
ありがとう…お父さん……
現在、私、津山萌衣は20歳を迎えた。
私には母のように絵の才能もなく、なりたい夢もない。
小学校の卒業文集には【私の夢は小学校の先生になることです】
なんて響きのいい理想の夢を書いてみたけど、実際はただのフリーターだしバイトも週3日しか働いていない。
とにかく、私は熱しやすくて冷めやすい上にいつも中途半端ですぐに飽きてしまう。
13年経っても子供の頃とは何一つ変わっていなかった。夢もなければ、何がしたいのか、何をしたらいいのかさえまだ見つかっていない。母が有名芸能人でなくてよかったと思った。親の七光りなんて騒がれ、その子供がフリーターなんて週刊誌に取り上げられた日には、多分、私の性格から考えると外も歩けなくなるだろう。
―――それに、卒業文集で書いた「私の夢は小学校の先生になることです」
という世間から見たら立派な夢だろうと思うかもしれないが、それも本当は書くことが見つからず、隣の席の子が書いていたものを見て、適当に書いただけの「私の将来の夢」だった。
私はゴロゴロとベッドに横になりスマホ画面をスライドさせながら「バイト探し求人広告」を見ていた。
その時、「コンコン」とドアを叩く音が聞こえ、私は腰を起こし、その方角に視線を向けた。
「萌衣、ちょっといいか」
その声は私の父、康介(45歳)である。
「あ、うん…」
ゆっくりとドアが開き、父が部屋に入ってきた。
「何? 手短にお願い。私も忙しいし…」
たいして忙しくもないのに、私は父とどう接していいのかわからなくて
そっけない態度であしらう。
「萌衣、お前ももうハタチになった」
「うん。それが何?」
「……それでだ、単刀直入に言うが…」
「うん…」
「この家を出て行きなさい」
「え?」
父が言ったその言葉に、私は一瞬、時間が止まったみたいに唖然とした。
まさか、父からそんな言葉が出てくるなんて思ってもみなかったからだ。
「どうして…?」
私は意味がわからなくて父に聞いた。
「萌衣もハタチになったんだ。そろそろ自立して一人で生きていくことを考えてもいいんじゃないかな」
「でも、私、アパート借りられるほど仕事してないし…貯金もない」
「ああ、それは知っている。だから、これを持っていきなさい」
「え?」
そう言って、父はそっと通帳を差し出す。
「これ…」
そのまま父から通帳を受け取った私は【津山萌衣】名義の通帳に呆然とする。
「雪子が萌衣の為にコツコツと積み立てしていた通帳だよ。雪子が亡くなってからは
俺が引き継いでお前がハタチになるまで積み立てていた」
私はペラペラと通帳をめくっていく。
「え…うそ…こんなに?」
その額に私は驚く。
「300万円はある。しばらくの間、生活は大丈夫だろう。その間に正社員になれる仕事を見つければいいさ」
「お父さん…」
「それからこれは雪子から萌衣がハタチになったら渡してくれと
頼まれていた手紙だ」
「え…」
私は父からその手紙を受け取った―――。
母がそんな手紙を書いていたことさえ、私は全然知らなかった―――。
「はい、わかりました」
私も変わらないといけないと思った。
確かにこのまま、この家にいて何不自由なく暮らせば生活は心配ないだろう。
でも、それでは私の為にならないと、父は思ったのだろう。
「お父さん、私はこの家を出ます」
「そうか…」
父は少し寂しそうな背中を私に向けていた。
「萌衣、これだけは言っておく。たとえ一人暮らしをしても、どこで暮らしていても
「萌衣は俺の娘だから、それだけは覚えといてくれよ」
「うん…。わかってるよ」
「そうか…。俺の話はそれだけだ」
そう言って、父は部屋を出て行った。
歳を重ねるたびに私も父も言葉数が減り、思春期を迎えた頃から私は必要以外は父と距離を置いていた気がする。
でも父は千恵子さんとの間には子供は作らず不器用な父は精一杯、私に愛情を注いでくれていた。
私を突き放すのも父の愛情だったんだよね。
ありがとう…お父さん……
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