あまのじゃくの子

神宮寺琥珀

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第37話

100% 恋ですね

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 チン。


 エレベーターが1階まで降りて来ると扉が開いた―――ーーー。


 目の前に広がるエントランスは淡いクリーム色をした清潔感溢れる壁紙と
 さりげなく描かれた六角模様のタイルがオシャレな空間を作り上げている。

 自動ドアの入り口付近の観葉植物も丁寧に管理がいきわたっている。


 清楚なスーツを身に着け、履きなれないパンプスをカタカタと音を鳴らしながら、
 萌衣が直進して行く。入社して1カ月が過ぎたが、ハイヒールじゃなくても
 かかとが高い靴はやっぱり苦手だ。

「これから仕事ですか?」
 
 エントランス共用部分の掃き掃除をしていた藤城が萌衣に視線を向け声をかける。

「ああ、はい、管理人さん。いつも綺麗に掃除してくれてありがとうございます」

「…いえ、これが私の仕事ですから。よく眠れましたか?」

「はい、しっかり睡眠をとったので元気になりました」

「そうですか。それはよかったです。今日の津山さん、とてもいい顔を
していますよ」

「え…そうですかね、、、」
 
 管理人さんは優しい笑みで微笑んでいた。


 不意に見せる春陽はるき社長の笑みと同じ笑顔をしている。

 やっぱり、親子なんだ。

「あ、管理人さん、今日は先に休んでいてください。ホントに何時になるか
わからないし、待たなくていいです」

「わかりました。それじゃ、お気をつけて」

「はい、行ってきます」

「いってらっしゃい(笑)」

 藤城は笑顔で萌衣を見送る。

  
 萌衣は軽く会釈を交わしマンションを後にした。


 本当は春陽はるき社長に会いたかった。

 プライベートじゃなくても、例え仕事だとしても、春陽はるき社長にとって
 ただの従業員の一人だとしても、昨日…いや…翌朝? …深夜に別れたとしても、
 春陽はるき社長に会いたかったんだ……。


 仕事でも何でも、とにかく春陽はるき社長に会いたかっただけだった……。


 はっきり言って、これは恋ですね。


 人は恋をすると、その人しか見えなくなります……

 
 そう、恋の魔法は一度かかれば、なかなか抜け出せないものです。
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