39 / 59
第38話
私は社長の秘書ですから
しおりを挟む
萌衣が会社の前まで来ると、ちょうど正面玄関から出てきた春陽が
会社前に停車している乗用車に乗り込む所だった。
「社長!!」
「ん?」
萌衣に気づいた春陽は行く足を止めて、その視線を萌衣に向ける。
私は春陽社長に駆け寄って行く。
「お前、どうして…」
「お供します」
「休んどけと言っただろ」
「休みましたよ。十分、睡眠をとったので大丈夫です」
萌衣はにっこり微笑むと、
「さあ、早く乗ってください。先方を待たせるわけいきませんから」
そう言って春陽の背中を押して車に乗せた後、自分も便乗する。
春陽の視線が萌衣を見る。
「私は社長の秘書ですから」
真顔で言った萌衣の頬が少しだけピンク色に染まる。
萌衣は正面を向いたまま、恥ずかしさのあまり春陽の顔をまともに
見ることができなかった。
「フッ」
そんな萌衣の横顔を見て、春陽の顔にも綻びが現れていた。
春陽社長が隣にいるだけでドキドキが止まらない。
私、今どんな顔している? 春陽社長は?
どんな顔をしているのだろう……。
「……」
この沈黙がたまらなく痛い、、、何かしゃべらないと……身がもたない、、、
「社長、今日の食事はなんでしょうね(笑)」
「お前が予約したんだろ、料亭松戸屋…」
「…実は麗花さん聞いて。|田処建設の社長さん、食にはうるさいみたいだし…。
料亭松戸屋の料理が好きなんですよね」
「…ああ。他には?」
「え?」
「麗花に聞いたのは…それだけか…」
「ええ、はい…」
「そうか…」
「他にも何かありますか? 何かあるなら教えてくださいよ。
一応、私も知っておいた方がいいかと……」
「……いや、別に。お前には必要ない」
なによ、それは……。隠されると余計に知りたくなっちゃうじゃん。
【料亭 松戸屋】の前―――ーー。
春陽と萌衣を乗せた乗用車が停車する。
「商談が終わる頃、また連絡する」
春陽は運転手に聞こえるように静かに囁く。
「わかりました。私は近くで時間をつぶしていますので…連絡お待ちしています」
「ああ、サンキュ」
後部座席のドアが自動で開き、萌衣と春陽が乗用車の後部座席を降りる。
目の前に見える【料亭 松戸屋】の表札を入ると更に庭があり、昔ながらの古風な
屋敷へ繋がる天然石でできたタイルの道を春陽社長の一歩後ろから
私は進んで行く。植木屋さんによって剪定された見事な出来栄えの
庭木に心まで癒される。道しるべになっている外灯はLED使用のオシャレな
デザインのソーラーセンサーライトである。夕方の空にはまだ反応しないが、
空が暗くなり人の気配をセンサーが認知すれば稼働し暗闇を照らす光の
道しるべへと変わるのだ。
玄関を入ると、「いらっしゃいませ、藤城様。お待ちしておりました」と、
着物を着た仲居さんが出迎えてくれた。
仲居さんは着物が似合う落ち着いた落ち着いた感じの古風な女性だった。
「どうぞ、こちらへ」
仲居さんは私達を誘導するように足音も立てずに静かに進んで行く。
そして、私と春陽社長は仲居さんの後から足を進ませて行った。
私と春陽社長は案内されるまま【梅】と表示された部屋へと入室した。
襖を開けると、そこは落ち着いた感じの和室になっていて、
その中央には長方形の座卓があり畳とマッチしていて癒しの空間を
演出させている。
「お食事はいつ頃、お運びいたしましょうかか?」
「ああ、もう一人来られる予定ですので彼が来た時にヨロシク頼みます」
「承知いたしました。では、ごゆっくり」
そう言うと、仲居さんは品格のある手慣れた手つきで襖を静かに閉め、
部屋を後にした。
「社長、いいお部屋ですね(笑)」
辺りをキョロキョロと見渡し浮かれ気分な心を弾ませ私は言った。
「フッ 」
春陽はそんな萌衣を見て一瞬だけ思わず笑みが零れた。
私は貴重なその一コマを見逃さなかった。
「遊びじゃないんだ。浮かれるなバカ」
「…はい」
「気を引き締めろ。これはビジネスなんだ」
「はい…」
「もしも取引に支障が出たら、すぐに帰らすぞ」
「………は…い…」
その後の言葉がどんなに冷たい言葉だとしても、今の私にはそんな言葉さえも
温かく感じていた。
そして、私は初めて見た春陽社長の優しい笑みに胸がドキドキしていた。
会社前に停車している乗用車に乗り込む所だった。
「社長!!」
「ん?」
萌衣に気づいた春陽は行く足を止めて、その視線を萌衣に向ける。
私は春陽社長に駆け寄って行く。
「お前、どうして…」
「お供します」
「休んどけと言っただろ」
「休みましたよ。十分、睡眠をとったので大丈夫です」
萌衣はにっこり微笑むと、
「さあ、早く乗ってください。先方を待たせるわけいきませんから」
そう言って春陽の背中を押して車に乗せた後、自分も便乗する。
春陽の視線が萌衣を見る。
「私は社長の秘書ですから」
真顔で言った萌衣の頬が少しだけピンク色に染まる。
萌衣は正面を向いたまま、恥ずかしさのあまり春陽の顔をまともに
見ることができなかった。
「フッ」
そんな萌衣の横顔を見て、春陽の顔にも綻びが現れていた。
春陽社長が隣にいるだけでドキドキが止まらない。
私、今どんな顔している? 春陽社長は?
どんな顔をしているのだろう……。
「……」
この沈黙がたまらなく痛い、、、何かしゃべらないと……身がもたない、、、
「社長、今日の食事はなんでしょうね(笑)」
「お前が予約したんだろ、料亭松戸屋…」
「…実は麗花さん聞いて。|田処建設の社長さん、食にはうるさいみたいだし…。
料亭松戸屋の料理が好きなんですよね」
「…ああ。他には?」
「え?」
「麗花に聞いたのは…それだけか…」
「ええ、はい…」
「そうか…」
「他にも何かありますか? 何かあるなら教えてくださいよ。
一応、私も知っておいた方がいいかと……」
「……いや、別に。お前には必要ない」
なによ、それは……。隠されると余計に知りたくなっちゃうじゃん。
【料亭 松戸屋】の前―――ーー。
春陽と萌衣を乗せた乗用車が停車する。
「商談が終わる頃、また連絡する」
春陽は運転手に聞こえるように静かに囁く。
「わかりました。私は近くで時間をつぶしていますので…連絡お待ちしています」
「ああ、サンキュ」
後部座席のドアが自動で開き、萌衣と春陽が乗用車の後部座席を降りる。
目の前に見える【料亭 松戸屋】の表札を入ると更に庭があり、昔ながらの古風な
屋敷へ繋がる天然石でできたタイルの道を春陽社長の一歩後ろから
私は進んで行く。植木屋さんによって剪定された見事な出来栄えの
庭木に心まで癒される。道しるべになっている外灯はLED使用のオシャレな
デザインのソーラーセンサーライトである。夕方の空にはまだ反応しないが、
空が暗くなり人の気配をセンサーが認知すれば稼働し暗闇を照らす光の
道しるべへと変わるのだ。
玄関を入ると、「いらっしゃいませ、藤城様。お待ちしておりました」と、
着物を着た仲居さんが出迎えてくれた。
仲居さんは着物が似合う落ち着いた落ち着いた感じの古風な女性だった。
「どうぞ、こちらへ」
仲居さんは私達を誘導するように足音も立てずに静かに進んで行く。
そして、私と春陽社長は仲居さんの後から足を進ませて行った。
私と春陽社長は案内されるまま【梅】と表示された部屋へと入室した。
襖を開けると、そこは落ち着いた感じの和室になっていて、
その中央には長方形の座卓があり畳とマッチしていて癒しの空間を
演出させている。
「お食事はいつ頃、お運びいたしましょうかか?」
「ああ、もう一人来られる予定ですので彼が来た時にヨロシク頼みます」
「承知いたしました。では、ごゆっくり」
そう言うと、仲居さんは品格のある手慣れた手つきで襖を静かに閉め、
部屋を後にした。
「社長、いいお部屋ですね(笑)」
辺りをキョロキョロと見渡し浮かれ気分な心を弾ませ私は言った。
「フッ 」
春陽はそんな萌衣を見て一瞬だけ思わず笑みが零れた。
私は貴重なその一コマを見逃さなかった。
「遊びじゃないんだ。浮かれるなバカ」
「…はい」
「気を引き締めろ。これはビジネスなんだ」
「はい…」
「もしも取引に支障が出たら、すぐに帰らすぞ」
「………は…い…」
その後の言葉がどんなに冷たい言葉だとしても、今の私にはそんな言葉さえも
温かく感じていた。
そして、私は初めて見た春陽社長の優しい笑みに胸がドキドキしていた。
0
あなたにおすすめの小説
「25歳OL、異世界で年上公爵の甘々保護対象に!? 〜女神ルミエール様の悪戯〜」
透子(とおるこ)
恋愛
25歳OL・佐神ミレイは、仕事も恋も完璧にこなす美人女子。しかし本当は、年上の男性に甘やかされたい願望を密かに抱いていた。
そんな彼女の前に現れたのは、気まぐれな女神ルミエール。理由も告げず、ミレイを異世界アルデリア王国の公爵家へ転移させる。そこには恐ろしく気難しいと評判の45歳独身公爵・アレクセイが待っていた。
最初は恐怖を覚えるミレイだったが、公爵の手厚い保護に触れ、次第に心を許す。やがて彼女は甘く溺愛される日々に――。
仕事も恋も頑張るOLが、異世界で年上公爵にゴロニャン♡ 甘くて胸キュンなラブストーリー、開幕!
---
《完結》錬金術師の一番弟子は国から追われる
小豆缶
恋愛
国一の錬金術師アリエルは、私の師匠であり親代わり。
そんな師匠が、突然国の金を横領して総司令官と駆け落ちした――そんな噂に巻き込まれた一番弟子のミレイユ。
絶対に信じられない。師匠に駆け落ちをする理由がない
理不尽な取り調べに耐え、全てを奪われた彼女は、師匠が残した隠れ家へ逃げ込む。
電気も水道もない自然の中、錬金術の知識だけを頼りに生活を始めるミレイユ。
師匠の教えを胸に、どんな困難も乗り越えてみせる。
錬金術で切り開く未来と、師匠を信じる心。
それが、私の全て――。
真実が隠された陰謀の中で、師匠を巡る愛憎と、少女を支えるレオンハルトと歩む、希望と成長の物語。
『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』
鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、
仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。
厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議――
最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。
だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、
結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。
そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、
次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。
同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。
数々の試練が二人を襲うが――
蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、
結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。
そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、
秘書と社長の関係を静かに越えていく。
「これからの人生も、そばで支えてほしい。」
それは、彼が初めて見せた弱さであり、
結衣だけに向けた真剣な想いだった。
秘書として。
一人の女性として。
結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。
仕事も恋も全力で駆け抜ける、
“冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました
もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる