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第5章:王子と令嬢、そして未来の名前
第60話「白練の間、光の届かぬ円卓にて」
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“未来を担う者たちの集い”――
それは名目にすぎなかった。
本質は、
王都が“ふるいにかける場”。
理想や恋では選べないものが、
この国には確かに存在していた。
***
王都・白練の間。
そこは王宮の奥にある、日光が届かぬ白石造りの広間。
円形の部屋の中心には、楕円に並べられた円卓。
その内側に座るのは“招待された若き貴族”たち、
そして外縁には、目を光らせる“長老評議会”と王家直属の監査役たち。
セシリア=ロートベルクは、肩で息を吐きながら、
白いレースの手袋を整えていた。
鏡に映る自分の顔は、
いつもの少女ではない。
言葉一つ、仕草一つが“意味を持つ世界”に足を踏み入れる者の顔だった。
「……大丈夫。あの人と交わした“言葉”が、
ちゃんと背中にあるから」
誰かの支えではない。
自分の“意志”として、それを握りしめていた。
***
入場の合図と共に、重い扉が開く。
セシリアの名が呼ばれ、視線が一斉に集まる。
「セリーナ公女家令嬢、フェルティナ=セリス」
「西辺境統治家令嬢、クロエ=バーニッシュ」
「王都派閥推薦、セシリア=ロートベルク」
名が並ぶたび、空気が変わる。
だが、そのなかでも――セシリアの名には、異質な波紋が走った。
“王太子が公に名を呼んだ少女”。
同時に、
“家柄の立ち位置が曖昧な、非主流派の令嬢”。
そのどちらもが、
この空間では、試される“矛盾”だった。
***
着席し、儀礼が交わされたあと、
話題は予想通り“王配にふさわしき令嬢とは何か”へと進んだ。
「家柄の格は当然として、
公務への理解、語学、礼法、外交素養――
王配とは“象徴”でもあります」
そう語るのは、白練の間でもっとも権威ある長老のひとり。
「王太子殿下のご意思は尊重いたしますが、
それと同等に、王国の安定を考慮しなければなりません」
まるで、“殿下の意思には穴がある”とでも言いたげな論調。
セシリアは、それでも怯まずに答えた。
「……それなら、わたしがすべきことはただ一つです。
“あなたたちに安心していただける人間”になること。
肩書きでも血筋でもなく、“この国の民のひとりとして”
隣に立つ覚悟を、言葉ではなく、行動で証明していきます」
ざわめく場内。
だが、反論はなかった。
誰もがその瞳に、“揺るがぬ決意”を見てしまったから。
そしてその瞬間――
扉が再び開き、ひとりの男が入ってきた。
王太子・アレン=ヴァルフォード。
彼は何の前触れもなく、
ただセシリアの背に立ち、
その手を取って宣言した。
「“誰がふさわしいか”を決めるのは、僕たちだけでいい。
王族であっても、誰かの定規で測られる必要はない。
この国の未来を、彼女と共に築いていくと、
今日この場で、僕は“王子”としてではなく、“一人の男”として宣言します」
その言葉が、
白練の間の静寂を切り裂いた。
誰もが“決まった未来”だと思っていた場所に、
ようやく――ふたりの自由な選択が刻まれた瞬間だった。
それは名目にすぎなかった。
本質は、
王都が“ふるいにかける場”。
理想や恋では選べないものが、
この国には確かに存在していた。
***
王都・白練の間。
そこは王宮の奥にある、日光が届かぬ白石造りの広間。
円形の部屋の中心には、楕円に並べられた円卓。
その内側に座るのは“招待された若き貴族”たち、
そして外縁には、目を光らせる“長老評議会”と王家直属の監査役たち。
セシリア=ロートベルクは、肩で息を吐きながら、
白いレースの手袋を整えていた。
鏡に映る自分の顔は、
いつもの少女ではない。
言葉一つ、仕草一つが“意味を持つ世界”に足を踏み入れる者の顔だった。
「……大丈夫。あの人と交わした“言葉”が、
ちゃんと背中にあるから」
誰かの支えではない。
自分の“意志”として、それを握りしめていた。
***
入場の合図と共に、重い扉が開く。
セシリアの名が呼ばれ、視線が一斉に集まる。
「セリーナ公女家令嬢、フェルティナ=セリス」
「西辺境統治家令嬢、クロエ=バーニッシュ」
「王都派閥推薦、セシリア=ロートベルク」
名が並ぶたび、空気が変わる。
だが、そのなかでも――セシリアの名には、異質な波紋が走った。
“王太子が公に名を呼んだ少女”。
同時に、
“家柄の立ち位置が曖昧な、非主流派の令嬢”。
そのどちらもが、
この空間では、試される“矛盾”だった。
***
着席し、儀礼が交わされたあと、
話題は予想通り“王配にふさわしき令嬢とは何か”へと進んだ。
「家柄の格は当然として、
公務への理解、語学、礼法、外交素養――
王配とは“象徴”でもあります」
そう語るのは、白練の間でもっとも権威ある長老のひとり。
「王太子殿下のご意思は尊重いたしますが、
それと同等に、王国の安定を考慮しなければなりません」
まるで、“殿下の意思には穴がある”とでも言いたげな論調。
セシリアは、それでも怯まずに答えた。
「……それなら、わたしがすべきことはただ一つです。
“あなたたちに安心していただける人間”になること。
肩書きでも血筋でもなく、“この国の民のひとりとして”
隣に立つ覚悟を、言葉ではなく、行動で証明していきます」
ざわめく場内。
だが、反論はなかった。
誰もがその瞳に、“揺るがぬ決意”を見てしまったから。
そしてその瞬間――
扉が再び開き、ひとりの男が入ってきた。
王太子・アレン=ヴァルフォード。
彼は何の前触れもなく、
ただセシリアの背に立ち、
その手を取って宣言した。
「“誰がふさわしいか”を決めるのは、僕たちだけでいい。
王族であっても、誰かの定規で測られる必要はない。
この国の未来を、彼女と共に築いていくと、
今日この場で、僕は“王子”としてではなく、“一人の男”として宣言します」
その言葉が、
白練の間の静寂を切り裂いた。
誰もが“決まった未来”だと思っていた場所に、
ようやく――ふたりの自由な選択が刻まれた瞬間だった。
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