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第5章:王子と令嬢、そして未来の名前
第70話「王妃として、最初の“間違い”」
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誰もが最初は未完成。
けれど、“間違い”を恐れていたら、
本当の意味で“王妃”にはなれない。
必要なのは、完璧じゃなく――
学び、認め、進み続ける強さ。
***
王宮・西館の応接室。
小さな書き物机の上で、セシリア=リュミエールは頭を抱えていた。
「……な、なんで“葡萄の引換証”が“防衛援助の同意書”になってるの……?」
彼女の手元には、昨日自ら書き上げた“支援品の礼状”。
けれど確認した文官の表情が引きつっていた理由が、ようやくわかった。
『王国として貴国への防衛支援を全面的に了承し、今後の軍事的連携を期待いたします』
「……葡萄、そんなに強い国だったの……?」
そう呟くセシリアに、執務官のひとりが苦笑いを浮かべる。
「陛下……いえ、妃殿下。
“語尾の接続”が一文字違うだけで、国際情勢に大打撃を与えかねません」
「わ、わたし、ただ贈答品のお礼を……!」
「お気持ちは存じております。ですが、この文書、すでに副使いが持ち出しておりまして――」
「……っっ」
セシリアは椅子に突っ伏した。
これが、“王妃”として迎えた朝の、最初の大失態だった。
***
その日の午後。
報告を聞きつけたアレンが、書類を持って駆けつける。
「本当に“大事”にはなってないから安心して。
外交部が急ぎ釈明してくれてる。ぶどう農園との軍事連携はなかったことに」
「……わたし、ほんとにごめんなさい。
あなたの顔に泥を――」
「泥なんかじゃないよ。
少なくとも、君は“自分の言葉で何かを伝えようとした”。
僕は、それが何より大事だと思ってる」
その言葉に、セシリアはそっと顔を上げる。
「……間違っても、隠さず笑えるようになりたいわ。
“王妃だから”じゃなくて、
“あなたの隣にいるわたしだから”って理由で、立ち直れるように」
アレンは頷き、
彼女の手に小さな羊皮紙を差し出す。
そこには、彼がその場で書いた、たったひとこと。
『間違えたからといって、“物語”が止まることはない。』
「ほら、“間違い”って、物語の起伏を作るためにあるんだから」
セシリアは、それを受け取って微笑んだ。
「……じゃあ次は、ぶどうじゃなくて、ちゃんと“言葉”を実らせるわ」
ふたりの笑い声が、王宮の奥に響く。
そうして、“王妃としての最初の一歩”は、
失敗と笑顔の両方で彩られた。
けれど、“間違い”を恐れていたら、
本当の意味で“王妃”にはなれない。
必要なのは、完璧じゃなく――
学び、認め、進み続ける強さ。
***
王宮・西館の応接室。
小さな書き物机の上で、セシリア=リュミエールは頭を抱えていた。
「……な、なんで“葡萄の引換証”が“防衛援助の同意書”になってるの……?」
彼女の手元には、昨日自ら書き上げた“支援品の礼状”。
けれど確認した文官の表情が引きつっていた理由が、ようやくわかった。
『王国として貴国への防衛支援を全面的に了承し、今後の軍事的連携を期待いたします』
「……葡萄、そんなに強い国だったの……?」
そう呟くセシリアに、執務官のひとりが苦笑いを浮かべる。
「陛下……いえ、妃殿下。
“語尾の接続”が一文字違うだけで、国際情勢に大打撃を与えかねません」
「わ、わたし、ただ贈答品のお礼を……!」
「お気持ちは存じております。ですが、この文書、すでに副使いが持ち出しておりまして――」
「……っっ」
セシリアは椅子に突っ伏した。
これが、“王妃”として迎えた朝の、最初の大失態だった。
***
その日の午後。
報告を聞きつけたアレンが、書類を持って駆けつける。
「本当に“大事”にはなってないから安心して。
外交部が急ぎ釈明してくれてる。ぶどう農園との軍事連携はなかったことに」
「……わたし、ほんとにごめんなさい。
あなたの顔に泥を――」
「泥なんかじゃないよ。
少なくとも、君は“自分の言葉で何かを伝えようとした”。
僕は、それが何より大事だと思ってる」
その言葉に、セシリアはそっと顔を上げる。
「……間違っても、隠さず笑えるようになりたいわ。
“王妃だから”じゃなくて、
“あなたの隣にいるわたしだから”って理由で、立ち直れるように」
アレンは頷き、
彼女の手に小さな羊皮紙を差し出す。
そこには、彼がその場で書いた、たったひとこと。
『間違えたからといって、“物語”が止まることはない。』
「ほら、“間違い”って、物語の起伏を作るためにあるんだから」
セシリアは、それを受け取って微笑んだ。
「……じゃあ次は、ぶどうじゃなくて、ちゃんと“言葉”を実らせるわ」
ふたりの笑い声が、王宮の奥に響く。
そうして、“王妃としての最初の一歩”は、
失敗と笑顔の両方で彩られた。
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