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第5章:王子と令嬢、そして未来の名前
第71話「はじまりの朝食、ふたりの席」
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“夫婦”という言葉は、
ただの契約でも、形だけの関係でもない。
それは、日々を重ねていく中で、初めて育まれていくもの。
最初の朝は――少しぎこちなく、でもどこまでも愛おしい。
***
王宮・私室階の食堂。
朝の陽がカーテン越しに柔らかく差し込む室内で、
ひときわ静かな“特別な食卓”が整えられていた。
アレンとセシリアが“夫婦”として迎える、最初の朝。
「……あの、気のせいかもしれないけど……」
セシリアはバターを塗ったパンを手にしながら、隣をちらりと見る。
「……アレン様、ずっとこっちを見てない?」
「うん、見てるよ」
「理由は?」
「王妃になった君の“寝起き顔”が見られるのは今朝だけかもしれないから」
「…………ッ!」
あまりにも自然な笑顔で言うものだから、
セシリアはうっかりパンを落としそうになった。
「も、もっと……こう、普通にしません?
お茶を飲むとか、新聞を開くとか、王子っぽく!」
「でも王子は今、“君の隣にいる夫”だから、王子っぽくする必要はないんだよ」
「もう、ほんとにずるい……!」
真っ赤になった頬を両手で押さえながら、
セシリアは紅茶に口をつける。
それだけで、ようやく少し落ち着いた。
***
ふと、アレンがパン皿の下から小さな封筒を取り出した。
「そういえば、これ。君宛に昨日届いてたんだ。
王宮の事務局じゃなくて、学院の旧教官から。
“個人的な礼状”らしい」
「……学院から?」
封筒を開くと、中には簡潔な手紙。
『セシリア=リュミエール様
ご結婚、心よりお祝い申し上げます。
あなたが“教室で涙を隠していた日”のことを、
私は今も忘れていません。
どうか、その涙の続きを、
誰よりも幸せな記憶に塗り替えていけますように。
――あなたが“人に選ばれたこと”を、
これからはどうか、あなた自身で“誇ってください”』
読み終えたセシリアは、そっと手紙を畳む。
「……あの日、教室を出るまでに……ずっと、手が震えていたの。
誰にも見せたくなかった。
でも、ちゃんと見ていてくれた人がいたんだね」
「うん。そして、今ここには、君の隣に立ちたい人が、ひとりいる」
アレンのその言葉に、セシリアは深く頷いた。
「なら、わたしも“隣にいる自分”を、少しずつ誇れるように……なってみせる」
パンをかじる音と、カップの重なる音。
そして、それを包む笑い声。
その食卓に並ぶのは、王族の格式ではなく――
“ふたりで作る家庭”という、小さな奇跡だった。
ただの契約でも、形だけの関係でもない。
それは、日々を重ねていく中で、初めて育まれていくもの。
最初の朝は――少しぎこちなく、でもどこまでも愛おしい。
***
王宮・私室階の食堂。
朝の陽がカーテン越しに柔らかく差し込む室内で、
ひときわ静かな“特別な食卓”が整えられていた。
アレンとセシリアが“夫婦”として迎える、最初の朝。
「……あの、気のせいかもしれないけど……」
セシリアはバターを塗ったパンを手にしながら、隣をちらりと見る。
「……アレン様、ずっとこっちを見てない?」
「うん、見てるよ」
「理由は?」
「王妃になった君の“寝起き顔”が見られるのは今朝だけかもしれないから」
「…………ッ!」
あまりにも自然な笑顔で言うものだから、
セシリアはうっかりパンを落としそうになった。
「も、もっと……こう、普通にしません?
お茶を飲むとか、新聞を開くとか、王子っぽく!」
「でも王子は今、“君の隣にいる夫”だから、王子っぽくする必要はないんだよ」
「もう、ほんとにずるい……!」
真っ赤になった頬を両手で押さえながら、
セシリアは紅茶に口をつける。
それだけで、ようやく少し落ち着いた。
***
ふと、アレンがパン皿の下から小さな封筒を取り出した。
「そういえば、これ。君宛に昨日届いてたんだ。
王宮の事務局じゃなくて、学院の旧教官から。
“個人的な礼状”らしい」
「……学院から?」
封筒を開くと、中には簡潔な手紙。
『セシリア=リュミエール様
ご結婚、心よりお祝い申し上げます。
あなたが“教室で涙を隠していた日”のことを、
私は今も忘れていません。
どうか、その涙の続きを、
誰よりも幸せな記憶に塗り替えていけますように。
――あなたが“人に選ばれたこと”を、
これからはどうか、あなた自身で“誇ってください”』
読み終えたセシリアは、そっと手紙を畳む。
「……あの日、教室を出るまでに……ずっと、手が震えていたの。
誰にも見せたくなかった。
でも、ちゃんと見ていてくれた人がいたんだね」
「うん。そして、今ここには、君の隣に立ちたい人が、ひとりいる」
アレンのその言葉に、セシリアは深く頷いた。
「なら、わたしも“隣にいる自分”を、少しずつ誇れるように……なってみせる」
パンをかじる音と、カップの重なる音。
そして、それを包む笑い声。
その食卓に並ぶのは、王族の格式ではなく――
“ふたりで作る家庭”という、小さな奇跡だった。
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