誤った世界に誤って転生、俺に謝れ

夏派

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第1章 

第5話 距離が正確に分からなくなる……これがお酒だよ

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 パーティ結成の手続きはあっけなかった。
 もちろんこの世界はよくある異世界作品と一緒。冒険者カードのない俺は、良くある水晶玉に手をかざして自身の適性を測った。結果は言わなくても分かるだろう。
 俺には最強能力も逆に最弱能力も何もない。
 ギルドの掲示板でクエストを選択して俺たちは初クエストに出かけた。

「さぁとりあえず討伐してちゃっちゃっと帰りますか」

 そういう彼女の背中には大きな樽が背負われていた。

「なんだっよそれ!! これからクエスト行くのに何で荷物持ってやがる」
「何よ文句言って。どうせ何もできないやらない負け組のくせに」
「…………その言い方は流石にひどくないか」
「第一ね、これはすいぶんほきゅーよ。すいぶんほきゅー」
「水分ってどうせアルコールだろ?」
四捨よんすて五入ごいりすれば、アルコールも水と一緒よ一緒」
「そうかお前はもうお酒に飲まれてしまっているんだな」
「哀れな目で私を見るな! それにいいのよ、私の夢はお酒の海に溺れることよ」
「現世に帰るわけじゃねぇのかよ」

 まぁ酔っ払っても無チートの俺よりは確実に強いだろ。そう思いながら俺たちは街の近くにある森へと向かう。

「今回はどんなモンスターを討伐する予定なんだ? 人生初クエストだから能力ないとはいえどれくらい戦えるか確認したいんだけど」
「ん? 森の覇者ウェポンタイガーよ」
「なんだって? 覇者だと? あとなんだウェポンって」
「そりゃそうよ。私の力を改めて誇示するなら誰でも簡単にクリアできるクエストじゃなくて、誰もが苦戦するクエストを簡単にクリアしないと。それにアンタは戦わなくていいわよ。どうせ私の一振りで終わるのだから」

 流石は黒髪転生者というべきか、サナは背中に背負った大樽のホースを持つと自分の口に入れて、アルコールを吸収する。

「うぷっ。ここひと月飲み過ぎたからかしら、ちょっと気持ち悪いわね」
「…………おいお前、戦闘中にアルコールでダウンしたら知らんぞ」

 俺が見捨てる宣言をするとサナは、だいじょーぶ、私せいきょーだから。とろれつの回らない口調でブイマークをしてきた。
 こいつほんとに大丈夫か。

 B分後

 そんな俺の心配をよそに、背の高い草が生い茂る森の中をひたすら歩き続けた。
 異世界に来て初めての探索となるが自分の体力のなさを思い知らされる。転生時に何かしらの強化があったわけでないため、現世にいた身体能力そのままだ。

「…………はぁはぁ。23歳にはキツい道のりだよこの森は」
「アンタ23だったのね。私より若いのに何へばってるのよ」
「私より若い? サナお前いくつだよ」
「26よ」
「……………………」
「何よその顔」
「いや。(コイツ26歳ってまじかよ。そこまでの年齢なのにいまだに酒に飲まれてるのかよ。アホだな)」
「…………全部聞こえてるわよ、アホ」

 そんな会話をしながら森を進んでいた刹那。
 爆ッッ!! まるで大砲が撃ち込まれたような音が響いた。
 それと同時に俺は首元を強く掴まれて、歩いていた獣道から、横の茂みに飛ばされた。
 痛ぇと叫ぶ間もなく、俺たちがいた場所に何かが着弾し、炎をあげて燃えた。

「な、なんなんだよ!!」
「ウェポンタイガーよ。奴が私たち目掛けて狙撃したの。距離はそうね……だいたい500メートルくらい離れているかしら」

 いきなりの狙撃に対しても動じないのは、流石黒髪転生者といったところか。
 短い黒髪をなびかせながら彼女は腰に刺した刀に手を当てる。

「さっきも言ったけど、標的との距離はだいたい500メートルよ。まだ距離はあるとはいえ、慎重に行きましょう」
 
 そう言って茂みから元いた道に彼女は戻る。
 置いていかれてると困る俺はサナに付いて行く。
 刹那。
 咆ッッ!!
 巨大な獣声が聞こえたと思ったら、目の前に5メートルはあろうモンスターがいた。四足歩行のモンスターはまさに虎だった。動物園にいるタイガーとの違いといえばその大きさと頭にある砲台だろう。
 そのモンスターの気迫に押されることもそうだが、俺がツッコみたいことは他にあった。

「お前!! 500メートルじゃねぇのかよ?!!」

 あんなにカッコつけて距離語っていたのにさぁ!!

「…………知ってるか少年。距離が正確に分からなくなる……これがお酒だよ」

 コイツを本気でぶん殴りたい。

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