誤った世界に誤って転生、俺に謝れ

夏派

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第2章

第14話 お酒を呑まないゲームに価値なんてないわよ

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「…………な、なんでアーシが荷物運ぶことになってるのよ」

街を出発して約Q時間、流石に歩くのがキツくなってきた頃に、シーナは息をゼェーゼェーさせながら荷物を運んでいた。

「しょうがないだろジャンケンに負けたのだから」
「負けたって……あの場面はどっからどう見てもナリカズが負ける場面じゃない。なんでアーシが負けるのよ」
「そりゃお前さんのキャラがパッとしてないからだろ」
「アンタに言われたらお終いよサムライ。『オレ』でしか区別されてないくせに」
「黙れ! オレの活躍はこれからなんだよ!」

 何やら後ろの方で醜い争いがされているが俺には関係のないことだ。
 何せ私主人公ですからね。
 しかし歩き始めてまだ大した時間が経ってねぇのが萎えポイントだな。流石にただ歩いているだけじゃ飽きる。

「なーサナ、暇なんだけど」
「…………アンタその声掛けなんてしたらモテないわよ。あっモテたことなかったか」
「…………彼氏いない歴=年齢」
「だ、誰がだ!!!」
「まぁモテない女は置いといて、なぁアサとシーナも暇だろ?」
「あ? まぁオレはこの酒呑女を煽ることで楽しめてはいるけど、暇といえば暇だな」
「ゼェーゼェー、あ、アンタ、アーシのこの状況を見てどこが暇そうに見える?」
「おっし、全員暇か」

 俺は全員の状況を確認すると、1番前を歩くサナに再度声をかける。

「サナ、みんな暇みたいだしゲームをやろうぜ」
「ゲーム?」

 時折周囲の状況を確認するために首を振る彼女は俺を見る。

「ああ勝った奴は今日、テントの中で寝袋で寝ることができるってはどうだ?」
「「「なっ」」」

 同時に3人が歩く足を止めて俺に注目した。

「へぇー面白そうじゃない。それで何ゲーム何ゲーム何ゲーム?」
「呑みゲーのテンションでたかるな。呑まねぇよ道中だぞ」
「アンタ、お酒を呑まないゲームに価値なんてないわよ!!!!!!!」
「俺はここまで恥ずかしい名言を見たことがない」

 精神年齢大学生のサナを置いて、俺はアサとシーナの反応を待つ。

「オレは問題ないな。普通に賭けがあるゲームは好きだ。ついでにビリにも罰ゲームがあるといいな」
「アーシはとりあえずなんでもいいわ。ただそこの刀が言ってた罰ゲームなら、今からあとは帰りも含めて全部荷物持つとかはどうよ」

 まー確かにそれは罰ゲームとしてはなかなかに重いな。俺なんて他の人より筋力もないわけだし、負けたら流石にキツい。

「いいわね、負けたらそうしましょう! それで肝心のゲームは何にするのよ」

 ああそれならと俺はポケットに手を突っ込みあるものを出す。

「ババ抜きで決めようじゃないか」
「…………は? ババ抜き? アンタどんなセンスよ」
「そもそもババ抜きなんて歩きながらできねぇじゃねぇか」
「え? つまり一回休めるってこと?」

 三者三様の反応を見ながら、俺は続ける。

「ああ座ってこの場でやる。ババ抜きなら1位とビリを決めることができるだろ? 多少の運と実力が混ざり合った完璧なゲームだ」
「…………ほぼ運ゲーじゃないそれ」
「おほん、まぁ兎にも角にもこれで決めようぜ」



 そんなわけで俺たちは道の真ん中お構いなく座る。それぞれの手には配布されたトランプがある。
 さて俺の手持ちはダブったやつを捨てて、残りは6枚か。
 現在の俺の手持ちにはババはない。

「さぁ荷物持ちと寝袋睡眠をかけた勝負を始めよう」

 俺がサナ、サナがアサ、アサがシーナ、シーナが俺のカードを引く順番だ。
 5巡目までは特に問題なく進む。カードを捨てることもあればステイの時もある。
 さて俺の枚数が残り3枚の時に事件は起きた。
 サナの持つカードに手を伸ばした時に、そのカードが動かない。

「…………おいサナ……お前そのカード離せよ」

 サナは強くカードを掴み、俺の手元に行くことを拒む。

「あら? なんのことかしら? 別に私は強く掴んでなんかないわよ。むしろアンタの力が足りないのでは? おほほほ」
「野郎! お前絶対ジョーカー持ってんじゃねぇか」
「じょおか? それは何かしら? どこかの丘かしら?」

 とぼけやがってクソやろう! と思うが、俺のパワーじゃ彼女のカードを抑える力に打ち勝てないので、仕方なく力が唯一入ってないカードを取る。
 …………やっぱジョーカーじゃねぇか。あの女ッ!
 なら俺もやるしない。

「…………おいせこいぞ、せこカズ」
 
 シーナが俺のカードを引くターン。
 俺はジョーカー以外の3枚のカードを背に隠し、ジョーカーのみをシーナに見せる。

「せこいとはなんのことだ?」
「他のカードはどこ隠してるんだよ!」
「他のカードはあれだ! 家出してる! まずはこのカードを仲間にするんだ!」
「何言ってんのかわけわかんねぇよ、モブ主人公!!」

 とシーナは豊かな胸元から拳銃を取り出すと、俺が避ける暇なく撃ち込む。

「なっ……!!」

 俺はくらりと体を倒しそうになる。
 そして自分の意思とは無縁の行動を取る。背に隠していたカード3枚をサナアサシーナの前に差し出し、

「どうぞお好きなカードを取ってください」

「「「ほぉ」」」

 しまった。これはシーナの催眠魔法か! 俺は操られて……いる?
 気づいた時には時すでに遅し。俺の手元にはババ1枚、他の3人はカードを捨て場に置いていた。

「よーし上がった上がった」
「ふーこれでビリはナリカズね。弱いわねアンタ」
「なっ?! お、おまっ! これで上がりはねぇだろ! ズルいぞ!」
「はぁ? そもそもアンタがカードを隠すとかいうせこい手段取らなければこうはなってないわよ」
「いやいや! 第一にサナ、お前がカードを離さなぶっ」

 サナは俺の顔面を握力ゴリラで握る。

「……最初に不正を働いたのはアンタよね……?」
「い、いやサナおま、痛い痛い痛い!! あーもー俺でいいよ!!」

 そう。いい子ね。と彼女は俺から手を離す。

「さぁビリのアホカズが荷物運ぶとして、私たちはローテーションで寝袋でも使いましょうか」

 俺はこの女を本気で悪魔だと思った。
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