光と影

ロキ

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第一話「双子の誕生」

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雪が静かに降り積もる2月の深夜、東京都内の高級住宅街にある聖マリア病院の産婦人科病棟で、一組の双子の女児が誕生した。時刻は午後11時58分と午後11時59分。わずか1分の差で生を受けた二つの命は、まるで鏡に映したように瓜二つだった。
「おめでとうございます。とても健康な双子の女の子です」
担当医の村井医師は、疲れた表情を見せる母、篠原真理子に優しく微笑みかけた。
産声を上げた瞬間から、二人の赤ちゃんは不思議なほど静かだった。まるで互いの存在を確かめ合うように、小さな手を伸ばし合う様子に、立ち会った看護師たちも思わず目を細めた。
ベッドの傍らで、父親の篠原健一が安堵の表情を浮かべている。一流商社に勤める健一は、この瞬間のために重要な海外出張さえキャンセルしていた。
「麗子と美咲…」
真理子は小さくつぶやいた。
「素晴らしい名前です」
健一は妻の手を優しく握りしめた。
双子の誕生は、篠原家に大きな喜びをもたらした。しかし、その幸せな瞬間は、やがて訪れる悲劇の序章に過ぎなかった。
翌朝、病室に差し込む朝日が、新しい一日の始まりを告げていた。真理子は、隣のベビーベッドで眠る二人の娘を見つめていた。麗子は薄いピンク、美咲は薄い水色のリボンを付けられ、それが唯一の見分けるポイントとなっていた。
「本当に瓜二つですね」
朝の回診に来た村井医師が言った。
「一卵性双生児は、DNAが全く同じなんです。まさに鏡に映ったような存在と言えますね」
真理子は微笑んだが、どこか不安げな表情を浮かべた。
「先生、二人とも本当に大丈夫でしょうか?」
「はい、心配ありません。体重も身長も、ほぼ同じです。強いて言えば、麗子ちゃんの方が一分早く生まれただけ。でも、そんなことは些細な違いですよ」
その言葉に、真理子は少し安心したように見えた。しかし、彼女の心の奥底には、言い表せない不安が残っていた。
健一は仕事の合間を縫って、頻繁に病室を訪れた。
「二人とも、本当に可愛いな」
そう言いながら、健一は赤ちゃんたちを優しく見つめた。しかし、その瞳の奥には、何か複雑な感情が潜んでいるようにも見えた。
退院の日が近づくにつれ、病室には祝福の花が溢れた。健一の両親からは、高級なベビー用品一式が贈られ、真理子の実家からは、手作りのベビー服が届いた。
「お二人とも、これからどんな子に育つのかしら」
担当の看護師が言った。
「きっと素敵な姉妹になりますよ」
真理子はそう答えながら、二人の娘を交互に見つめた。
退院の日、真理子は二人の赤ちゃんを抱きながら、病室の窓から外を眺めた。雪は既に溶け、早春の陽光が街を明るく照らしていた。
「さあ、家に帰りましょう」
健一が優しく声をかけた。
その時、誰も気付かなかった。この幸せな瞬間が、やがて大きな波紋を呼ぶことになるとは。そして、双子の運命が、予期せぬ方向へと進んでいくことになるとは。
帰り道、高級外車の後部座席で、二人の赤ちゃんは静かに眠っていた。真理子は時折、後ろを振り返っては、その寝顔を確認した。
「これから三人で頑張っていこうね」
真理子は小さくつぶやいた。
「四人だろう?」
健一が軽く笑いながら言った。
「ええ、もちろん」
しかし、その会話の中にある違和感。それは、まだ誰にも気付かれていなかった。
その日の夜、篠原家の豪華な邸宅で、新しい家族の生活が始まった。二階の広いナーサリールームには、二つの白いベッドが用意されていた。
「麗子、美咲、ようこそ家へ」
真理子は二人を抱きしめながら言った。
窓の外では、また雪が降り始めていた。白い雪が、新しい命の始まりを祝福するかのように、静かに舞い落ちていく。
しかし、その純白の雪の下には、誰も知らない影が潜んでいた。それは、15年後に明らかになる衝撃的な真実の予兆だった。
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