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簡単な魔法に失敗して子供ができてしまったんですと謝って、レオは多少は驚くものの、いつものように穏やかに受け入れてくれて、あわよくばじゃあ責任取るよとかお妾さんにするとか囁いて欲しかった。あの手で夜寝るときみたいに背中を撫でて欲しかった。私がお腹の子に感謝したように、彼にも喜んで欲しかった。そしたらどんな不鮮明な未来でも私はがんばろうと思えただろう。
「だけど、そもそも彼が喜ばないかもしれません」
「なぜですか?」
「だって、ほら、冷静に考えてみてください。私と彼は恋人ではありません。喜ぶような関係なら、初めから恋人関係でしょう」
「んんんんんんんんんん」
「ギリアムさん? お腹痛いですか? というか私の話ばっかりでつまらないでしょう」
「その恋人関係って、どうやったら恋人なんですか? えっと、大体原因がわかってきた、わかってきたんですが、でもちょっとまだ腑に落ちない。なぜ彼は貴女のことを恋人じゃないと?」
「なぜって」
「ええ、なぜ?」
「一度もレオは私に好きだとは言わなかったから?」
「………本当に?」
「え、ええ…っていうか、ギリアムさんがこだわる必要のある話では」
ギリアムさんが突然頭をぐっしゃぐしゃに抱えて、テーブルの何もない一点を見つめている。
まるで何かを思い出そうとしているように。
「ギリアムさん?」
「…………」
呼びかけても答えない。
「……ぁ…………で……ふぁ………ぁ」
なんだかわかる。多分今、この人は此処にはいない。
「…のと………ぁ……」
あれ
「ギ リ ア ム さ ん?」
「…………ん……ぁ………」
急にゾクッとした。
私は激しく知っているこの感じ。
頭の中で稲光のようにフラッシュバックが起こり、ひとつの可能性が身体を貫いた。
や ば
私はガバリとのけぞりながら立ち上がる。
その一瞬で目の前の凡庸な顔の男が変化する。
転移しようとした矢先、腕を取られる。
「…っ」
「行くな!」
転移が出来ない。私は涙目で動揺した。なんで、転移ができない!
目の前の男に強く掴まれた手首が燃えるように熱い。
「行かせない。まだ話の途中だよ、クラウディア」
「レオ」
「僕は本当に、言わなかった? 一度も?」
「今そこを掘り下げる必要はないんじゃないですか」
「そうですよね。男らしくないですよ。今ビシッと言えばいいだけでしょうに」
「…ウィル!?」
「ママぁ~!」
少し離れた所に、司会の人となぜかニコライさん、そして司会の人に抱かれた息子が棒付きキャンディを舐めながらニコニコして私に手を振っている。
「もう早く仰いなさいな、レオ様」
「どれだけレベルが高くても意味なし感が凄いですよ。ねぇ、ウィル様」
「んん~!」
なぜ託児所に預けたウィルが今此処に!
「ちょっと、待って!!ウィルをどうするの」
ウィルへ駆け寄ろうと身をよじったけれど、レオの腕が邪魔をする。
「離して! 管理官、離してください」
「もう管理官じゃない…クラウディア、僕は初めから君に求婚したんだ。だから、その後に好きだって言わなかった…………みたいだ。人間としては求愛行動の最上位が求婚かと」
「聞きました?今の」
「完全に言い訳ですよね」
「ライトン、ニコライ、黙っておけ」
さっきまで特徴のないギリアムさんの姿をしていたレオが、前髪をかきあげて額を見せる。そうして屈んで、私の瞳を覗き込んだ。
「君が、青と紫がわからないなんて思いもしていなかった。普段は青色にしているけど、僕の瞳は紫だ」
「む…むらさきですって!?」
「そうだ、あの天使のように可愛い僕の息子の瞳も、紫だ」
「ウィ」
絶句する。紫は禁色だ。尊過ぎて使えない。もし擬態して瞳を紫にした者は即座に捕まる。この国で紫色の瞳を持つ彼らに対する一切の不敬を排除する為に。
「ちょっと…え、ちょっと待って。頭が追い付かない」
「あの時出した選択肢は、僕の妃になるかならないかだ。表向きは親戚筋の姓を利用してなるべく仕事をするだけにしていたから、僕の素性は制約もあって一部の人間しか知らなかった。管理局に配置された目的は君の言う通り実力主義への構造改革もあった。平民の君と権力主義のデニスを交換したのも意図があった。とばっちりは君の方だった」
私は開いた口が塞がらない。
「だけど意図があって補佐に付けた君は想像以上に優秀で…とにかく僕に最高の補佐をしてくれる。気が付いたら僕は骨抜きにされていた」
「そんなのなってました?」
「言っておくが、あんなに酷くないんだ、僕は!!君が補佐についてからどんどん僕は酷くなった。あ~…でもそれは置いといて。で、その求婚時の話だが、さすがに瞳の色を見れば意味はわかると思ったんだ。てっきり君は妃になると言ってくれたんだと」
「………そんな…わかりません、そんな」
「あ~~~~、つまり、つまり! 身体の関係なんかじゃない! 断じてない!! そりゃ多少はフライングはしたけども。でも入局以来、君を狙ってる男は大勢いたし、君から目線を外させるような魔法とか仕事の話以外は極力避けるタイムリミットの設定とか色々とかけたけど、でも」
「待って、なんですかそれ」
「いつも危なっかしかった。今日だって値札を付けたまま。結構肝心な所で抜けるんだ。だから君には色々かけてある」
「いろいろ!?」
「そう。だけど局じゃ隠そうとしてもどうも目線が集まって。君が魅力的過ぎるのと僕の目が濁り切っていたせいもあるけど、あの噂まであったなんて思いもしない。でも信じて欲しい。僕が欲しいと言ったのは君の全部だし、噂なんかよりずっと先に君のことを」
なんかなんかなんかもう耐えられない。私は目線を外してレモネードを意味もなく見る。
「クラウディア」
「………」
レオがそろそろと手首を掴んでいた手を離し、指を絡めてくる。
「あと…あと、君をコマにした覚えもないぞ。平民でもレベルが1でも0でも問題はなかったが、僕の妃にする前に実力で君を管理官にしておきたかっただけだ。権力にしか興味のない貴族たちが本当の意味で君に頭が上がらなくなる…そういう構造にしておきたかった。僕の任期は十年と決まっていたから、君を局に一人残すのは不安があったから」
「へ」
「だって君は仕事を辞めたくないと」
言ったかな? そんなこと。
「それにコレが一番だが…内宮に妃の話を上げるときに、管理官だと一発で通るんだ。三人の管理官が後ろ盾につくから強力な身分保証になる。早く妃にしたかった」
じわじわと顔が熱くなってくる。
「本当は子どもさえ出来ていれば既成事実で即日妃に出来るんだが、君は生活魔法を使っていたしな。仕事もしたいだろうし、そっちの線は諦めていたんだ。だけど」
レモネードがぼやけていくのを止められなかった。
「クラウディア、僕はちょっと怒ってる」
視線を戻した先のアーモンド形の瞳が、悲しそうに私を見下ろして、
「小さいウィルを見られなかった」
伸びてきた腕が、私を抱きしめる。
「ごめんなさい」
「一生懸命産んでくれた君に、直ぐにありがとうが言えなかった」
もう一度言ったごめんなさいは、もう言葉にならなかった。
「何より僕が一番悪い…自分の馬鹿さ加減に反吐が出る。クラウディア、好きだ、愛している。四年の間に忘れた日なんてなかった。ずっと探してた」
やっと、やっとだ、と言いながら腕にこもる強い力が告白と共に私の息を止める。
「君は、どう? 僕を忘れて、新しいパートナーを探すと。もう僕のことは好きじゃない?」
そう言ってレオが身体を離し、両手だけを握って見つめてくる。
「そんな」
「……うん」
「…そんなの、わかりませ」
ドバーーーーーーーーーッと全身に水がかかった。
ボットボトになった私を無言で皆が見ている。
結構肝心な所で抜けるんだ。
仰る通りですね。
ウィルがポカンと涎を垂らした口で私を見て、じわりと泣きそうになっている。
大丈夫よ、いじめられてる訳じゃない。わかりきったことに嘘を吐いたのは私。
仕方ないなぁ…
私は愛しい男を見上げて、口を開いた。
「だけど、そもそも彼が喜ばないかもしれません」
「なぜですか?」
「だって、ほら、冷静に考えてみてください。私と彼は恋人ではありません。喜ぶような関係なら、初めから恋人関係でしょう」
「んんんんんんんんんん」
「ギリアムさん? お腹痛いですか? というか私の話ばっかりでつまらないでしょう」
「その恋人関係って、どうやったら恋人なんですか? えっと、大体原因がわかってきた、わかってきたんですが、でもちょっとまだ腑に落ちない。なぜ彼は貴女のことを恋人じゃないと?」
「なぜって」
「ええ、なぜ?」
「一度もレオは私に好きだとは言わなかったから?」
「………本当に?」
「え、ええ…っていうか、ギリアムさんがこだわる必要のある話では」
ギリアムさんが突然頭をぐっしゃぐしゃに抱えて、テーブルの何もない一点を見つめている。
まるで何かを思い出そうとしているように。
「ギリアムさん?」
「…………」
呼びかけても答えない。
「……ぁ…………で……ふぁ………ぁ」
なんだかわかる。多分今、この人は此処にはいない。
「…のと………ぁ……」
あれ
「ギ リ ア ム さ ん?」
「…………ん……ぁ………」
急にゾクッとした。
私は激しく知っているこの感じ。
頭の中で稲光のようにフラッシュバックが起こり、ひとつの可能性が身体を貫いた。
や ば
私はガバリとのけぞりながら立ち上がる。
その一瞬で目の前の凡庸な顔の男が変化する。
転移しようとした矢先、腕を取られる。
「…っ」
「行くな!」
転移が出来ない。私は涙目で動揺した。なんで、転移ができない!
目の前の男に強く掴まれた手首が燃えるように熱い。
「行かせない。まだ話の途中だよ、クラウディア」
「レオ」
「僕は本当に、言わなかった? 一度も?」
「今そこを掘り下げる必要はないんじゃないですか」
「そうですよね。男らしくないですよ。今ビシッと言えばいいだけでしょうに」
「…ウィル!?」
「ママぁ~!」
少し離れた所に、司会の人となぜかニコライさん、そして司会の人に抱かれた息子が棒付きキャンディを舐めながらニコニコして私に手を振っている。
「もう早く仰いなさいな、レオ様」
「どれだけレベルが高くても意味なし感が凄いですよ。ねぇ、ウィル様」
「んん~!」
なぜ託児所に預けたウィルが今此処に!
「ちょっと、待って!!ウィルをどうするの」
ウィルへ駆け寄ろうと身をよじったけれど、レオの腕が邪魔をする。
「離して! 管理官、離してください」
「もう管理官じゃない…クラウディア、僕は初めから君に求婚したんだ。だから、その後に好きだって言わなかった…………みたいだ。人間としては求愛行動の最上位が求婚かと」
「聞きました?今の」
「完全に言い訳ですよね」
「ライトン、ニコライ、黙っておけ」
さっきまで特徴のないギリアムさんの姿をしていたレオが、前髪をかきあげて額を見せる。そうして屈んで、私の瞳を覗き込んだ。
「君が、青と紫がわからないなんて思いもしていなかった。普段は青色にしているけど、僕の瞳は紫だ」
「む…むらさきですって!?」
「そうだ、あの天使のように可愛い僕の息子の瞳も、紫だ」
「ウィ」
絶句する。紫は禁色だ。尊過ぎて使えない。もし擬態して瞳を紫にした者は即座に捕まる。この国で紫色の瞳を持つ彼らに対する一切の不敬を排除する為に。
「ちょっと…え、ちょっと待って。頭が追い付かない」
「あの時出した選択肢は、僕の妃になるかならないかだ。表向きは親戚筋の姓を利用してなるべく仕事をするだけにしていたから、僕の素性は制約もあって一部の人間しか知らなかった。管理局に配置された目的は君の言う通り実力主義への構造改革もあった。平民の君と権力主義のデニスを交換したのも意図があった。とばっちりは君の方だった」
私は開いた口が塞がらない。
「だけど意図があって補佐に付けた君は想像以上に優秀で…とにかく僕に最高の補佐をしてくれる。気が付いたら僕は骨抜きにされていた」
「そんなのなってました?」
「言っておくが、あんなに酷くないんだ、僕は!!君が補佐についてからどんどん僕は酷くなった。あ~…でもそれは置いといて。で、その求婚時の話だが、さすがに瞳の色を見れば意味はわかると思ったんだ。てっきり君は妃になると言ってくれたんだと」
「………そんな…わかりません、そんな」
「あ~~~~、つまり、つまり! 身体の関係なんかじゃない! 断じてない!! そりゃ多少はフライングはしたけども。でも入局以来、君を狙ってる男は大勢いたし、君から目線を外させるような魔法とか仕事の話以外は極力避けるタイムリミットの設定とか色々とかけたけど、でも」
「待って、なんですかそれ」
「いつも危なっかしかった。今日だって値札を付けたまま。結構肝心な所で抜けるんだ。だから君には色々かけてある」
「いろいろ!?」
「そう。だけど局じゃ隠そうとしてもどうも目線が集まって。君が魅力的過ぎるのと僕の目が濁り切っていたせいもあるけど、あの噂まであったなんて思いもしない。でも信じて欲しい。僕が欲しいと言ったのは君の全部だし、噂なんかよりずっと先に君のことを」
なんかなんかなんかもう耐えられない。私は目線を外してレモネードを意味もなく見る。
「クラウディア」
「………」
レオがそろそろと手首を掴んでいた手を離し、指を絡めてくる。
「あと…あと、君をコマにした覚えもないぞ。平民でもレベルが1でも0でも問題はなかったが、僕の妃にする前に実力で君を管理官にしておきたかっただけだ。権力にしか興味のない貴族たちが本当の意味で君に頭が上がらなくなる…そういう構造にしておきたかった。僕の任期は十年と決まっていたから、君を局に一人残すのは不安があったから」
「へ」
「だって君は仕事を辞めたくないと」
言ったかな? そんなこと。
「それにコレが一番だが…内宮に妃の話を上げるときに、管理官だと一発で通るんだ。三人の管理官が後ろ盾につくから強力な身分保証になる。早く妃にしたかった」
じわじわと顔が熱くなってくる。
「本当は子どもさえ出来ていれば既成事実で即日妃に出来るんだが、君は生活魔法を使っていたしな。仕事もしたいだろうし、そっちの線は諦めていたんだ。だけど」
レモネードがぼやけていくのを止められなかった。
「クラウディア、僕はちょっと怒ってる」
視線を戻した先のアーモンド形の瞳が、悲しそうに私を見下ろして、
「小さいウィルを見られなかった」
伸びてきた腕が、私を抱きしめる。
「ごめんなさい」
「一生懸命産んでくれた君に、直ぐにありがとうが言えなかった」
もう一度言ったごめんなさいは、もう言葉にならなかった。
「何より僕が一番悪い…自分の馬鹿さ加減に反吐が出る。クラウディア、好きだ、愛している。四年の間に忘れた日なんてなかった。ずっと探してた」
やっと、やっとだ、と言いながら腕にこもる強い力が告白と共に私の息を止める。
「君は、どう? 僕を忘れて、新しいパートナーを探すと。もう僕のことは好きじゃない?」
そう言ってレオが身体を離し、両手だけを握って見つめてくる。
「そんな」
「……うん」
「…そんなの、わかりませ」
ドバーーーーーーーーーッと全身に水がかかった。
ボットボトになった私を無言で皆が見ている。
結構肝心な所で抜けるんだ。
仰る通りですね。
ウィルがポカンと涎を垂らした口で私を見て、じわりと泣きそうになっている。
大丈夫よ、いじめられてる訳じゃない。わかりきったことに嘘を吐いたのは私。
仕方ないなぁ…
私は愛しい男を見上げて、口を開いた。
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