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第一章 人生って何が起こるかわからない
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午後は、使用人一人一人にクッキーを渡して歩いた。 庭にも出て、自分が育てている薬草畑に足を運んだ。庭の端っこで目立たない場所に、キャスティナが庭師に頼んで植えてもらった薬草。この薬草も摘んで持って行きたいけど、無理だよね·····。やっとここまで育てたんだけどな、残念だわ。キャスティナは、独学でポーションの作り方を学んだ。癒し系魔法が使える自分なら、普通の魔力保持者が作るものよりも質のよいポーションが作れるのではと考えたからだ。キャスティナは、助けたいと思った時に、助けられる自分でありたいと自分の力について色々試したり調べたりした。ポーションもその一つで何年もかかって、完成させた。取り合えず、作り方は覚えたし必要な事が起これば何とかなるか。薬草の花壇から庭の中心に視線を移す。昔は、この庭でお母さまとお茶を飲んだし。ルイスが幼い頃は、お義母さまに隠れて一緒に遊んだりしたのよね。懐かしいな。キャスティナは、しばらく庭を眺めていた。
部屋に戻ると、エーファが部屋にいた。
「お嬢様、ただ今より短い期間ですが侍女に戻ります。よろしくお願いします」
エーファが頭を下げる。涙ぐんでいた。
「エーファ、泣かないで。最後にエーファと過ごせてうれしいわ。久しぶり過ぎて、どうやって過ごしてたか忘れちゃったわね」
「毎日楽しかったです。それだけはしっかり覚えてますよ」
エーファが笑って答えた。
「ふふふ。それは、私も覚えてる。では、エーファ。私、令嬢としての勘を少しでも取り戻したいからよろしく頼むわね。取り合えず、ドレスを着て夕飯食べるわ」
「はい。かしこまりました」
それから、夕飯までの間にお辞儀の練習をした。
夕飯を食べにダイニングに行くと、ルイスが先に座っていた。
「ルイス、ごめんね。待たせちゃったかな?」
「いえ。僕も今来たところなので」
ルイスは、お義母様譲りのピンク色のふわふわの髪に濃い茶色の瞳をしている。幼い頃は、くったくなく笑う可愛い弟だったのに……。いつからだろう。何を考えてるのかわからない、表情のない視線を私に向けるようになったのは。お父様やお義母様と一緒にいるルイスを見ないからわからないけど、普段はどんな子なんだろうか?この屋敷を去る事になって、一番の心配はルイスの事だ。私は、漠然といつかはこの家からいなくなるだろうと思っていたけど、ルイスは跡取り息子だからここから離れる事はないだろう。それがこの子にとって幸せな事だといいけれど……。
「では、頂きましょう」
二人でお祈りをして、食べ始める。二人で向かい合って座っているのに、会話はない。これが私達の当たり前。私が、こんな風にしてしまった。寂しさだけが、胸に残った。食べ終わった後に、ルイスに声をかけた。
「ルイス。明日の夕飯の後に少し時間をもらえない?久しぶりに居間で話したい事があるの」
ルイスは、びっくりした顔をしている。
「僕とお姉さまが、話?でも……」
「お父様とお母様は、今日から三日間は夜会だから大丈夫。帰って来るまでの少しの時間でいいの」
「わかりました。では、僕は部屋に戻ります」
「ありがとう。では、明日ね。おやすみなさい。ルイス」
キャスティナは、優しい姉の顔で言った。
ルイスは、照れたように小さな声で「おやすみ」と言って足早に部屋を出ていった。
ああ。こんな簡単な事で良かったんだ。両親がいない時ぐらい、普通に兄弟の会話をすれば良かった。おはよう。おやすみ。ってもっと言えば良かった。まだ、ルイスは9才なのに……私がもっとお姉ちゃんにならなきゃいけなかったんだ。私は、この家からいなくなってしまうけどルイスとは繋がっていたい。それがわかって良かった。生きてれば、遅いなんて事はきっとないはずだから。
部屋に戻ると、エーファが部屋にいた。
「お嬢様、ただ今より短い期間ですが侍女に戻ります。よろしくお願いします」
エーファが頭を下げる。涙ぐんでいた。
「エーファ、泣かないで。最後にエーファと過ごせてうれしいわ。久しぶり過ぎて、どうやって過ごしてたか忘れちゃったわね」
「毎日楽しかったです。それだけはしっかり覚えてますよ」
エーファが笑って答えた。
「ふふふ。それは、私も覚えてる。では、エーファ。私、令嬢としての勘を少しでも取り戻したいからよろしく頼むわね。取り合えず、ドレスを着て夕飯食べるわ」
「はい。かしこまりました」
それから、夕飯までの間にお辞儀の練習をした。
夕飯を食べにダイニングに行くと、ルイスが先に座っていた。
「ルイス、ごめんね。待たせちゃったかな?」
「いえ。僕も今来たところなので」
ルイスは、お義母様譲りのピンク色のふわふわの髪に濃い茶色の瞳をしている。幼い頃は、くったくなく笑う可愛い弟だったのに……。いつからだろう。何を考えてるのかわからない、表情のない視線を私に向けるようになったのは。お父様やお義母様と一緒にいるルイスを見ないからわからないけど、普段はどんな子なんだろうか?この屋敷を去る事になって、一番の心配はルイスの事だ。私は、漠然といつかはこの家からいなくなるだろうと思っていたけど、ルイスは跡取り息子だからここから離れる事はないだろう。それがこの子にとって幸せな事だといいけれど……。
「では、頂きましょう」
二人でお祈りをして、食べ始める。二人で向かい合って座っているのに、会話はない。これが私達の当たり前。私が、こんな風にしてしまった。寂しさだけが、胸に残った。食べ終わった後に、ルイスに声をかけた。
「ルイス。明日の夕飯の後に少し時間をもらえない?久しぶりに居間で話したい事があるの」
ルイスは、びっくりした顔をしている。
「僕とお姉さまが、話?でも……」
「お父様とお母様は、今日から三日間は夜会だから大丈夫。帰って来るまでの少しの時間でいいの」
「わかりました。では、僕は部屋に戻ります」
「ありがとう。では、明日ね。おやすみなさい。ルイス」
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ああ。こんな簡単な事で良かったんだ。両親がいない時ぐらい、普通に兄弟の会話をすれば良かった。おはよう。おやすみ。ってもっと言えば良かった。まだ、ルイスは9才なのに……私がもっとお姉ちゃんにならなきゃいけなかったんだ。私は、この家からいなくなってしまうけどルイスとは繋がっていたい。それがわかって良かった。生きてれば、遅いなんて事はきっとないはずだから。
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