身勝手な理由で婚約者を殺そうとした男は、地獄に落ちました【完結】

小平ニコ

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第34話(ルーパート視点)

「喜べ、ルーパート! 寛大なドルフレッド様は、たった二つの条件と引き換えに、今回のことを胸の内だけにとどめ、誰にも口外しないそうだ! ああ……なんと慈悲深いお方だ。これで、我々は救われる……!」

「そ、そうですか。それは良かった」

 心底意外だという感じで大喜びする兄上とは違い、僕は心のどこかで、この結末を予想していた。……あのドルフレッドは、超がつくほどのお人よしだからな。あいつと僕の父上は、無二の親友だった。その、無二の親友の一族が全滅するようなことを、あいつがするはずがない。

 やれやれ。
 随分と酷い目に遭ったが、どうやら状況は好転しそうだ。

 まったく、今日は人生最悪の日だ。
 しかし、歳をとってから振り返れば、こんな日もあったなと思い返せるだろう。

 ニコニコ笑顔の兄上に釣られるように僕も微笑み、問いかける。

「兄上、二つの条件とは、どんなものなのですか?」

「一つは、お前とアドレーラ嬢の婚約を正式に破棄することだ。まあこれは、当然のことだな」

 なんだ、そんなことか。

『二つの条件』だなんて、もったいぶったことを言うから、どんなことを要求されるのかと少し警戒していたが、この分では、もう一つの条件も大したことはなさそうだ。僕はホッと胸をなでおろし、尋ねる。

「それで、二つ目の条件は?」

 兄上は、これまでで一番の、花が咲くような笑顔で、答えた。

「お前を、我がイズリウム家から永久に追放することだ」

 しばらくの間、兄上の発した言葉の意味が分からず、僕は固まってしまった。やがて、『追放』という言葉自体は飲み込めたが、その意味するところが全く理解できず、僕は問う。

「あ、あの、兄上。追放とは、どういうことでしょう……?」

「何を言っている。追放とは、ある特定の場所から、対象者を追い出すことだ。愚鈍なお前でも、それくらいは知っているだろう?」

「も、もちろん追放の意味は知ってます。僕が聞きたいのは、何故、この僕が、イズリウム家から追放されなければならないのかということです」

「何故もくそもあるか。お前が、アドレーラ嬢に惨い仕打ちをしたからだろうが。ドルフレッド様は、お前から『追放』という形で、貴族の身分をはく奪する罰を与えたいのだろう。本来なら、殺されても文句は言えんところだ。この程度で済ませてくれたドルフレッド様の慈悲に感謝するんだな」

「貴族の身分をはく奪!? と、言うことは、僕は平民になるのですか!?」

 冗談じゃない!
 生まれついての高貴なる者であるこの僕が、薄汚い平民になるなんて!
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