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第15話(シャノーラ視点)
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「たぶんね。前からずっと、試してみたいな~って思ってたんだけど、ほら、昔のあなただったら、私と協力して何かをやるなんて、絶対お断りだったでしょ?」
「そ、それは、まあ……」
「ね? さあ、試してみましょう。シャノーラ、私が張っている結界に、満遍なく自分の魔力を流し込んでみて。スポンジケーキに、クリームを塗りたくるようなイメージでね」
「あっ、その例え、分かりやすいわ。よし、やってみる」
『フワッ』とか、『グ~ッ』とか、抽象的な例えじゃなくて良かった。
これなら凡人の私でも、理解できる。
私はお姉様に指示された通り、結界全体を、私の魔力でコーティングしていった。
……そして、数分後。
なんと、お姉様の予想通り、『結界の固定化』は、見事に成功したのである。
「やった……やったわお姉様! 凄い……こんなことができるなんて、まるで奇跡だわ! 凄い、凄いっ! 凄すぎるっ!」
大はしゃぎする私と違い、お姉様はそれほど驚いた様子もなく、微笑んだ。
「まあ、理屈上は、できると思ってたからね~。だって、シャノーラは優秀だもの。私の作った結界を、満遍なくコーティングできる、正反対の性質を持った魔力の持ち主なんて、きっと、世界中探したって、あなただけだわ。二人が力を合わせたから、できたことよ」
「お姉様……」
「さて、私は国を追放された身なわけだし、また出ていくわね」
「えっ……」
「まだ食べ歩きツアーの途中だし、今すぐ戻れば、合流できると思うのよね。それじゃ、シャノーラ、元気でね。あっ、そうそう。結界を固定化したとはいえ、結界をコーティングしている魔力は有限だから、一週間に一回くらいは、新しい魔力をドババーって流すのよ。そうしないと、全部ゼロになっちゃうからね」
そう言って、踵を返したお姉様を、私は引き留めた。
「あ、あのっ、待って、お姉様。……私、国王陛下に、直訴するわ。お姉様の追放を、取り消してもらえるように。だから……」
国に残ってほしい。今まで、くだらない自己顕示欲とライバル心で、敵対視しかしてこなかった分、お姉様と、もっと話がしてみたい。
……と、そこまで言うのは、なんだか気恥ずかしくて、私はうつむき、黙ってしまう。そんな私に、お姉様はニッコリ微笑んで、言った。
「心配しなくても、旅行が終わったら、戻って来るわよ。一応は故郷だし、可愛い妹のいる国だからね。そしたらまた、色々と話しましょう。それじゃあね、シャノーラ」
そしてお姉様は、再び国を出た。
とてつもないことを成し遂げた後なのに、誇る様子も、少しの疲れもない。まるで、近所に出かけていくような、ごく自然な旅立ちだった。
「そ、それは、まあ……」
「ね? さあ、試してみましょう。シャノーラ、私が張っている結界に、満遍なく自分の魔力を流し込んでみて。スポンジケーキに、クリームを塗りたくるようなイメージでね」
「あっ、その例え、分かりやすいわ。よし、やってみる」
『フワッ』とか、『グ~ッ』とか、抽象的な例えじゃなくて良かった。
これなら凡人の私でも、理解できる。
私はお姉様に指示された通り、結界全体を、私の魔力でコーティングしていった。
……そして、数分後。
なんと、お姉様の予想通り、『結界の固定化』は、見事に成功したのである。
「やった……やったわお姉様! 凄い……こんなことができるなんて、まるで奇跡だわ! 凄い、凄いっ! 凄すぎるっ!」
大はしゃぎする私と違い、お姉様はそれほど驚いた様子もなく、微笑んだ。
「まあ、理屈上は、できると思ってたからね~。だって、シャノーラは優秀だもの。私の作った結界を、満遍なくコーティングできる、正反対の性質を持った魔力の持ち主なんて、きっと、世界中探したって、あなただけだわ。二人が力を合わせたから、できたことよ」
「お姉様……」
「さて、私は国を追放された身なわけだし、また出ていくわね」
「えっ……」
「まだ食べ歩きツアーの途中だし、今すぐ戻れば、合流できると思うのよね。それじゃ、シャノーラ、元気でね。あっ、そうそう。結界を固定化したとはいえ、結界をコーティングしている魔力は有限だから、一週間に一回くらいは、新しい魔力をドババーって流すのよ。そうしないと、全部ゼロになっちゃうからね」
そう言って、踵を返したお姉様を、私は引き留めた。
「あ、あのっ、待って、お姉様。……私、国王陛下に、直訴するわ。お姉様の追放を、取り消してもらえるように。だから……」
国に残ってほしい。今まで、くだらない自己顕示欲とライバル心で、敵対視しかしてこなかった分、お姉様と、もっと話がしてみたい。
……と、そこまで言うのは、なんだか気恥ずかしくて、私はうつむき、黙ってしまう。そんな私に、お姉様はニッコリ微笑んで、言った。
「心配しなくても、旅行が終わったら、戻って来るわよ。一応は故郷だし、可愛い妹のいる国だからね。そしたらまた、色々と話しましょう。それじゃあね、シャノーラ」
そしてお姉様は、再び国を出た。
とてつもないことを成し遂げた後なのに、誇る様子も、少しの疲れもない。まるで、近所に出かけていくような、ごく自然な旅立ちだった。
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