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第38話
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そんなことを話しながら、私たちは洞窟の奥へ奥へと進んで行く。
エリウッドが最初に言った通り、洞窟内は、かなり複雑な迷路だったが、魔人の潜伏場所はもう特定しているらしく、エリウッドは悩むことなくルートを選び、私を先導する。
そして、細々とした通路を三十分程歩いた頃。
これまでよりも天井が高く、広い空間に出た。
どういう理屈なのか、太陽の光など届くはずがない洞窟の深部なのに、ぼんやりと明るい。その、淡い光に囲まれるようにして、丸い岩の上に、一人の男が座禅を組んでいた。
……お坊さん?
それが、男に対する、私の第一印象だった。
ほとんど半裸であり、身にまとっているのは、ボロボロの袈裟だけ。
しかし、不思議と薄汚い印象は受けず、ある種の気高さすら感じる。
静かな眼差しでこちらを見つめるその姿からは、一切の敵愾心を感じない。
……なんで、こんなところにお坊さんが?
私は、エリウッドにそう尋ねようとした。
しかし、途中で言葉を飲み込んでしまった。
エリウッドが腰の剣を抜き、その切っ先をお坊さんに向けたからだ。
「魔人、ゴーファだな。魔獣を操り、我が臣民と、街道を行く罪なき旅人を傷つけた罪、万死に値する。何か、申し開きはあるか?」
魔人、ゴーファ……
この、穏やかで、優しそうなお坊さんが、魔人なのか……
いや、エリウッドが、迷うことなくここまでやって来て、この場にいたのがあのお坊さんだけなのだから、彼が魔人なのだろうとは、薄々思っていた。しかし、私の中にあった邪悪な魔人のイメージとはあまりにもかけ離れていて、なかなか事実を受け止めることができない。
ゴーファはゆっくりと口を開く。
その声は、驚くほど澄んでおり、爽やかだった。
「罪……罪ですか。なるほど、人々を傷つけた私には、確かに罪があります。しかし、『罪なき旅人』というのは、いかがなものでしょうか」
「なんだと?」
「私が殺した旅人の大半は、商人です。彼らは何の罪もない豚や牛を殺し、肉にして売ります。自分の金もうけのためにです。これは罪です」
「…………」
「彼らの罪は、それだけにとどまりません。不当な値段交渉で、大した価値もない物の値段を驚くほど釣り上げて、無知な者に売りつけます。逆に、上手に人を欺き、価値のある物を、はした金で詐取することもあります。これは罪です」
「なるほど、お前の言いたいことは分かった。だがそれは、魔物に惨たらしく殺されなければならないほどの罪か?」
エリウッドが最初に言った通り、洞窟内は、かなり複雑な迷路だったが、魔人の潜伏場所はもう特定しているらしく、エリウッドは悩むことなくルートを選び、私を先導する。
そして、細々とした通路を三十分程歩いた頃。
これまでよりも天井が高く、広い空間に出た。
どういう理屈なのか、太陽の光など届くはずがない洞窟の深部なのに、ぼんやりと明るい。その、淡い光に囲まれるようにして、丸い岩の上に、一人の男が座禅を組んでいた。
……お坊さん?
それが、男に対する、私の第一印象だった。
ほとんど半裸であり、身にまとっているのは、ボロボロの袈裟だけ。
しかし、不思議と薄汚い印象は受けず、ある種の気高さすら感じる。
静かな眼差しでこちらを見つめるその姿からは、一切の敵愾心を感じない。
……なんで、こんなところにお坊さんが?
私は、エリウッドにそう尋ねようとした。
しかし、途中で言葉を飲み込んでしまった。
エリウッドが腰の剣を抜き、その切っ先をお坊さんに向けたからだ。
「魔人、ゴーファだな。魔獣を操り、我が臣民と、街道を行く罪なき旅人を傷つけた罪、万死に値する。何か、申し開きはあるか?」
魔人、ゴーファ……
この、穏やかで、優しそうなお坊さんが、魔人なのか……
いや、エリウッドが、迷うことなくここまでやって来て、この場にいたのがあのお坊さんだけなのだから、彼が魔人なのだろうとは、薄々思っていた。しかし、私の中にあった邪悪な魔人のイメージとはあまりにもかけ離れていて、なかなか事実を受け止めることができない。
ゴーファはゆっくりと口を開く。
その声は、驚くほど澄んでおり、爽やかだった。
「罪……罪ですか。なるほど、人々を傷つけた私には、確かに罪があります。しかし、『罪なき旅人』というのは、いかがなものでしょうか」
「なんだと?」
「私が殺した旅人の大半は、商人です。彼らは何の罪もない豚や牛を殺し、肉にして売ります。自分の金もうけのためにです。これは罪です」
「…………」
「彼らの罪は、それだけにとどまりません。不当な値段交渉で、大した価値もない物の値段を驚くほど釣り上げて、無知な者に売りつけます。逆に、上手に人を欺き、価値のある物を、はした金で詐取することもあります。これは罪です」
「なるほど、お前の言いたいことは分かった。だがそれは、魔物に惨たらしく殺されなければならないほどの罪か?」
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