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第41話

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 私は一度だけ大きく息を吸い、叫んだ。

「ゴーファ! こっちを見なさい! エリウッドはもう限界だわ! ここからは私が相手よ!」

 しかしゴーファは、こちらをちらりとも見ず、愉悦の表情を浮かべてエリウッドを攻め続けている。私のことを、エリウッドのおつきでやって来た従者か何かと考えており、歯牙にもかけていないのだろう。

 その、人を見下しきった態度に、私の怒りは膨れ上がった。それと同時に、『黒い光』が溢れだし、まさに怒りの具現といった感じで、爆発的に膨れ上がる。そこでやっと、異様な雰囲気を察したのか、ゴーファは私を見た。

 だが、もう遅い。

 私を見るのと同時に、ゴーファの体は『黒い光』に飲み込まれ、跡形もなく消滅した。……残念ね。さっき呼びかけた時、真剣に私のことを警戒してさえいれば、あなたの人間離れした素早さならあるいは、『黒い光』を回避することもできたかもしれないのに。

 とにもかくにも、それで戦いは終わり、疲労困憊のエリウッドに、私は近づいた。頑丈な甲冑に守られ、生傷こそないものの、何度もゴーファに蹴られていたので、相当にダメージが溜まっているだろう。

 治療してあげたいが、無念ながら、私にそんな能力はない。しかし、肩を貸し、彼の体を支えるくらいのことはできる。私は「大丈夫ですか?」と声をかけ、エリウッドの手を取ろうとした。

 だが、その手は振り払われた。
 エリウッドは、悔しさをにじませながら、叫ぶ。

「余計な真似をして! あれで俺を助けたつもりか! 魔人など、俺一人で……っ」

 しかし、その叫び声が、どんどん小さくなっていく。やがて黙り込んだエリウッドは、深く息を吸い、同じだけ吐くと、私に頭を下げた。

「……すまなかった、マリヤ。窮地を救ってもらった上に、見苦しい態度を取った。許してくれ」

 私は左右に首を振り、「気にしてませんから」と微笑んだ。
 上辺だけの言葉ではなく、本心である。

 いかなる理由があろうと、私は一騎打ちを邪魔して、エリウッドの、剣士としてのプライドを傷つけたのだ。正直言って、もっと激しい叱責を受けることも覚悟していた。だけどエリウッドは、爆発しかけた怒りをすぐに抑え、頭まで下げてくれた。その気持ちが、嬉しかった。
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