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第69話
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エリウッドはそう言うと、腕を組んでふんすと息を吐いた。
娘の嫁入りを拒む頑固なお父さんのような仕草で、ちょっと面白い。
「なんだか、パーミル王国って、思った以上に凶悪な国に挟まれてるんですね。まともな国……と言うか、味方はいないんですか?」
「一応、同盟関係の国はある」
「へえ、なんて国なんです?」
「お前の大嫌いな、オルソン聖王国だよ」
「げっ、最悪」
オルソン聖王国の名前が出ただけで、およそ三週間前に、散々な扱いをされたことを思い出し、表情が渋くなる私だった。
「前にも言っただろう、我がパーミル王家とオルソン王家は遠縁の親戚関係だとな。それが縁で、大国であるオルソンとパーミルは、今でも繋がっているのだ」
「それじゃ結局、パーミルの周りには、最悪の国しかないってことですね」
「残念ながらな。だがオルソン聖王国は、差別主義の最低な連中の集まりではあるが、文化レベルは高く、優秀な魔導士が大勢いて、軍事力もラング王国に匹敵する。それ故に、オルソンと同盟関係のパーミルを、他国は簡単に侵略することができないのだ」
「う~む……なるほど……」
「俺だってオルソンは嫌いだが、付き合いをなくすわけにはいかない。あの国との交易も、重要な財源だからな。嫌な連中とも、上手に付き合っていかなければならない。まったく、世知辛いものだよ。来週にはまた、こちらからオルソンに出向いて会談をしなくてはならない。王族の責任とはいえ、憂鬱なことだ」
肩をすくめて、少々大げさなため息を漏らすエリウッド。そんな彼を、私は『王族って大変なんだなぁ、偉いなぁ』と、他人事のような気持ちで眺めていた。
しかし、それから一週間後。
オルソン聖王国との会談が他人事ではなくなったのである。
なんとオルソン王家は、パーミル周辺の魔人を駆逐掃討した『聖女マリヤ』の情報を知り、定例の会談に同席させるよう、要請してきたのだ。
同盟関係と言っても、大国と小国。
実際の立場は、パーミルがオルソンに従属しているのに近い。
オルソン側が、特定の人物を名指しして『同席させろ』と言ってきたら、パーミルとしては、非常に断りにくい。しかしエリウッドは、『行きたくなければ行かなくていい』と言ってくれた。
……私は、少しだけ悩んだ結果、会談に同席することにした。
娘の嫁入りを拒む頑固なお父さんのような仕草で、ちょっと面白い。
「なんだか、パーミル王国って、思った以上に凶悪な国に挟まれてるんですね。まともな国……と言うか、味方はいないんですか?」
「一応、同盟関係の国はある」
「へえ、なんて国なんです?」
「お前の大嫌いな、オルソン聖王国だよ」
「げっ、最悪」
オルソン聖王国の名前が出ただけで、およそ三週間前に、散々な扱いをされたことを思い出し、表情が渋くなる私だった。
「前にも言っただろう、我がパーミル王家とオルソン王家は遠縁の親戚関係だとな。それが縁で、大国であるオルソンとパーミルは、今でも繋がっているのだ」
「それじゃ結局、パーミルの周りには、最悪の国しかないってことですね」
「残念ながらな。だがオルソン聖王国は、差別主義の最低な連中の集まりではあるが、文化レベルは高く、優秀な魔導士が大勢いて、軍事力もラング王国に匹敵する。それ故に、オルソンと同盟関係のパーミルを、他国は簡単に侵略することができないのだ」
「う~む……なるほど……」
「俺だってオルソンは嫌いだが、付き合いをなくすわけにはいかない。あの国との交易も、重要な財源だからな。嫌な連中とも、上手に付き合っていかなければならない。まったく、世知辛いものだよ。来週にはまた、こちらからオルソンに出向いて会談をしなくてはならない。王族の責任とはいえ、憂鬱なことだ」
肩をすくめて、少々大げさなため息を漏らすエリウッド。そんな彼を、私は『王族って大変なんだなぁ、偉いなぁ』と、他人事のような気持ちで眺めていた。
しかし、それから一週間後。
オルソン聖王国との会談が他人事ではなくなったのである。
なんとオルソン王家は、パーミル周辺の魔人を駆逐掃討した『聖女マリヤ』の情報を知り、定例の会談に同席させるよう、要請してきたのだ。
同盟関係と言っても、大国と小国。
実際の立場は、パーミルがオルソンに従属しているのに近い。
オルソン側が、特定の人物を名指しして『同席させろ』と言ってきたら、パーミルとしては、非常に断りにくい。しかしエリウッドは、『行きたくなければ行かなくていい』と言ってくれた。
……私は、少しだけ悩んだ結果、会談に同席することにした。
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