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第86話
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「……そうでしょうか。姉上、教えてください。今のジェロームの言葉、100パーセント本気ではないとおっしゃるならば、何パーセントくらいは、本心が混ざっていたと思いますか?」
「答えづらいことを聞く奴だ。私も今日は疲れた。そろそろ湯浴みをして寝たい。その話はまた今度にしないか?」
「姉上」
「わかったよ。……そうだな。まあ、半分……50パーセントくらいは、本心をぶちまけたってところだろうな」
「5割本気であれば、無視はできません。俺はジェロームの信頼を失ってしまったと考えるべきでしょう」
「いや、お前、そんな悲観的な……。人間だれしも、感情のままに、心にもない強い言葉をガーッと言ってしまうこともあるじゃないか」
慌てて取り繕うグラディスだったが、時すでに遅し。エリウッドはもう会話を続ける気はないらしく、重たい足取りで自身の寝室へと戻って行った。
私はグラディスに対し、思ったままのことを素直に尋ねる。
「グラディスさん、ジェロームはエリウッドに対して、本当に失望してしまったのでしょうか?」
「ん? うーん……そうだな……まあ、そうかもしれんなあ……あいつはもともと、精神的に未熟なところのあるエリウッドが正当な王位継承者になったのを、あまり面白く思っていなかったしな」
「そうなんですか? これまでは、徹頭徹尾忠誠を尽くしてて、そんな素振り、少しもありませんでしたけど」
「完璧な忠臣であろうとすることで、自分の中にあるわだかまりを消そうとしてたんだろうなあ。無理をすればするほど、不満は大きくなるというのに」
そうだったのか。
考えてみると、ジェロームのエリウッドに対する態度は、今にして思えば不自然なほどに従順だった。私心を隠し、完璧に平伏することで、自分の中の不満をなんとか押さえ込もうとしてたのかな……
私は夜空を見上げ、もう一度グラディスに尋ねる。
「これから、パーミル王国はどうなってしまうのでしょうか……」
グラディスも私と同じように夜空を見て、飄々と答えた。
「まあ、なるようになるさ」
いつの間にか雲が出ていて、星も見えず、暗い夜だった。
・
・
・
グラディスの予想通り、オルソン聖王国がいきなり襲撃してくるようなことはなかった。しかし、一度入った両国間の亀裂が修復することはなく、少し経ってから、オルソンとパーミルの間で何度か話し合いの場が設けられ、その結果、同盟関係を解消する調印式がおこなわれた。
「答えづらいことを聞く奴だ。私も今日は疲れた。そろそろ湯浴みをして寝たい。その話はまた今度にしないか?」
「姉上」
「わかったよ。……そうだな。まあ、半分……50パーセントくらいは、本心をぶちまけたってところだろうな」
「5割本気であれば、無視はできません。俺はジェロームの信頼を失ってしまったと考えるべきでしょう」
「いや、お前、そんな悲観的な……。人間だれしも、感情のままに、心にもない強い言葉をガーッと言ってしまうこともあるじゃないか」
慌てて取り繕うグラディスだったが、時すでに遅し。エリウッドはもう会話を続ける気はないらしく、重たい足取りで自身の寝室へと戻って行った。
私はグラディスに対し、思ったままのことを素直に尋ねる。
「グラディスさん、ジェロームはエリウッドに対して、本当に失望してしまったのでしょうか?」
「ん? うーん……そうだな……まあ、そうかもしれんなあ……あいつはもともと、精神的に未熟なところのあるエリウッドが正当な王位継承者になったのを、あまり面白く思っていなかったしな」
「そうなんですか? これまでは、徹頭徹尾忠誠を尽くしてて、そんな素振り、少しもありませんでしたけど」
「完璧な忠臣であろうとすることで、自分の中にあるわだかまりを消そうとしてたんだろうなあ。無理をすればするほど、不満は大きくなるというのに」
そうだったのか。
考えてみると、ジェロームのエリウッドに対する態度は、今にして思えば不自然なほどに従順だった。私心を隠し、完璧に平伏することで、自分の中の不満をなんとか押さえ込もうとしてたのかな……
私は夜空を見上げ、もう一度グラディスに尋ねる。
「これから、パーミル王国はどうなってしまうのでしょうか……」
グラディスも私と同じように夜空を見て、飄々と答えた。
「まあ、なるようになるさ」
いつの間にか雲が出ていて、星も見えず、暗い夜だった。
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グラディスの予想通り、オルソン聖王国がいきなり襲撃してくるようなことはなかった。しかし、一度入った両国間の亀裂が修復することはなく、少し経ってから、オルソンとパーミルの間で何度か話し合いの場が設けられ、その結果、同盟関係を解消する調印式がおこなわれた。
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