ゾンビのいない世界で俺に与えられたスキルは『ゾンビ殺し』だった。役立たずとして追放される俺。でもあと少しで世界はゾンビだらけになるんだけどね

小平ニコ

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第19話

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「うーん、まあ、そう言われればそうかもしれないけど、あの商店の人たちが俺を無理やり召喚したわけじゃないし、この世界の人にも、人間らしい心があるってわかったのが嬉しいよ。正直、『どうして俺がこんな目に』って気持ち、結構強かったからさ。その気持ちが憎しみに変わる前に、この世界の人を好きになれて良かった」

「本当に、お人よしね。あんた、そのうち悪党に騙されるわよ。この世界の人間すべてが、シャンパ人に好意的なわけじゃないんだからね」

「俺を騙すような悪党が現れたら、ルイーズがやっつけてくれるだろ? なんたって、『誓いの契り』を交わした仲なんだから」

「ま、そうなるわね」

「なら安心して、これからもお人よしでいられるよ」

「ふん、ああ言えばこう言うんだから」

 ……照れくさいので本人には言わないが、俺がこの世界の人間を憎まずにいられたのは、実はルイーズの存在が一番大きい。ちょっとツンツンしてるところもあるけど、基本的にはもの凄く親切で世話好きな彼女がいてくれるから、この見知らぬ世界でも俺は正気を保っていられるのかもしれない。

 改めて思う。王宮を放り出されて、初めて会った異世界人が彼女でなかったら、俺はどうなっていただろう? 善良な人と出会い、小さな村で案外のんびり暮らすことになったのだろうか?

 それとも、ルイーズの言う『悪党』に騙され、酷い目にあっていただろうか? ……いや、そもそも、誰とも出会わずにモンスターに殺されてた可能性が、一番大きいのかな。

 沈みゆく夕日を眺めながら、しみじみそんなことを思っていると、荷物を抱えなおしたルイーズが、急かすように言う。

「さて、用事も済んだし町を出ましょうか。今日野宿する場所を探さないとね」

「えっ、ちょっと待って!? せっかく町にいるのに、わざわざ外に出て野宿するの!? それってなんかおかしくない!?」

「別におかしくないでしょ、いつも野宿なんだから。ほら、行くわよ」

「はぁい……でも、たまにはちゃんとした宿に泊まりたかったなぁ……」

「文句言わないの。宿代って結構取られるんだから、節約しなきゃね。それに今買ったテントがあるから、昨日までよりはずっと快適よ。完全に日が暮れるまでに野営場所を見つけて、そのあと虫よけも調合しなきゃいけないから忙しくなるわ、あんたも手伝ってよね」





 そんなわけで町を出た俺たちは、野宿するのに最適な場所を求め、しばらく歩いた。あまり町に近いところでキャンプを張っていると、野盗か何かと誤解されるそうなので、結局一時間近く歩く羽目になる。

 そして、沈みかけだった太陽が完全に姿を消して、夜が始まった頃。やっと人気のない雑木林を見つけたので、そこに買ったばかりのテントを設置することになった。
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