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第57話

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 ルイーズは心を落ち着けるみたいに深呼吸し、顔色を戻しているように見えた。……そして10秒後、もうすっかりいつも通りの調子で、言葉を紡いでいく。

「忍び込むだけならそんなに難しくないわ。風の魔法で浮き上がり、どこかの窓から侵入すればいいのよ。ただ、私は王宮内に入らない方がいいと思う」

「なんで?」

「エルフの魔力は人間よりも強大で、隠そうとしても隠しきれるものじゃないからよ。私が王宮内に入ったら、優秀な宮廷魔導師の何人かは、そのことにすぐ気がつくと思う。で、たちまち衛兵隊がやって来るわ」

「そっか……じゃあ、俺一人で行くしかないな」

「そういうことになるわね。たとえ見つかったとしても、シャンパ人のあんたなら、重たい罪に問われるようなことはないと思うし。……でも、召喚士を連れ出そうとしているのがバレたら、極刑もあり得るわ。それでも行く?」

「もちろん」

「大した度胸ね。安心なさい、あんたが捕まったら、王宮を襲撃してでも助け出してあげるから」

「頼もしいよ。それじゃ、行くか」

 そして俺たちは、王宮の裏手に回った。……なんかこのお城、正門以外は全然衛兵がいないな。まあ、立派な城壁があるから、わざわざ警備の人員を配置する必要がないのかもしれないけど、空飛ぶモンスターが来たらどうするんだろう?

 そんなことを考えながら、城壁の向こうにある王宮の三階部分をじっと観察する。いくつも窓があるが、どれも閉まっている。もしも鍵がかかっていた場合、侵入難易度が一気に上がってしまうので、なんとか開いている窓を見つけたいところだが……

「見て、サトシ。あの一番右端の窓、開いてるわ」

「おっ、ほんとだ。けっこうでかい窓だし、あそこからなら簡単に侵入できるな。入った途端に誰かと出くわしたら、一発でアウトだけど……」

「ここからじゃ、あそこが何の部屋か分からないし、人の気配を感じることもできない。無人の部屋かどうかは、近づいてみるまで分からないわ」

「だけど、ざっと見た限り、開いてるのはあの窓だけだ。……俺は、行ってみるべきだと思う。いくら警備が少ないって言っても、ここにもいつ衛兵が見回りに来るか分からないからな」

「そうね。もしかしたら、今が千載一遇のチャンスなのかもしれない。それじゃ、今から風の魔法であんたを飛ばすわ。かなりの高さまで一気に舞い上がることになるから、心の準備をしておいてちょうだい」

「お、おう」

「あ、そうそう。飛ばす前に、王宮に侵入してからやることをハッキリさせておきましょう。とにかく、何を置いても召喚士を見つけ出すことが大事。それで召喚士を見つけて、説得できればそれでよし、説得が無理そうだったら、気絶させて攫ってくること。いいわね」
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