義妹の身代わりに売られた私は大公家で幸せを掴む【完結】

小平ニコ

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第24話

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「は、はい。それでは……」

 頭を下げ、身を翻した瞬間、私はあることを思いついてもう一度身を翻した。ミシェルさんから貰った護身用の魔導具を、フレッド様に渡そうと思ったのだ。魔物の蠢く森の奥まで行く必要のなくなった私には不要の物なので、フレッド様と私兵の皆さんの安全のために使ってもらうべきだと判断したのである。

 その場で二度身を翻した私に、フレッド様は不思議そうに首をかしげる。

「どうした?」

「あの、これ……ミシェルさんに貰った護身用の魔導具なんですけど、よろしければお使いください。目くらましくらいにはなるそうです」

 そう言って差し出した飴玉サイズの魔導具を、フレッド様は手のひらで軽く転がし、それから私に返した。

「気持ちだけもらっておくよ。この森にいる魔物はでかい奴が多い。その魔導具が発生させる炎程度では、ほとんど動きを止めることはできないからな。そいつは小型の魔物か、人間の盗賊相手ならけっこう有効だ。お守り代わりにお前が持っておくといい。まあ、この辺りは治安がいいから盗賊なんて出ないけどね」

「そ、そうですか。わかりました」

「もっとも、お守りならもう十分かな」

「えっ?」

「お前の持ってるその地図のことだよ」

 私の手には、帰り道の確認のために取りだした地図があった。そう。エリナさんが書いてくれた、あの簡単な地図だ。これが何のお守りになるというのだろう? 私の表情からその疑問を感じ取ったのか、フレッド様は地図を指さしながら説明してくれる。

「それはただの紙切れじゃない。魔物を退ける力が込められた護符だよ。効果は数時間限定だが、こちらから刺激さえしなければ、強力な魔物だって襲ってはこなくなる優れものだ。高いんだぞ、それ。金があっても、ツテがないと手に入らないしな」

「エリナさんが、そんなすごいものを私に? でも、そんなこと一言だって……」

「あいつは無駄話をしないからなあ。お前が地図を捨てるはずがないし、説明する必要はないと判断したんだろう。いや、でも、それくらい話しておくべきだよな。道中の安心感につながるんだし。やっぱり、ちょっと言葉足らずだな、エリナは」

「でも、私が危ない目に合わないように、凄く考えてくれていたんですね。それなのに私、エリナさんのことを冷淡な人間だと思っていました。自分が恥ずかしいです……」

「さっき言ったろ。人によって態度を変えない正直者の方が信用できるって。そういう意味ではブレアナ、お前もそうだな。大公家の長男である俺に対しても、へりくだるだけじゃない。ムッとしたときはちゃんと怒るし、不思議に思ったことは素直に尋ねる。お前も、なかなかの正直者だよ。お前とエリナ、けっこう似てるかもな」
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