13 / 57
第13話
しおりを挟む
私はメイナード先生に、丁寧にお礼を言った。
……本当に、助かったわ。九死に一生とは、まさにこのことね。
私を殺しそこなって、焦っているエミリーナの顔が目に浮かぶ。
そうだ、エミリーナ!
エミリーナ自身の口から語られた不正入学の詳細を、メイナード先生に伝えないと!
私は、安静にしてろと言われたことも忘れ、勢い良く体を起こし、叫ぶ。
「先生、私、分かったんです! エミリーナはやっぱり、不正な方法で、この王立高等貴族院に入ったんです! それも、チェスタスの手引きで! それで、それで、先生に言いつけようとした私を、エミリーナは屋上から……!」
改めて自分で言葉にすると、あと一歩で殺されるところだった実感がわいてきて、急激に恐ろしくなる。感情が高ぶった私は、ぽろぽろと涙をこぼしながら、知っているすべての情報をメイナード先生に告白した。
そして、話が全て終わると、メイナード先生は私の体をいたわるように、優しくベッドへと横たえてくれた。それから先生は、深いため息を漏らし、言葉を紡ぎ始める。
「そうですか……やはりチェスタスくん……というより、ディアルデン家が、今回の不正に大きくかかわっているようですね」
私は横になったまま、枕から顔だけをメイナード先生の方に向け、問う。
「先生、これだけの事実が分かっていれば、エミリーナとチェスタス、あと、不正にかかわっている先生たちも、処罰することができますよね……?」
メイナード先生は難しい顔で、首を左右に振る。
「残念ですが、それは難しいでしょう。昨日、アンジェラさんとお話をしてから、私は夜もずっと調査を続けていたのですが、恐ろしいことがわかりました。……どうやら、今回の不正を主導しているのは、王立高等貴族院のトップ――理事長のようなのです」
「そんな……!」
「理事長は、王室や司法関係者に対しても発言力のある、この国の圧倒的有力者です。アンジェラさんの証言は大変貴重なものですが、もっと決定的な物証がない限り、何を言っても握りつぶされてしまうでしょう。最悪の場合、証言した側の方が、濡れ衣を着せられて、罰せられてしまう可能性もあります」
「じゃ、じゃあせめて、私を屋上から突き落としたエミリーナだけは、えっと、その、殺人未遂の罪に問えますよね……?」
「正直言って、それも難しいと思います。誰も、エミリーナさんがアンジェラさんを突き落とした瞬間を見ていませんから。皆、あなたが屋上から足を滑らせて、たまたま柵の低かった部分から、落ちてしまったのだと思っています」
「ち、違います! 私は確かに、エミリーナに突き落とされて……! あ、いや、よく考えたら、魔法で落とされたんだから、突き落とされたのとは、ちょっと違うかな。でもとにかく、殺されかけたのは事実です! 信じてください!」
……本当に、助かったわ。九死に一生とは、まさにこのことね。
私を殺しそこなって、焦っているエミリーナの顔が目に浮かぶ。
そうだ、エミリーナ!
エミリーナ自身の口から語られた不正入学の詳細を、メイナード先生に伝えないと!
私は、安静にしてろと言われたことも忘れ、勢い良く体を起こし、叫ぶ。
「先生、私、分かったんです! エミリーナはやっぱり、不正な方法で、この王立高等貴族院に入ったんです! それも、チェスタスの手引きで! それで、それで、先生に言いつけようとした私を、エミリーナは屋上から……!」
改めて自分で言葉にすると、あと一歩で殺されるところだった実感がわいてきて、急激に恐ろしくなる。感情が高ぶった私は、ぽろぽろと涙をこぼしながら、知っているすべての情報をメイナード先生に告白した。
そして、話が全て終わると、メイナード先生は私の体をいたわるように、優しくベッドへと横たえてくれた。それから先生は、深いため息を漏らし、言葉を紡ぎ始める。
「そうですか……やはりチェスタスくん……というより、ディアルデン家が、今回の不正に大きくかかわっているようですね」
私は横になったまま、枕から顔だけをメイナード先生の方に向け、問う。
「先生、これだけの事実が分かっていれば、エミリーナとチェスタス、あと、不正にかかわっている先生たちも、処罰することができますよね……?」
メイナード先生は難しい顔で、首を左右に振る。
「残念ですが、それは難しいでしょう。昨日、アンジェラさんとお話をしてから、私は夜もずっと調査を続けていたのですが、恐ろしいことがわかりました。……どうやら、今回の不正を主導しているのは、王立高等貴族院のトップ――理事長のようなのです」
「そんな……!」
「理事長は、王室や司法関係者に対しても発言力のある、この国の圧倒的有力者です。アンジェラさんの証言は大変貴重なものですが、もっと決定的な物証がない限り、何を言っても握りつぶされてしまうでしょう。最悪の場合、証言した側の方が、濡れ衣を着せられて、罰せられてしまう可能性もあります」
「じゃ、じゃあせめて、私を屋上から突き落としたエミリーナだけは、えっと、その、殺人未遂の罪に問えますよね……?」
「正直言って、それも難しいと思います。誰も、エミリーナさんがアンジェラさんを突き落とした瞬間を見ていませんから。皆、あなたが屋上から足を滑らせて、たまたま柵の低かった部分から、落ちてしまったのだと思っています」
「ち、違います! 私は確かに、エミリーナに突き落とされて……! あ、いや、よく考えたら、魔法で落とされたんだから、突き落とされたのとは、ちょっと違うかな。でもとにかく、殺されかけたのは事実です! 信じてください!」
50
あなたにおすすめの小説
幼なじみと再会したあなたは、私を忘れてしまった。
クロユキ
恋愛
街の学校に通うルナは同じ同級生のルシアンと交際をしていた。同じクラスでもあり席も隣だったのもあってルシアンから交際を申し込まれた。
そんなある日クラスに転校生が入って来た。
幼い頃一緒に遊んだルシアンを知っている女子だった…その日からルナとルシアンの距離が離れ始めた。
誤字脱字がありますが、読んでもらえたら嬉しいです。
更新不定期です。
よろしくお願いします。
アンジェリーヌは一人じゃない
れもんぴーる
恋愛
義母からひどい扱いされても我慢をしているアンジェリーヌ。
メイドにも冷遇され、昔は仲が良かった婚約者にも冷たい態度をとられ居場所も逃げ場所もなくしていた。
そんな時、アルコール入りのチョコレートを口にしたアンジェリーヌの性格が激変した。
まるで別人になったように、言いたいことを言い、これまで自分に冷たかった家族や婚約者をこぎみよく切り捨てていく。
実は、アンジェリーヌの中にずっといた魂と入れ替わったのだ。
それはアンジェリーヌと一緒に生まれたが、この世に誕生できなかったアンジェリーヌの双子の魂だった。
新生アンジェリーヌはアンジェリーヌのため自由を求め、家を出る。
アンジェリーヌは満ち足りた生活を送り、愛する人にも出会うが、この身体は自分の物ではない。出来る事なら消えてしまった可哀そうな自分の半身に幸せになってもらいたい。でもそれは自分が消え、愛する人との別れの時。
果たしてアンジェリーヌの魂は戻ってくるのか。そしてその時もう一人の魂は・・・。
*タグに「平成の歌もあります」を追加しました。思っていたより歌に注目していただいたので(*´▽`*)
(なろうさま、カクヨムさまにも投稿予定です)
悪女と呼ばれた王妃
アズやっこ
恋愛
私はこの国の王妃だった。悪女と呼ばれ処刑される。
処刑台へ向かうと先に処刑された私の幼馴染み、私の護衛騎士、私の従者達、胴体と頭が離れた状態で捨て置かれている。
まるで屑物のように足で蹴られぞんざいな扱いをされている。
私一人処刑すれば済む話なのに。
それでも仕方がないわね。私は心がない悪女、今までの行いの結果よね。
目の前には私の夫、この国の国王陛下が座っている。
私はただ、
貴方を愛して、貴方を護りたかっただけだったの。
貴方のこの国を、貴方の地位を、貴方の政務を…、
ただ護りたかっただけ…。
だから私は泣かない。悪女らしく最後は笑ってこの世を去るわ。
❈ 作者独自の世界観です。
❈ ゆるい設定です。
❈ 処刑エンドなのでバットエンドです。
【完結】公爵令嬢の育て方~平民の私が殿下から溺愛されるいわれはないので、ポーション開発に励みます。
buchi
恋愛
ポーシャは、平民の特待生として貴族の学園に入学したが、容貌もパッとしなければ魔力もなさそうと蔑視の対象に。それなのに、入学早々、第二王子のルーカス殿下はポーシャのことを婚約者と呼んで付きまとう。デロ甘・辛辣・溺愛・鈍感コメディ(?)。殿下の一方通行がかわいそう。ポジティブで金儲けに熱心なポーシャは、殿下を無視して自分の道を突き進む。がんばれ、殿下! がんばれ、ポーシャ?
王命って何ですか? 虐げられ才女は理不尽な我慢をやめることにした
まるまる⭐️
恋愛
【第18回恋愛小説大賞において優秀賞を頂戴致しました。応援頂いた読者の皆様に心よりの感謝を申し上げます。本当にありがとうございました】
その日、貴族裁判所前には多くの貴族達が傍聴券を求め、所狭しと行列を作っていた。
貴族達にとって注目すべき裁判が開かれるからだ。
現国王の妹王女の嫁ぎ先である建国以来の名門侯爵家が、新興貴族である伯爵家から訴えを起こされたこの裁判。
人々の関心を集めないはずがない。
裁判の冒頭、証言台に立った伯爵家長女は涙ながらに訴えた。
「私には婚約者がいました…。
彼を愛していました。でも、私とその方の婚約は破棄され、私は意に沿わぬ男性の元へと嫁ぎ、侯爵夫人となったのです。
そう…。誰も覆す事の出来ない王命と言う理不尽な制度によって…。
ですが、理不尽な制度には理不尽な扱いが待っていました…」
裁判開始早々、王命を理不尽だと公衆の面前で公言した彼女。裁判での証言でなければ不敬罪に問われても可笑しくはない発言だ。
だが、彼女はそんな事は全て承知の上であえてこの言葉を発した。
彼女はこれより少し前、嫁ぎ先の侯爵家から彼女の有責で離縁されている。原因は彼女の不貞行為だ。彼女はそれを否定し、この裁判に於いて自身の無実を証明しようとしているのだ。
次々に積み重ねられていく証言に次第に追い込まれていく侯爵家。明らかになっていく真実を傍聴席の貴族達は息を飲んで見守る。
裁判の最後、彼女は傍聴席に向かって訴えかけた。
「王命って何ですか?」と。
✳︎不定期更新、設定ゆるゆるです。
クリスティーヌの本当の幸せ
宝月 蓮
恋愛
ニサップ王国での王太子誕生祭にて、前代未聞の事件が起こった。王太子が婚約者である公爵令嬢に婚約破棄を突き付けたのだ。そして新たに男爵令嬢と婚約する目論見だ。しかし、そう上手くはいかなかった。
この事件はナルフェック王国でも話題になった。ナルフェック王国の男爵令嬢クリスティーヌはこの事件を知り、自分は絶対に身分不相応の相手との結婚を夢見たりしないと決心する。タルド家の為、領民の為に行動するクリスティーヌ。そんな彼女が、自分にとっての本当の幸せを見つける物語。
小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。
えっ「可愛いだけの無能な妹」って私のことですか?~自業自得で追放されたお姉様が戻ってきました。この人ぜんぜん反省してないんですけど~
村咲
恋愛
ずっと、国のために尽くしてきた。聖女として、王太子の婚約者として、ただ一人でこの国にはびこる瘴気を浄化してきた。
だけど国の人々も婚約者も、私ではなく妹を選んだ。瘴気を浄化する力もない、可愛いだけの無能な妹を。
私がいなくなればこの国は瘴気に覆いつくされ、荒れ果てた不毛の地となるとも知らず。
……と思い込む、国外追放されたお姉様が戻ってきた。
しかも、なにを血迷ったか隣国の皇子なんてものまで引き連れて。
えっ、私が王太子殿下や国の人たちを誘惑した? 嘘でお姉様の悪評を立てた?
いやいや、悪評が立ったのも追放されたのも、全部あなたの自業自得ですからね?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる