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第19話

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「そ、そうですよね。ごめんなさい、図々しく、あれこれ聞いてしまって……」

 明らかにションボリした様子の私を見て、ガンアイン氏はこちらにすり寄って来た。そしてなんと、彼は無遠慮にも私の肩を抱き、身の毛もよだつような猫撫で声を発する。

「いやいやいやいや、いいんだよ。ワシは、おしゃべりは大好きだ。ほほほ、特に、きみのような若い娘とのおしゃべりは、たまらん。本当なら、隠し事なんてしたくないんだけどね、それでも、重要な立場にいる人間は、なんでもかんでも喋るというわけにはいかないんだ。わかってくれるね?」

 ガンアイン氏は、抱いている私の肩に置いた大きな手を上下に滑らし、撫でさするようにしながらねっとりと囁く。この人、何を考えているんだろう。仮にも甥の婚約者に対し、こんな態度を取るなんて。

 今すぐ彼を突き飛ばして、ここから逃げてしまいたい。

 だが、まだだ。
 もう少しで、何か、重要なことを聞き出せる気がする。

 たった今、自分でも言っていたが、ガンアイン氏はかなりのおしゃべり好きだ。あんまり気分の良くないことだが、どうやら私に好意(いや、ただの欲望と言った方が適切だろうか)を持っているようだし、あと一歩踏み込めば、話を核心に持っていける……はず。

 よし。
 いちかばちか。

 私は勝負の決意を固め、言う。

「あの、ガンアインおじさま、実は、相談があるんですけど……」

「んん~? 何かな? ワシにできることなら、なんでもしてあげるよ?」

「ありがとうございます。その、ですね。私の友達で、王立高等貴族院に転入したがってる子がいるんですけど、その子、下級貴族の家の子で、えっと、成績も、それほど良くないんです」

「ほおぉ~、そうかそうか、それは、困ったねぇ~」

 ガンアイン氏は、私の話を聞いているのかいないのか、適当な言葉を返しながら、私の胸元に視線を向けている。不快感でじんましんが出そうだが、ここが踏ん張りどころだ。あと少し、あと少しの辛抱よ、私。

 あと、言うまでもないが、『王立高等貴族院に転入したがってる私の友達』なんて者は、実際には存在しない。不正入学を希望する生徒の情報を出した時、ガンアイン氏がどんな反応を示すのかを、私は知りたいのだ。

 私はさらに一歩、踏み込んだ話をする。

「ガンアインおじさま、さっき、言ってましたよね? 王立高等貴族院の理事長と、仲がいいって。……なんとか、口利きをしてもらうわけにはいきませんか?」

 私の肩を撫で回していたガンアイン氏の手が、ピタリと止まった。
 彼は、これまでより幾分か真剣な表情で私の目を見据え、問う。

「口利き……とは、どういう意味かね?」
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