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第46話
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「それは……」
「お願い、これ以上庇い立てして、私を惨めにさせないで。……私の完敗よ。まさか、前科者になってまで、あなたを殺そうとした私を助けようとするなんて。あなたの魂は、本当に清らかで、高潔だわ。だから、そんなあなたに庇われると、自分の汚さを思い知らされて、もっと辛くなるの」
「…………」
「でも、庇ってくれて、ありがとう。あなたの、その気持ちだけは受け取って、これから心の中で大事にして、生きていくわ。……私、間違ったことばかりしてしまったけど、結果的にあなたを殺すことができなくて、本当に良かったと思う。私に屋上から落とされたあなたを魔法で受け止めてくれた、ナディアス王子殿下のおかげね」
そう言うと、エミリーナはナディアス王子に向き直り、微笑を浮かべて言う。
「ナディアス王子。私の殺人未遂の罪は二つです。ディアルデン家の地下でのことと、今話した、前日の屋上でのことです。証拠なんて必要ありません、私はすべて認め、自白します」
「いいのですか? アンジェラさんは、あなたが重たい罪になることを望んでいないようですし、ディアルデン家でのことはともかく、昨日の屋上でのことは、証拠不十分で、不問にすることもできるんですよ?」
エミリーナは、首を左右に振った。
「いいんです。自分がやったことの、けじめをつけないといけませんから。ちゃんと、二つ分の罰を与えてください」
私は、エミリーナの肩を掴み、言う。
「エミリーナ、そこまでしなくても……さっき、ナディアス王子も言ってたけど、この国では、罪は加算制よ。殺人未遂二つ分だと、たぶん、十年は刑務所に……」
エミリーナはもう一度だけ、首を左右に振る。
その表情には、意外にも悲壮感はなく、どこかサッパリとして見えた。
「こんな、薄汚れた私でも、せめてこれからは、筋を通して生きていきたいの。だからお願い、私の思う通りにさせて。……ふふ、実際に刑務所に入ったら、『やっぱり、やめておけばよかった』って、後悔するかもしれないけどね」
そしてエミリーナは、肩を掴んだままだった私の手に、自分の手を重ねた。
それから、私の目を見て、どこか不安そうな顔で問いかける。
「ねえ、アンジェラ。図々しいけど、本当に、図々しいと思うけど、あなたのこと、友達だと思ってもいい……?」
私は深く頷き、答える。
「もちろんよ」
「ありがとう。……あなたみたいな人が王宮で働けば、きっと、この国は良くなるでしょうね。さよなら、アンジェラ」
それから、エミリーナと、いまだに気絶したままのガンアイン氏は、王宮の衛兵に連れられて、部屋を出て行った。私はエミリーナがいなくなった後も、彼女の通過した扉を、静かに眺めていた。
「お願い、これ以上庇い立てして、私を惨めにさせないで。……私の完敗よ。まさか、前科者になってまで、あなたを殺そうとした私を助けようとするなんて。あなたの魂は、本当に清らかで、高潔だわ。だから、そんなあなたに庇われると、自分の汚さを思い知らされて、もっと辛くなるの」
「…………」
「でも、庇ってくれて、ありがとう。あなたの、その気持ちだけは受け取って、これから心の中で大事にして、生きていくわ。……私、間違ったことばかりしてしまったけど、結果的にあなたを殺すことができなくて、本当に良かったと思う。私に屋上から落とされたあなたを魔法で受け止めてくれた、ナディアス王子殿下のおかげね」
そう言うと、エミリーナはナディアス王子に向き直り、微笑を浮かべて言う。
「ナディアス王子。私の殺人未遂の罪は二つです。ディアルデン家の地下でのことと、今話した、前日の屋上でのことです。証拠なんて必要ありません、私はすべて認め、自白します」
「いいのですか? アンジェラさんは、あなたが重たい罪になることを望んでいないようですし、ディアルデン家でのことはともかく、昨日の屋上でのことは、証拠不十分で、不問にすることもできるんですよ?」
エミリーナは、首を左右に振った。
「いいんです。自分がやったことの、けじめをつけないといけませんから。ちゃんと、二つ分の罰を与えてください」
私は、エミリーナの肩を掴み、言う。
「エミリーナ、そこまでしなくても……さっき、ナディアス王子も言ってたけど、この国では、罪は加算制よ。殺人未遂二つ分だと、たぶん、十年は刑務所に……」
エミリーナはもう一度だけ、首を左右に振る。
その表情には、意外にも悲壮感はなく、どこかサッパリとして見えた。
「こんな、薄汚れた私でも、せめてこれからは、筋を通して生きていきたいの。だからお願い、私の思う通りにさせて。……ふふ、実際に刑務所に入ったら、『やっぱり、やめておけばよかった』って、後悔するかもしれないけどね」
そしてエミリーナは、肩を掴んだままだった私の手に、自分の手を重ねた。
それから、私の目を見て、どこか不安そうな顔で問いかける。
「ねえ、アンジェラ。図々しいけど、本当に、図々しいと思うけど、あなたのこと、友達だと思ってもいい……?」
私は深く頷き、答える。
「もちろんよ」
「ありがとう。……あなたみたいな人が王宮で働けば、きっと、この国は良くなるでしょうね。さよなら、アンジェラ」
それから、エミリーナと、いまだに気絶したままのガンアイン氏は、王宮の衛兵に連れられて、部屋を出て行った。私はエミリーナがいなくなった後も、彼女の通過した扉を、静かに眺めていた。
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