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第62話
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「あはははっ! それで、舞い上がった花びらがいつこっちを攻撃してくるかと警戒しているうちに、リリエンヌに逃げられちまったってわけか!」
日没後。
リーゼルの家に戻った私は、同じく家に帰って来ていたリーゼルとテーブルで向き合い、話をしている。……あのリリエンヌ・リリアンヌにまんまと逃げられた私の間抜けっぷりがおかしかったのか、リーゼルは声を上げて笑った。
私は、ちょっとだけ拗ねた様子で、唇を尖らせる。
「ちょっと笑いすぎじゃない」
リーゼルはすまなそうに苦笑し、『もう笑わないよ』と言うように口元を押さえ、小さく手を振った。
「ごめんごめん、悪かった。そんなに拗ねないでくれ。夕飯はあんたの食べたいもの作るからさ。もちろん、うちにある食材でできるものに限られるけどね」
「うーん……食べたいものかぁ。別に、なんでもいいわ。私、特に『これが食べたい』ってものもないし、あなたの作る料理なら、きっとなんでも美味しいと思うから」
「ふふ、そんなに持ち上げても、大したものは出てこないよ。……そうだな、もうすっかり日も暮れちまったし、今からあまり手のかかる料理を作るのも大変だから、簡単なスープと、トマトのブルスケッタあたりにしておくか」
「ブルスケッタ。確か、パンの上に色々な具材を乗っけて焼く料理ね」
「その通り。金もかからず、手間いらずで美味しい。俺の好物だ」
「知識としては知ってるけど食べたことないから、楽しみだわ。私も何か手伝おうか?」
「じゃあ、皿だけ出しておいてくれ」
「それだけ? 言ってくれれば、何でもやるわよ?」
「気持ちはありがたいが、台所仕事に慣れてない奴が隣にいると、余計に仕事が増えそうなんでね」
「まあ辛辣」
「冗談だよ。それに、皿を出してくれるだけでも、けっこう助かるもんさ。あんたもいつか、台所に立つ日が来れば分かるよ」
「ふうん、そういうもんかしら」
そこで会話は切れ、リーゼルは鮮やかな手際でバゲットをスライスすると、その上にオリーブオイルを塗り、刻んだニンニクを擦り付けていく。
私はお皿を出しながらそれを眺め、やや驚いた声を上げた。
「ちょっと待って。あなたさっき、『トマトの』ブルスケッタって言ったわよね? トマトにニンニクなんて合うの?」
リーゼルはちらりとこちらを振り返り、微笑みながら答える。
「合うも何も、このニンニクがトマトのブルスケッタのポイントなんだ。ま、食ってみればわかるよ」
日没後。
リーゼルの家に戻った私は、同じく家に帰って来ていたリーゼルとテーブルで向き合い、話をしている。……あのリリエンヌ・リリアンヌにまんまと逃げられた私の間抜けっぷりがおかしかったのか、リーゼルは声を上げて笑った。
私は、ちょっとだけ拗ねた様子で、唇を尖らせる。
「ちょっと笑いすぎじゃない」
リーゼルはすまなそうに苦笑し、『もう笑わないよ』と言うように口元を押さえ、小さく手を振った。
「ごめんごめん、悪かった。そんなに拗ねないでくれ。夕飯はあんたの食べたいもの作るからさ。もちろん、うちにある食材でできるものに限られるけどね」
「うーん……食べたいものかぁ。別に、なんでもいいわ。私、特に『これが食べたい』ってものもないし、あなたの作る料理なら、きっとなんでも美味しいと思うから」
「ふふ、そんなに持ち上げても、大したものは出てこないよ。……そうだな、もうすっかり日も暮れちまったし、今からあまり手のかかる料理を作るのも大変だから、簡単なスープと、トマトのブルスケッタあたりにしておくか」
「ブルスケッタ。確か、パンの上に色々な具材を乗っけて焼く料理ね」
「その通り。金もかからず、手間いらずで美味しい。俺の好物だ」
「知識としては知ってるけど食べたことないから、楽しみだわ。私も何か手伝おうか?」
「じゃあ、皿だけ出しておいてくれ」
「それだけ? 言ってくれれば、何でもやるわよ?」
「気持ちはありがたいが、台所仕事に慣れてない奴が隣にいると、余計に仕事が増えそうなんでね」
「まあ辛辣」
「冗談だよ。それに、皿を出してくれるだけでも、けっこう助かるもんさ。あんたもいつか、台所に立つ日が来れば分かるよ」
「ふうん、そういうもんかしら」
そこで会話は切れ、リーゼルは鮮やかな手際でバゲットをスライスすると、その上にオリーブオイルを塗り、刻んだニンニクを擦り付けていく。
私はお皿を出しながらそれを眺め、やや驚いた声を上げた。
「ちょっと待って。あなたさっき、『トマトの』ブルスケッタって言ったわよね? トマトにニンニクなんて合うの?」
リーゼルはちらりとこちらを振り返り、微笑みながら答える。
「合うも何も、このニンニクがトマトのブルスケッタのポイントなんだ。ま、食ってみればわかるよ」
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