追放された魔女は、実は聖女でした。聖なる加護がなくなった国は、もうおしまいのようです【第一部完】

小平ニコ

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第63話

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 そして、バゲットをトースターに入れると、焼きあがるまでに、これまた鮮やかな手つきでトマトを刻み、その上にたっぷりと乾燥バジルの粉末を振りかけた。最後に、塩やらなんやら、あれこれと調味料を振りまき、焼きあがったバゲットにそれらを全部乗っけると、いくつかチーズをトッピングする。

「はい、これで完成だ。どうだ、本当に手間いらずだろう?」

「そうね。う~ん、ニンニクの良い香りがして、食欲をそそる……でも、トマトとニンニクなんて、本当に合うのかしら? やっぱり、イマイチ信じられないわ」

「あんたも結構食い下がるな。ま、百聞は一見に如かず。いや、この場合『一食に如かず』かな。とにかく、食べてみなよ」

「ん、では、いただきます……」

 ニンニクとトマトが合うのか、いまだに半信半疑な私であったが、かなりお腹がすいていたこともあり、とにかく食べてみることにした。

 む……!

 これは……!

 焼きあがったバゲットのさっくりとした食感に、トマトのうま味が重なって、非常に美味……! たっぷり振りかけた乾燥バジルの効果で、トマト独特の臭みも完璧に消えており、いくらでも食べられる……

 そして、リーゼルが言った通り、バゲットに塗り込まれたオリーブオイルとガーリックの風味が、すべての味を引き立てている。う~ん……美味しい……これは美味しい……美味……うま……

「うま……うま……」

 生まれて初めて食べるタイプの味に脳が蕩け、私は「うまうま」と呟きながら、トマトのブルスケッタをムシャムシャ食べ続けた。リーゼルはそんな私を見て微笑むと、今度はスープの準備に取り掛かる。

「どうやら、気に入ってもらえたようだな。ブルスケッタは、本来は前菜とか軽食的なメニューで、夕食にメインで食べるようなもんじゃないんだが、俺、夜はあんまりいっぱい食べない方だからさ、こういう軽い食事の方が性に合うんだ」

「そうなの……いや、それにしても美味しいわ……うま……うま……」

「ほら、あっちのテーブルで座って食べなよ、行儀の悪い。スープもすぐに持ってくからさ」

「はぁい……うま……」

 そして私たちは、食卓に着き、シンプルながらも美味しい夕食を楽しんだのだった。……食後、私は改めて、リリエンヌ・リリアンヌに逃げられてしまったことを思いだし、ぼそりと呟く。

「あのさ、今日はごめんね」

 リーゼルは、不思議そうに首を傾げ、言う。

「ごめんって? 何が? あんた、何か謝るようなことしたっけ?」

「いや、その、ほら、せっかく『至高なる魔女の会』のナンバー2であるリリエンヌと出会ったのに、彼女をみすみす逃がしちゃったことよ」
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