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第15話
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はぁ。
面倒だけど、この新聞、隣の部屋に持って行かなきゃ。
そう思い、床に落ちた新聞を拾い上げた瞬間、私は固まった。
驚くべき見出しが、一面を飾っていたからだ。
『勇者パーティー、またも敗走! 魔王軍四天王の前に、なすすべなし!』
敗走とは文字通り、戦いに敗れ、逃げ走ることである。
見栄っ張りでプライドの高い勇者ラジアスは、他のどんなことよりも、『逃げること』が嫌いだ。……『またも敗走』ということは、そのラジアスが、何度も逃走という判断をしなければならないほど、追い詰められてばかりいるということだ。
にわかには、信じがたい記事だった。
勇者ラジアスは、人格的にはかなりアレだが、その実力は本物だ。加えて、これまた人格的にはかなりアレだが、攻撃魔法の天才である大魔導師トレイボンもいるのだから、いくら魔王軍の将軍クラスが相手でも、そうそう大ピンチになるとは考えにくい。
隣の部屋の人がとっている新聞を勝手に読むのは少々気が咎めたが、私はどうしても気になって、記事を読み込むことにした。
えっと……
なになに……
わっ、ほんとだ。
私が抜けた後、強敵との戦いでは、負け続きじゃない。
新しく入ったヒーラーの人とは、上手くいってないのかしら?
あっ。
有名な戦術評論家の解説が書いてある。
どれどれ……
『現在の勇者パーティーには、致命的な欠陥がある。攻撃面に関しては、まあ、申し分ない。問題は、防御面だ。かつては聖女ディーナが、自らの体を盾代わりにして、敵の猛攻を受け止めていたが、彼女がいなくなったことで、強力な敵と相対したときは、途端に戦列が乱れるようになってしまった。早急に戦術の立て直しが必要だろう』
ふむ……
なるほど……
特別意識してやってたわけじゃないけど、確かに、パーティーの先頭で敵の攻撃を受け止めるのは、私の役目だった。その私がいなくなったから、今の勇者パーティーは、防壁のない要塞みたいになっちゃったのかな……
そっか……私自身も、深く考えてなかったけど、たぶん、勇者パーティーにおける、私の最大の役目は、聖女拳法による攻撃でも、治癒の魔法でもなく、敵からの攻撃を防ぎ、他の仲間にダメージが行かないようにする、『壁役』だったんだ。
恐らくラジアスも、数々の敗走を経て、そのことに気がついているはずだ。
となれば、また別の『壁役』さんを雇い入れるだろう。
勇者、魔導師、ヒーラー、そして壁役の四人パーティーなら、バランスもバッチリだ。多少のトラブルはあったが、これでまた、勇者パーティーは順調に機能すると思うから、心配はいらないでしょう。
……心配、か。
それなりに酷いことを言われて、パーティーを追放されたのに、今でもラジアスたちを心配してるんだから、私もけっこうなお人よしよね。
私は、何気なく窓から空を見て、独り言をつぶやいた。
「まあ、だからと言って、もう一度勇者パーティーに合流しようとは思わないけどね」
さて、新聞を隣の部屋にもっていかないと。
私は髪と服装を整え、いそいそと自室を出ていくのだった。
――――――――――――――――――――――――――――――――
次回は勇者ラジアスの視点で物語が進んでいきます。
聖女ディーナを追放した後、勇者パーティーはトラブル続きで、ラジアスもとうとう、自分の判断が間違っていたことに気がつき、頭を抱えてしまうのでした……
面倒だけど、この新聞、隣の部屋に持って行かなきゃ。
そう思い、床に落ちた新聞を拾い上げた瞬間、私は固まった。
驚くべき見出しが、一面を飾っていたからだ。
『勇者パーティー、またも敗走! 魔王軍四天王の前に、なすすべなし!』
敗走とは文字通り、戦いに敗れ、逃げ走ることである。
見栄っ張りでプライドの高い勇者ラジアスは、他のどんなことよりも、『逃げること』が嫌いだ。……『またも敗走』ということは、そのラジアスが、何度も逃走という判断をしなければならないほど、追い詰められてばかりいるということだ。
にわかには、信じがたい記事だった。
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隣の部屋の人がとっている新聞を勝手に読むのは少々気が咎めたが、私はどうしても気になって、記事を読み込むことにした。
えっと……
なになに……
わっ、ほんとだ。
私が抜けた後、強敵との戦いでは、負け続きじゃない。
新しく入ったヒーラーの人とは、上手くいってないのかしら?
あっ。
有名な戦術評論家の解説が書いてある。
どれどれ……
『現在の勇者パーティーには、致命的な欠陥がある。攻撃面に関しては、まあ、申し分ない。問題は、防御面だ。かつては聖女ディーナが、自らの体を盾代わりにして、敵の猛攻を受け止めていたが、彼女がいなくなったことで、強力な敵と相対したときは、途端に戦列が乱れるようになってしまった。早急に戦術の立て直しが必要だろう』
ふむ……
なるほど……
特別意識してやってたわけじゃないけど、確かに、パーティーの先頭で敵の攻撃を受け止めるのは、私の役目だった。その私がいなくなったから、今の勇者パーティーは、防壁のない要塞みたいになっちゃったのかな……
そっか……私自身も、深く考えてなかったけど、たぶん、勇者パーティーにおける、私の最大の役目は、聖女拳法による攻撃でも、治癒の魔法でもなく、敵からの攻撃を防ぎ、他の仲間にダメージが行かないようにする、『壁役』だったんだ。
恐らくラジアスも、数々の敗走を経て、そのことに気がついているはずだ。
となれば、また別の『壁役』さんを雇い入れるだろう。
勇者、魔導師、ヒーラー、そして壁役の四人パーティーなら、バランスもバッチリだ。多少のトラブルはあったが、これでまた、勇者パーティーは順調に機能すると思うから、心配はいらないでしょう。
……心配、か。
それなりに酷いことを言われて、パーティーを追放されたのに、今でもラジアスたちを心配してるんだから、私もけっこうなお人よしよね。
私は、何気なく窓から空を見て、独り言をつぶやいた。
「まあ、だからと言って、もう一度勇者パーティーに合流しようとは思わないけどね」
さて、新聞を隣の部屋にもっていかないと。
私は髪と服装を整え、いそいそと自室を出ていくのだった。
――――――――――――――――――――――――――――――――
次回は勇者ラジアスの視点で物語が進んでいきます。
聖女ディーナを追放した後、勇者パーティーはトラブル続きで、ラジアスもとうとう、自分の判断が間違っていたことに気がつき、頭を抱えてしまうのでした……
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