二人分働いてたのに、「聖女はもう時代遅れ。これからはヒーラーの時代」と言われてクビにされました。でも、ヒーラーは防御魔法を使えませんよ?

小平ニコ

文字の大きさ
15 / 389

第15話

しおりを挟む
 はぁ。
 面倒だけど、この新聞、隣の部屋に持って行かなきゃ。

 そう思い、床に落ちた新聞を拾い上げた瞬間、私は固まった。
 驚くべき見出しが、一面を飾っていたからだ。

『勇者パーティー、またも敗走! 魔王軍四天王の前に、なすすべなし!』

 敗走とは文字通り、戦いに敗れ、逃げ走ることである。

 見栄っ張りでプライドの高い勇者ラジアスは、他のどんなことよりも、『逃げること』が嫌いだ。……『またも敗走』ということは、そのラジアスが、何度も逃走という判断をしなければならないほど、追い詰められてばかりいるということだ。

 にわかには、信じがたい記事だった。

 勇者ラジアスは、人格的にはかなりアレだが、その実力は本物だ。加えて、これまた人格的にはかなりアレだが、攻撃魔法の天才である大魔導師トレイボンもいるのだから、いくら魔王軍の将軍クラスが相手でも、そうそう大ピンチになるとは考えにくい。

 隣の部屋の人がとっている新聞を勝手に読むのは少々気が咎めたが、私はどうしても気になって、記事を読み込むことにした。

 えっと……
 なになに……

 わっ、ほんとだ。
 私が抜けた後、強敵との戦いでは、負け続きじゃない。
 新しく入ったヒーラーの人とは、上手くいってないのかしら?

 あっ。
 有名な戦術評論家の解説が書いてある。

 どれどれ……

『現在の勇者パーティーには、致命的な欠陥がある。攻撃面に関しては、まあ、申し分ない。問題は、防御面だ。かつては聖女ディーナが、自らの体を盾代わりにして、敵の猛攻を受け止めていたが、彼女がいなくなったことで、強力な敵と相対したときは、途端に戦列が乱れるようになってしまった。早急に戦術の立て直しが必要だろう』

 ふむ……
 なるほど……

 特別意識してやってたわけじゃないけど、確かに、パーティーの先頭で敵の攻撃を受け止めるのは、私の役目だった。その私がいなくなったから、今の勇者パーティーは、防壁のない要塞みたいになっちゃったのかな……

 そっか……私自身も、深く考えてなかったけど、たぶん、勇者パーティーにおける、私の最大の役目は、聖女拳法による攻撃でも、治癒の魔法でもなく、敵からの攻撃を防ぎ、他の仲間にダメージが行かないようにする、『壁役』だったんだ。

 恐らくラジアスも、数々の敗走を経て、そのことに気がついているはずだ。
 となれば、また別の『壁役』さんを雇い入れるだろう。

 勇者、魔導師、ヒーラー、そして壁役の四人パーティーなら、バランスもバッチリだ。多少のトラブルはあったが、これでまた、勇者パーティーは順調に機能すると思うから、心配はいらないでしょう。

 ……心配、か。

 それなりに酷いことを言われて、パーティーを追放されたのに、今でもラジアスたちを心配してるんだから、私もけっこうなお人よしよね。

 私は、何気なく窓から空を見て、独り言をつぶやいた。

「まあ、だからと言って、もう一度勇者パーティーに合流しようとは思わないけどね」

 さて、新聞を隣の部屋にもっていかないと。
 私は髪と服装を整え、いそいそと自室を出ていくのだった。

――――――――――――――――――――――――――――――――

 次回は勇者ラジアスの視点で物語が進んでいきます。

 聖女ディーナを追放した後、勇者パーティーはトラブル続きで、ラジアスもとうとう、自分の判断が間違っていたことに気がつき、頭を抱えてしまうのでした……
しおりを挟む
感想 288

あなたにおすすめの小説

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

宮廷から追放された聖女の回復魔法は最強でした。後から戻って来いと言われても今更遅いです

ダイナイ
ファンタジー
「お前が聖女だな、お前はいらないからクビだ」 宮廷に派遣されていた聖女メアリーは、お金の無駄だお前の代わりはいくらでもいるから、と宮廷を追放されてしまった。 聖国から王国に派遣されていた聖女は、この先どうしようか迷ってしまう。とりあえず、冒険者が集まる都市に行って仕事をしようと考えた。 しかし聖女は自分の回復魔法が異常であることを知らなかった。 冒険者都市に行った聖女は、自分の回復魔法が周囲に知られて大変なことになってしまう。

追放したんでしょ?楽しく暮らしてるのでほっといて

だましだまし
ファンタジー
私たちの未来の王子妃を影なり日向なりと支える為に存在している。 敬愛する侯爵令嬢ディボラ様の為に切磋琢磨し、鼓舞し合い、己を磨いてきた。 決して追放に備えていた訳では無いのよ?

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜

AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。 そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。 さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。 しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。 それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。 だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。 そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

【完結】婚約破棄はいいですよ?ただ…貴方達に言いたいことがある方々がおられるみたいなので、それをしっかり聞いて下さいね?

水江 蓮
ファンタジー
「ここまでの悪事を働いたアリア・ウィンター公爵令嬢との婚約を破棄し、国外追放とする!!」 ここは裁判所。 今日は沢山の傍聴人が来てくださってます。 さて、罪状について私は全く関係しておりませんが折角なのでしっかり話し合いしましょう? 私はここに裁かれる為に来た訳ではないのです。 本当に裁かれるべき人達? 試してお待ちください…。

処理中です...