二人分働いてたのに、「聖女はもう時代遅れ。これからはヒーラーの時代」と言われてクビにされました。でも、ヒーラーは防御魔法を使えませんよ?

小平ニコ

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第67話

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「それはまあそうですが、偉大なる闘士であるお師匠様に、ゴブリンのように下劣な魔物の相手をさせるなんて、私としては、あまり気が進みません……」

「『下劣な魔物』とは、なかなか手厳しいわね。ゴブリンって、そんなにタチ悪いの? 実は私、一度も見たことないのよね、ゴブリン」

「えっ、そうなんですか?」

「うん。勇者パーティーの一員として旅してた時、襲ってくるのは基本的に、中級から上級の、強力なモンスターばっかりだったから。まあ、下級クラスのモンスターと遭遇することもあったけど、みんな私たちを見た瞬間に逃げ出すから、戦ったことはないわね。あ、でも、ゴブリンだけは、本当に、でくわしたことすらないわ」

「なるほど、無理もありません。ゴブリンはああ見えて、かなり賢い魔物です。自分から勇者パーティーに挑みかかるような愚かな真似はしないでしょう。完全なる自殺行為ですからね」

 そんなことを話しているうちに、ゴブリンの巣があるという岩壁にたどり着いた。……なに? なんだか、嫌な臭いがする。ほんの少しだけ考えて、これが腐臭であることに、私は気がついた。

 そして、その『腐臭』の発生源が何なのかは、すぐに分かった。

 岩壁の周囲。
 まるで奇妙なオブジェのように、人間の死体がはりつけにされているのだ。

 腐敗具合から見て、死んだのは数日ほど前だろう。
 みんな、男性だ。格好から察するに、恐らくは冒険者だと思う。

 エリスはため息を漏らし、死体に向かって小さく頭を下げながら、お坊さんのように両手を合わせた。

「たぶん、この人たちは、ゴブリン退治の依頼を受けた冒険者さんたちでしょう。返り討ちにあい、見せしめとして、さらし者にされているんですね」

「そうなんでしょうね、かわいそうに。……見たところ、ガッチリとして、なかなか強そうな人たちね。とても、ゴブリンみたいな弱い魔物に負けるようには思えないけど、何か卑怯な手でも使われたのかしら?」

 そこでエリスは、私を見て、やや真剣な調子で言う。

「お師匠様、ゴブリンは、決して弱い魔物ではありませんよ」

「そうなの?」

「はい。残忍で狡猾、人間のように武器防具を使いこなし、暗闇でも夜目が利くうえに集団戦も上手い。私はこれまで何度もゴブリンと戦ってきましたが、奴らと戦う際は、絶対に油断できません。本当に、何をしてくるか分かりませんから。……少なくとも、未熟な冒険者と比べたら、ゴブリンの集団の方がはるかに強いと思います」

「あなたほどの実力者がそこまで言うんだから、ゴブリンって本当に強いのね。……あれ、でも、その割に、戦闘経験の足りない駆け出しの冒険者とかが、やたらとゴブリン退治に行ったりするわよね?」
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