二人分働いてたのに、「聖女はもう時代遅れ。これからはヒーラーの時代」と言われてクビにされました。でも、ヒーラーは防御魔法を使えませんよ?

小平ニコ

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第76話

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「ゴブリンたちは気配を隠すのが上手いですし、この強烈なにおいの中では、こちらの感覚も鈍ります。自分たちの本拠地で、侵入者の後ろを取るなど、彼らにとっては朝飯前なのでしょう」

 そこでゴブリンたちは、一斉に奇声を上げた。

「げええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇー!」
「げええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇー!」
「げええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇー!」

 一糸乱れぬ、鬨の声。
 思わず耳を塞ぎたくなるほどの、大音響。

 しかし、それと同等の鋭い声で、エリスは叫んだ。

「お師匠様、奴らは足を狙ってきます! 気をつけてください!」

 エリスが叫ぶのと、ほどんど同時だった。
 ゴブリンたちは手に持った小刀を、手裏剣のように投げつけてくる。

 その狙いは、エリスの言った通り、私たちの足だった。

 前後から、ピッタリタイミングを合わせた一斉投擲。
 かわすとしたら上に飛ぶしかないが、そこで私は気がついた。

 ここ、やけに天井が低いわ。

 これでは、高く舞い上がることはできない。さっきから、少しずつ天井が低くなっていることには気がついていたが、少しずつ、本当に少しずつの変化だったので、あまり警戒していなかった。

 ……恐らく、ゴブリンたちがわざわざこの『天井の低い地点』で私たちを挟撃したのは、偶然ではないだろう。ジャンプして攻撃をかわすことができないように、全て計算づくだったのだ。

 やるわね、ゴブリン。
 いや、ほんとに感心したわ。

 でも、相手が悪すぎたわね。

 私は、回避行動をせず、下半身に防御結界を集中させた。そして、業物の盾や鎧よりも強固になった足で、回し蹴りを放ち、こちらに向かってきた小刀をすべてはじき返す。

 もちろん、ただはじき返しただけではない。
 投擲したゴブリンたちの群れに返って行くように、蹴飛ばしてやったのだ。

 さすがに全部命中というわけにはいかなかったが、背後にいた9匹のゴブリンの内、6匹の体に小刀が突き刺さり、奴らは驚きと苦痛の悲鳴を轟かせる。

 正面には、特に注意を払わなかった。
 エリスが、確実に攻撃を防いでくれると信じているからだ。

 そして、私の信頼に応えるように、エリスは大きめの『魔防壁』を張り、私を庇うみたいにして、すべての小刀を防いでくれた。……さすがね。たったの一ヶ月で、魔力によるバリアを、これほど自由自在に使いこなすことができるなんて。

 結界も、魔防壁も、使いっぱなしでいると、もの凄いスピードで魔力を消耗するし、何より強度が脆くなるから、基本的には攻撃が当たる一瞬に集中して使わなければならない。

 少し前に、魔防壁を使う際の魔力配分が難しいことは説明したが、魔力を集中するタイミングを見極めるのも、なかなかに難しい(特に命がけの実戦では)。しかし、エリスはもうほとんど、そのタイミングをものにしつつあるのだろう。素晴らしい戦闘センス。まさに、天才ね。
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