二人分働いてたのに、「聖女はもう時代遅れ。これからはヒーラーの時代」と言われてクビにされました。でも、ヒーラーは防御魔法を使えませんよ?

小平ニコ

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第96話

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 私の問いに、エリスはため息を漏らしながら答える。

「いえ、お師匠様は何もおかしなことはしていません。ただ、エルフの里の住人は、他種族が里に立ち入ることを、あまり快く思っていないのです。それに……」

「それに?」

「私自身も、エルフの里の人たちから、それほど好かれているとは言えない身分なので、今の舌打ちは、私に対しても向けられたものなのだと思います」

 言いながら、エリスは歩き出した。
 私も、その隣を歩きながら、重ねて問う。

「……あの、『エルフの里の人たちから、それほど好かれているとは言えない身分』って、どういう意味? エルフの世界にも、その、身分制度みたいなものがあるの?」

「人間の世界で言うところの『貴族』『平民』『奴隷』のような、ハッキリとした身分制度はありません。でも、序列はあります。……お師匠様、町を行くエルフたちと、私を見比べて、何か気がつくことはありませんか?」

 そう尋ねられて、私は改めて、道を歩くエルフたちを眺める。
 ……そこでやっと、彼らとエリスの、決定的な違いに気がついた。

 それは、耳の長さだ。

 エリスの耳は、人間よりは長いが、エルフにしては明らかに短い。
 道行く他のエルフたちと比べたら、その長さは半分ほどである。

 私は自分の耳を指さしながら、言う。

「あなたと他のエルフの違い……『耳の長さ』で、あってる?」

 エリスは、相変わらず歩きながら、首を回してこちらを向き、小さく頷いた。

「そうです。人間が、鼻の高さや目の大きさで容姿に優劣をつけるのと同じように、エルフは耳の長さこそに、美醜の価値基準があるのです。エルフの耳は、長ければ長いほど良く、先端が鋭く尖っている形が、最高に美しいと言われています」

 エリスの耳は、それほど長くはなく、先端もどちらかと言えば丸い。

 ふむ……人間の美的感覚で判断すれば、エリスは相当な美貌の持ち主だと思うが、エルフの世界では、あまり好ましくない容貌ということか……

 エリスは少しだけ歩くスピードを速め、さらに話を続ける。

「そして、耳の長さは、単に美醜を決めるだけではなく、先ほど言った『序列』に大きくかかわってきます。耳の長いエルフは、血筋の良い高貴な存在とされ、耳の短いエルフは『下賤な連中だ』と馬鹿にされ、蔑まれているんです」
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