111 / 389
第111話
しおりを挟む
「嘘でしょ? あなたがこれまで、一年かけて世界を巡ってもわからなかったのにそんな……」
「お師匠様、これを見てください」
エリスはそう言うと、小さなチラシを差し出した。ふーむ……エルフの里は、印刷技術も人間の社会より進んでいるらしい。実に色鮮やかで、文字もくっきりとして読みやすいチラシだ。
「ええっと、なになに……『今日より三日後、中枢区の総合体育館にて、エルフ式魔術ボクシングの競技大会が開かれます。腕に自信のある方は、こぞってご参加ください』……ふうん、大会かぁ。面白そうだけど、それがあなたのお義父さんの仇を探し出すことと、何の関係があるの?」
「重要なのはその下です。チラシの下部を、読んでください」
「はいはい……『優勝者には、エルフ族最高の巫女、ヒヒロミカ様から予言をたまわる権利が与えられます』……予言って、あの、未来予知とかの、予言?」
「そうです。その予言です」
予言とは……こりゃまた、いきなりスピリチュアルな単語が出てきたわね。
エルフの里は近代的だけど、こういうところは、やっぱりエルフっぽいのね。
こう言っては何だけど、人間の社会では、予言を信じる者なんて、今はほとんどいない。一時期、怪しげな霊能力者が世界の終末を予言し、救われるためには、ああしなければならない、こうしなければならないと、適当なことを言って、人々をたぶらかしていたが、結局、予言された世界最後の日には何も起こらなかった。
しかも、そのインチキ霊能力者は、支持者たちから多額のお布施を集めるだけ集めて、消息不明になってしまったのである。……つまり、多くの人間が、詐欺師の戯言に一杯食わされたというわけだ。
そのため、私たち人間は、『予言』なるものに対して、非常に懐疑的である。『予言』という単語が出た途端、私の視線が生暖かくなったことを感じ取ったエリスは、ちょっとだけ唇を尖らせ、不満そうに言う。
「お、お師匠様。確かに、人間の社会に時折現れる予言者は、そのほとんどがインチキですが、ヒヒロミカ様は違うんです。今年で2000歳を超える、エルフ社会の中でも伝説の巫女であり、彼女の目は千里を見渡し、彼女の耳は過去と未来の声を聞くことができると言われています。本当に、凄い人なんです」
「お師匠様、これを見てください」
エリスはそう言うと、小さなチラシを差し出した。ふーむ……エルフの里は、印刷技術も人間の社会より進んでいるらしい。実に色鮮やかで、文字もくっきりとして読みやすいチラシだ。
「ええっと、なになに……『今日より三日後、中枢区の総合体育館にて、エルフ式魔術ボクシングの競技大会が開かれます。腕に自信のある方は、こぞってご参加ください』……ふうん、大会かぁ。面白そうだけど、それがあなたのお義父さんの仇を探し出すことと、何の関係があるの?」
「重要なのはその下です。チラシの下部を、読んでください」
「はいはい……『優勝者には、エルフ族最高の巫女、ヒヒロミカ様から予言をたまわる権利が与えられます』……予言って、あの、未来予知とかの、予言?」
「そうです。その予言です」
予言とは……こりゃまた、いきなりスピリチュアルな単語が出てきたわね。
エルフの里は近代的だけど、こういうところは、やっぱりエルフっぽいのね。
こう言っては何だけど、人間の社会では、予言を信じる者なんて、今はほとんどいない。一時期、怪しげな霊能力者が世界の終末を予言し、救われるためには、ああしなければならない、こうしなければならないと、適当なことを言って、人々をたぶらかしていたが、結局、予言された世界最後の日には何も起こらなかった。
しかも、そのインチキ霊能力者は、支持者たちから多額のお布施を集めるだけ集めて、消息不明になってしまったのである。……つまり、多くの人間が、詐欺師の戯言に一杯食わされたというわけだ。
そのため、私たち人間は、『予言』なるものに対して、非常に懐疑的である。『予言』という単語が出た途端、私の視線が生暖かくなったことを感じ取ったエリスは、ちょっとだけ唇を尖らせ、不満そうに言う。
「お、お師匠様。確かに、人間の社会に時折現れる予言者は、そのほとんどがインチキですが、ヒヒロミカ様は違うんです。今年で2000歳を超える、エルフ社会の中でも伝説の巫女であり、彼女の目は千里を見渡し、彼女の耳は過去と未来の声を聞くことができると言われています。本当に、凄い人なんです」
42
あなたにおすすめの小説
追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?
タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。
白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。
しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。
王妃リディアの嫉妬。
王太子レオンの盲信。
そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。
「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」
そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。
彼女はただ一言だけ残した。
「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」
誰もそれを脅しとは受け取らなかった。
だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。
だから聖女はいなくなった
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」
レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。
彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。
だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。
キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。
※7万字程度の中編です。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
追放したんでしょ?楽しく暮らしてるのでほっといて
だましだまし
ファンタジー
私たちの未来の王子妃を影なり日向なりと支える為に存在している。
敬愛する侯爵令嬢ディボラ様の為に切磋琢磨し、鼓舞し合い、己を磨いてきた。
決して追放に備えていた訳では無いのよ?
無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……
タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。
婚約者を奪った妹と縁を切り、辺境領を継いだら勇者一行がついてきました
藤原遊
ファンタジー
婚約発表の場で、妹に婚約者を奪われた。
家族にも教会にも見放され、聖女である私・エリシアは “不要” と切り捨てられる。
その“褒賞”として押しつけられたのは――
魔物と瘴気に覆われた、滅びかけの辺境領だった。
けれど私は、絶望しなかった。
むしろ、生まれて初めて「自由」になれたのだ。
そして、予想外の出来事が起きる。
――かつて共に魔王を倒した“勇者一行”が、次々と押しかけてきた。
「君をひとりで行かせるわけがない」
そう言って微笑む勇者レオン。
村を守るため剣を抜く騎士。
魔導具を抱えて駆けつける天才魔法使い。
物陰から見守る斥候は、相変わらず不器用で優しい。
彼らと力を合わせ、私は土地を浄化し、村を癒し、辺境の地に息を吹き返す。
気づけば、魔物巣窟は制圧され、泉は澄み渡り、鉱山もダンジョンも豊かに開き――
いつの間にか領地は、“どの国よりも最強の地”になっていた。
もう、誰にも振り回されない。
ここが私の新しい居場所。
そして、隣には――かつての仲間たちがいる。
捨てられた聖女が、仲間と共に辺境を立て直す。
これは、そんな私の第二の人生の物語。
公爵家の末っ子娘は嘲笑う
たくみ
ファンタジー
圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。
アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。
ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?
それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。
自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。
このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。
それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。
※小説家になろうさんで投稿始めました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる