二人分働いてたのに、「聖女はもう時代遅れ。これからはヒーラーの時代」と言われてクビにされました。でも、ヒーラーは防御魔法を使えませんよ?

小平ニコ

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第114話

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 そんなわけで、翌日から、『エルフ式魔術ボクシング』の競技大会に向けての、練習をすることになった。

 練習と言っても、大会まで間がないので、今さら激しい特訓をしたり、新しい技術を覚えるようなことはせず、軽めのトレーニングとスパーリング――つまりは模擬戦を繰り返すだけである。

 午前中、エリスと何度か拳を合わせ、軽く汗を流し、あっという間に昼になる。……すると、遠くからズシーン、ズシーンと、重たい足音が響いて来た。きっと、マッギロウの足音だろう。

 そう思い、足音の方向を見ると、森の中から、マッギロウがぬぅっと巨体を現した。マッギロウは、ゆったりとした動きで、ズシンズシンとこちらに近づいて来て、静かに腰を下ろし、私とエリスの練習を見守っている。

 その穏やかなたたずまいは、まるで巨木だった。

 外見そのものは、オークの面影が色濃く残っているが、マッギロウからは、邪気のようなものを一切感じない。彼の周囲には、いつの間にか小鳥が集まって来て、皆、安心した様子で羽を休めている。

 そんなマッギロウに、エリスが声をかけた。

「せっかくですから、お兄ちゃんも、お師匠様に稽古をつけてもらいませんか? お師匠様は、地上最強の闘士です。少し手合わせしてもらうだけでも、もの凄く勉強になりますよ」

 ち、地上最強とまで言われると、少し照れる……

 マッギロウは、エリスの声が聞こえているのかいないのか、しばらくの間、微動だにしなかったが、やがて、小さく頷く。そして、大きな腰を持ち上げると、再びズシンズシンと音を立て、私の前までやって来た。

 うーん……
 大きい……

 こうして向き合うと、凄まじい迫力ね。まあ、そりゃそうよね。2メートル40cmって、ちょっとした小屋よりも大きいものね。

 私は、エリスとマッギロウを交互に見て、言う。

「えっと、それじゃ、軽くスパーリングでもすればいいかしら?」

「はい。時間は三分くらいで」

「ん、わかったわ。それじゃ、マッギロウさん、よろしくお願いします」

 私がぺこりと頭を下げると、マッギロウも小さく頭を下げ、一礼した。
 巨体を折り曲げるその振る舞いだけで、空気が動き、微風が起こったようだった。
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