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第145話(ユーゲンス視点)
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ノッドルが事故で妻を失ってから、もうずいぶんと経つ。
そろそろ、再婚しても良い頃合いだろう。
ワシは、真剣にノッドルを説得した。もう一度妻を娶り、我がルセイン家の『秘拳』を託すにふさわしい子を作ってくれ、と……
だが、ノッドルの答えは『NO』だった。
「死んだ女房以外を愛する気はねぇよ。俺の女は生涯あいつだけだ」
奴は、事も無げにそう言った。
だからワシは、激昂した。
「では、我がルセイン家の『秘拳』はどうするのだ! 継承していく者がいなければ、どんな素晴らしい技も、消えてなくなってしまうのだぞ!」
ノッドルは、『何をそんなに熱くなっているんだ』とでも言いたげな、不愉快なほど冷えた眼差しでワシを見て、諭すように言った。
「別にいいじゃねぇか。うちの『秘拳』は、ぶっそうな技だ。あんなもん、なくなっちまった方が、世の中のためだぜ」
「なんだと……」
「それでも、どうしても残したいって言うなら、エリスとマッギロウに継がせればいい。エリスには、天才的な格闘センスがあるから、ちょっと教えれば、すぐに覚えるだろう。マッギロウは、危険な『秘拳』なんて覚えたくないかもしれないが、それでも、親父が『伝承したい』って頼めば、素直に修行して、覚えてくれるさ。良い子だからな」
ワシは、めまいがした。『秘拳』の継承者は、血族の長男一人だけという伝統を、まったく守る気のないノッドルに、憎しみすら覚えた。ワシはふらつく足でなんとか踏ん張りながら、ノッドルに激しい言葉を浴びせていく。
「貴様、正気か!? ルセイン家の伝統をなんだと思っている!? 実子でない者や女に『秘拳』を継がせるなど、絶対にあってはならんことだ! ストッフェンたち、腑抜けた『エルフ式魔術ボクシング協会』の連中だって、そんな馬鹿なことはせん!」
「そうかい。じゃあ聞くがよ。なんで、血のつながりのある息子にしか、『秘拳』を継がせちゃ駄目なんだ? 親父はさっきから『伝統』『伝統』って、大げさに言ってるが、その『伝統』は、誰が決めたんだ?」
「そんなことは、知らん。しかし、知る必要はない。『伝統』の起源など、問題ではない。先人たちの作ったものを、我々後世の者が守り続けていくことそのものに、『伝統』の意味と価値があるのだ」
そろそろ、再婚しても良い頃合いだろう。
ワシは、真剣にノッドルを説得した。もう一度妻を娶り、我がルセイン家の『秘拳』を託すにふさわしい子を作ってくれ、と……
だが、ノッドルの答えは『NO』だった。
「死んだ女房以外を愛する気はねぇよ。俺の女は生涯あいつだけだ」
奴は、事も無げにそう言った。
だからワシは、激昂した。
「では、我がルセイン家の『秘拳』はどうするのだ! 継承していく者がいなければ、どんな素晴らしい技も、消えてなくなってしまうのだぞ!」
ノッドルは、『何をそんなに熱くなっているんだ』とでも言いたげな、不愉快なほど冷えた眼差しでワシを見て、諭すように言った。
「別にいいじゃねぇか。うちの『秘拳』は、ぶっそうな技だ。あんなもん、なくなっちまった方が、世の中のためだぜ」
「なんだと……」
「それでも、どうしても残したいって言うなら、エリスとマッギロウに継がせればいい。エリスには、天才的な格闘センスがあるから、ちょっと教えれば、すぐに覚えるだろう。マッギロウは、危険な『秘拳』なんて覚えたくないかもしれないが、それでも、親父が『伝承したい』って頼めば、素直に修行して、覚えてくれるさ。良い子だからな」
ワシは、めまいがした。『秘拳』の継承者は、血族の長男一人だけという伝統を、まったく守る気のないノッドルに、憎しみすら覚えた。ワシはふらつく足でなんとか踏ん張りながら、ノッドルに激しい言葉を浴びせていく。
「貴様、正気か!? ルセイン家の伝統をなんだと思っている!? 実子でない者や女に『秘拳』を継がせるなど、絶対にあってはならんことだ! ストッフェンたち、腑抜けた『エルフ式魔術ボクシング協会』の連中だって、そんな馬鹿なことはせん!」
「そうかい。じゃあ聞くがよ。なんで、血のつながりのある息子にしか、『秘拳』を継がせちゃ駄目なんだ? 親父はさっきから『伝統』『伝統』って、大げさに言ってるが、その『伝統』は、誰が決めたんだ?」
「そんなことは、知らん。しかし、知る必要はない。『伝統』の起源など、問題ではない。先人たちの作ったものを、我々後世の者が守り続けていくことそのものに、『伝統』の意味と価値があるのだ」
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