二人分働いてたのに、「聖女はもう時代遅れ。これからはヒーラーの時代」と言われてクビにされました。でも、ヒーラーは防御魔法を使えませんよ?

小平ニコ

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第二部 獣人武闘祭

第181話

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 カズネの口から、思いがけない闘士の名が出て、私は唖然とした。

 忘れられるはずもない。……過去に、私の腕を折った男だ。
 すでに完治しているのに、鈍い痛みが右肘に走ったような気がした。

 私は、大きくも小さくもない声で「ええ」と呟いた。
 カズネもまた、大きくも小さくもない声で、言う。

「私はそのゾーダンクの娘です」

*****

 獣将ゾーダンク――
 魔王の配下であり、魔王軍随一の獣人武闘家である。

 ……あれは、今からどれくらい前のことだっただろうか。勇者ラジアスと私、そして仲間たちは、ゾーダンクが率いている『魔王軍獣将隊』と戦った。

 戦いの最中、傷つき倒れていく部下たちの身を案じたのか、ゾーダンクはたった一人、前に出ると、同じ武闘家として、私に素手での一騎打ちを挑んできた。負けた方が、その地域から出ていくという条件で。

 ラジアスや仲間たちは『罠に違いない』と止めたが、私はそれを振り切り、ゾーダンクの一騎打ちを受けた。彼は恐ろしい男だったが、一度も卑怯な作戦を用いなかったので、武人としての心に嘘偽りはないと感じたからだ。

 私とゾーダンクの一騎打ちは、壮絶を極めた。

 私は、右の肋骨を四本折られ、左手の拳は砕けた。右目は割れた頭から垂れ落ちる血で、まったく見えなくなった。ゾーダンクは、左膝を破壊され、右手の指はすべて明後日の方向を向いていた。獣人族自慢の牙は折れ、左目はなくなっていた。

 いつまでも続く死闘の中、最後はお互い立ち上がる気力もなく、寝技での攻防となった。ゾーダンクはすべての技が優れていたが、寝技は特に、感動するほど見事だった。

 一瞬油断したときには、もう遅かった。
 唯一ダメージの無かった右腕を取られ、一気に折られた。

 ゾーダンクは、『勝った!』と思ったことだろう。私の左拳は壊れており、両足は折れてこそいないものの、幾度も食らった下段攻撃により、まともに力が入らない状態だった。それに加えて、右腕が破壊されたのだ。私の四肢は攻撃能力を奪われたも同然であった。

 ゾーダンクは、勝利の笑みを浮かべた。
 その笑みに、私は頭突きを打ち込んだ。
 血しぶきが舞い、彼の鼻が潰れた。

 その潰れた鼻に、再び頭突きを打ち込む。
 骨の砕ける音と共に、彼の頭蓋がへこんだ。

 そのへこんだ頭蓋に、私は三度頭突きを打ち込む。
 それでゾーダンクは、動かなくなった。

 私は、震えが止まらなかった。
 こんな恐ろしい男に、自分が勝ったのが信じられなかった。
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