二人分働いてたのに、「聖女はもう時代遅れ。これからはヒーラーの時代」と言われてクビにされました。でも、ヒーラーは防御魔法を使えませんよ?

小平ニコ

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第二部 獣人武闘祭

第310話(アニー視点)

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「近頃は、めっきり痩せちまいましてね。昔はもう少しガッチリしてたんですが」

 私は、先程つかまえた、彼女の痩せた腰の感触を思い出した。

「あの、どんな病気なんですか……?」

 ここまでずけずけと聞く権利は、私にはないだろう。
 しかし、気になって、聞かずにはいられなかった。

「ええっと、なんて言ったかな、悪性なんとか腫瘍、だったかな。すいません、正確には覚えてませんや。で、その腫瘍が、頭の中から何から、全身あちこちの内臓にできてるそうなんですわ。血液も、おかしくなってるんだったかな」

 悪性。
 腫瘍。
 頭の中。
 全身の内臓。
 血液もおかしく。

 これらの情報だけで、命にかかわる病気だということは、すぐわかった。

「わかりました、ヤクザ屋さんをやめて、入院するんですね」

「くくっ、ヤクザ屋さんか。そりゃいいや」

 フォルスさんは、私の言った『ヤクザ屋さん』という言葉がおかしかったらしく、軽く吹き出した。それから、小さく俯き、やがて私の目を見て、言った。

「病院には、行きません。私は、今まで沢山の命を奪ってきました。まあ、そのほとんどは『ヤクザ屋さん』ですがね……中にはきっと、気のいい奴もいたでしょう。そんな連中を殺しまくった私が、どうして自分の番が来た途端、病院に逃げ込んだりできるんですかい? そりゃあ、筋が通らんでしょう」

 私は、なんて答えていいのかわからず、黙り込んだ。

「それに、どっちにしろもう助からんのですわ。組織の中に、医者崩れがいるんですがね、そいつの見立てによると、もってあと半年の命だそうです。まあ、頭も痛いし、吐き気も凄いんで、そんなもんだろうとは、自分で思ってましたがね」

「そんな……じゃあなおさら、病院に行かないと。薬物療法か何かで、少しは苦しみが軽くなるはず……」

 フォルスさんは、首を左右に振った。

「これは、私なりの『けじめ』です。人殺しが安楽に死んじゃ、世間様に申し訳が立たんでしょう。ふふっ、苦痛にのたうち回って死ぬくらいで、ちょうどいいんですわ……ぐっ」

 笑いながら、フォルスさんは顔を顰めて頭を押さえた。
 先程、しこたま彼女の頭を殴ったことを思い出し、ずきりと胸が痛む。

「いや……しかし、参ったねこりゃ。赤の他人のあんたに、こんなに色々ぺらぺら喋っちまうなんて」

 フォルスさんは、自嘲気味な笑顔を浮かべた。
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