二人分働いてたのに、「聖女はもう時代遅れ。これからはヒーラーの時代」と言われてクビにされました。でも、ヒーラーは防御魔法を使えませんよ?

小平ニコ

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第二部 獣人武闘祭

第334話(ノエル視点)

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 タマちゃんが、帰ってきました。
 満面の笑みで、私に抱きついてきます。

 私は、思わずタマちゃんから逃げてしまいました。
 テレビで、さっきの試合を見ていたからです。

 タマちゃんは、きょとんとした顔で、私を見つめています。
 気がつくと、私は叫んでいました。

「もう限界だ! こんな化け物のおもりなんか、してられるか!」

 えっ。
 私、何を言っているの?

 タマちゃんは、びっくりしたように目を見開いた後、不安そうに私に駆け寄って来ます。

「寄るな! 化け物! なんだよ、さっきの試合!? お前、頭おかしいんじゃねえのか!?」

 またです。
 私の口から、私の声で、私が言うはずのない言葉が出ます。

 タマちゃんは怒鳴られたことで、びくりと肩を竦ませ、それからわんわんと泣きだしてしまいました。

 ガチャリ。
 戸の開く音がします。
 コーチが入ってきました。

 良かった。
 私はコーチに相談しました。

「ああ、コーチ、よく来てくれた。なあ、もう勘弁してくれよ。約束は一年だけどさ。駄目だ、もう無理だよ。耐えられない。『おともだちがかり』はもうたくさんだ!」

 駄目です。私の思っていることと、まったく違う言葉しか、私の口からは出なくなっているようです。

 コーチ、私、何かの病気なのでしょうか?
 どうすれば、いいんでしょうか?
 どどどどどどどどううううううすすすすれれれれ



※※※※※【ディーナ視点】※※※※※



 私は、戦慄していた。

 隣で一緒にテレビを見ていたミャオは、口を開けたまま、固まっている。恐らく、この試合を見ていたほとんどの人間が、こんな感じになっているのではないだろうか。

 彼女は、タマラは、化け物だ。

 化け物――格闘技に限らず、他のスポーツでもとびぬけた力を持つ者をそういうふうに形容することは、よくある。

 しかし、あれは、あの戦い方は、心ある人間のものではない。

 残虐すぎる。

 目を潰したり、爪や牙での攻撃はしてはいけないJ1グランプリルール。
 そのルールの中で、徹底的に相手を痛めつける方法を、彼女はおこなったのだ。

 タマラは、恐怖に泣きじゃくるドラム・ゼファーを、表情ひとつ変えずに殴り続けていた。喉を潰し、鼻を潰し、歯を全て叩き折り、耳たぶを千切り、ゴヘイに止められるまで、破壊の限りを尽くした。

 あの子は、暴力の権化だ。

 能面のような顔で、返り血を浴びながら機械的にドラムをなぶり殺しにする姿が、目に焼き付いて離れない。昨日、私の安っぽい帽子を宝物にすると喜んでいたあの可愛いタマラと、同一人物とは思えなかった。思いたくなかった。

 ミャオが、震える唇で、私に問いかけた。

「先生、僕、あの子に勝てるニャ……?」

 私は、その問いに答えることができなかった。
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