二人分働いてたのに、「聖女はもう時代遅れ。これからはヒーラーの時代」と言われてクビにされました。でも、ヒーラーは防御魔法を使えませんよ?

小平ニコ

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第二部 獣人武闘祭

第362話

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 パトリックと話していたのは、だいたい十五分ほどだったと思う。私は、彼と共に、ミャオとタマラの待つ部屋に戻った。するとすぐに、ミャオがうるうると目を潤ませ、私に飛びつこうとしてきた。
 
「せ、せんせぇ、やっと戻って来たニャ~。助かったニャ、これで気まずい空気から解放されるニャ」

 その言葉から察するに、『極度の人見知り』であるタマラと、どうやら上手くいかなかったのだろう。しかし、そんなミャオを押しのけるようにして、タマラが私に飛びついた。

「ディーナ、おかえり! コーチと、何の話してたの?」

 飛びつく先である私を奪われたミャオが、口を尖らせ、ぶつぶつと言う。

「な、なんで僕の先生にタマラちゃんが飛びつくのニャ……自分のコーチに飛びつけばいいのに……」

 私はミャオに『まあまあ、抑えて抑えて』と目くばせする。ミャオも、本気で不満に思っているわけではないらしく、素直に引き下がった。自分の方が年上だから、幼いタマラの好きにさせてあげようという気持ちがあるのだろう。ミャオ、本当に、大人になったわね。

 ミャオに微笑みかけてから、私はタマラの質問に答えることにした。

「ええっと、パトリックさんと、何の話をしてたのか……だったわね。パトリックさんにね、タマちゃんが、ノエルさんがいなくて寂しがってるから、なるべく一緒にいてあげてほしいって頼まれたのよ」

「なるべく一緒に?」

 タマラは、きょとんとした顔でそう言うと、ゆっくりとその言葉の意味を咀嚼して、顔を綻ばせる。

「じゃあ、あたし、ディーナの部屋で寝起きする! なるべく一緒にって、そういうことだよね? いいでしょ、コーチ?」

 パトリックは、優しい笑みを浮かべ、頷いた。

「やったー!」

 小躍りをしてベッドの上を飛び回るタマラ。
 その背中に、パトリックが声をかける。

「さあタマラ、そろそろ、試合に向けて調整を始めようか」

 私は、部屋にかかっている、異常なまでに豪華な時計を見る。

 いつの間にか、午後三時だ。

 アップを始めるにはまだ早すぎるが、そろそろ試合に向けての気構えを持つべき時間だ。レガリオ流のやりかたで、ゆっくりと調整していくのだろう。

 しかし、タマラは泣きそうな顔で、再び私に飛びついてくる。

「やだ! ディーナと遊ぶ! まだ何もしてないもん!」
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