二人分働いてたのに、「聖女はもう時代遅れ。これからはヒーラーの時代」と言われてクビにされました。でも、ヒーラーは防御魔法を使えませんよ?

小平ニコ

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第二部 獣人武闘祭

第383話

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「えっ」

「本当は、あたしのパパとママ、もう、死んじゃって、いないんでしょ?」

「なにを……」

「だって、一回も会わせてくれたことないじゃない。それに、職員のおじさんに言われたことあるんだから。パパもママもいないのに、よく頑張ってるねって。あれ、最初は親元を離れて、一人で頑張ってるねって意味だと思ったけど、パパとママは『本当の意味でいない』んでしょ? 馬鹿にしないで、もう、それくらいわかるんだから」

 小さく、パトリックの舌打ちが聞こえた。

 驚いた。薬物が抜けた影響だろうか、タマラは、私たちが思っていたより、ずっと賢いらしい。自分がデザイナーチャイルドで、一般常識的な意味での両親がいないことまでは分かっていないが、愛するパパとママが、この世にいないことは、職員たちの態度等で、見抜いていたのだ。

「あたしは、ディーナと行く。さよなら、コーチ」

 タマラは、私の腕を引くようにして、歩き出した。
 ミャオも、ちょこちょことついてくる。

 パトリックは、黙っている。

 ドアの前まで、来た。

 パトリックが、口を開いた。

「タマラ。ディーナさんとミャオさんを殺しなさい。さあ、上手にできるかな?」

 タマラは、言った。

「はい、わかりました。コーチ」

 その瞬間、禍々しく光る何かが私の首元に飛んでくる。
 私は背を反らし、それをかわした。
 それは、タマラの手から伸びた、剣のような爪だった。

「タマラちゃん!? 何するニャ!?」

 驚き叫ぶミャオに、タマラが飛びかかる。
 鋭い牙を、むき出しにして。
 私は飛び出し、ミャオを庇った。

 ぐうっ。
 肩の肉が、抉られた。

 久しぶりに聖女の結界を使ったのに、それが、いともたやすく切り裂かれた。なんて一撃なの。タマラの口元には、私の血肉がべっとりとついていた。

「せんせぇ!」

 いまだ困惑するミャオ。
 私は、状況を理解していた。
 怒りを込めた瞳でパトリックを睨み、叫ぶ。

「この外道! タマラに人殺しをさせる気!?」

 パトリックは、事も無げに言った。

「だって、仕方ないじゃないですか。あなたが悪いんですよ。タマラは我が国の宝であり、私の宝です。お渡しするわけには参りません」
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