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セシリアサイド 此処は何方?

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セシリアサイド

「大丈夫?」

目を開けると、綺麗な黒髪の見知らぬ方がわたくしを見ております。

「わたくし、どうしたのでしょうか?」
「セレナが壊れた」
「セレナ?わたくしはセシリアと申します」

見慣れない部屋の硬いベッドから起きると、見事な栗色の髪に見慣れない制服が見えます。

「此処は何処でしょうか?」
「……ごめん、名前、聞いても良い」

見知らぬ方が不安そうにこちらを見ていらっしゃるので、わたくしきちんと挨拶を、と思い名乗りました。

「ウィンストン公爵家長女、セシリアですわ」
「マジ!乙ゲーの悪役令嬢とおんなじ名前。てか、本人なの!」

乙ゲー?初めて聞いた言葉です。
わたくしを心配そうにみていた方は結城アリス様と仰って、漆黒の髪に同色の瞳をしたわたくしより少し年上の綺麗な方です。

アリス様の説明ですと、この世界はわたくしがいた世界とは異なる、日本という場所の全寮制の学園で、わたくしは天野セレナ様の体に居るそうです。

「TLや小説で異世界転生って設定の本読みまくってたけど、本当にあるんだ」

アリス様が頭を抱えておりますが、お顔を上げて力強く頷かれてます。

「セレナは図太いから大丈夫だと思うけどセシリアさんは、何というか……弱そうね」
「わたくし、それほど病弱ではありませんが」
「そっちじゃ無くって。メンタルが」
「メンタル?」
「精神的な事。乙女ゲームじゃ高慢ちきな悪役令嬢なのに……」

なにやら聞いてはいけない言葉にわたくしが呆然としていると、アリス様が薄い小さな板の様なものを見て下さいました。

「なんですの。こんな小さな板の様な物から声がします」
「これはスマホで、これがさっき言った乙女ゲーム。貴女はこのゲームではヒロインを虐めて断罪される悪役令嬢なの」

確かに板?スマホと言う物に映る意地の悪そうな令嬢はわたくしにそっくりです。

「……ですが、わたくし、まだ学園に入学しておりませんし、第一王子殿下と婚約もしておりません」

あらすじ、と言う物を読んでみましたがわたくしの認識とは違う物でした。

「ゲーム開始前って事ね」

アリス様がふむ、と何かを考えている様に顎に手を当て、スマホを見ていると、スマホの表面に文字が浮かび上がった。

『アリス、大変。私、悪役令嬢のセシリアたんになったみたい』

「えっ?セレナ?」

文字を食い入る様に読まれると、もの凄い速さでアリス様が文字を書く?打つ?兎に角、メッセージを書いております。

『こっちにはセシリアが居る』
『良かった。なら、むかつく奴ら、ぶっ飛ばしておくから安心してね、って伝えて』

良く分かりませんが、セレナ様は何をされようとしているのでしょうか?

「セレナ……。強火担だし浮気男嫌いだからなぁ」
「あの、セレナ様は何をなさろうと」
「多分。ゲーム設定を潰すつもりだと思う」

アリス様が、アイツ無駄にスペックが高いからな、と呟いていらっしゃいます。
わたくしはどうすれば良いのか分かりません。

スマホの画面に映る、わたくしの世界に似た絵を見ていると、顔見知りの方がいらっしゃるのに気が付きました。

「まぁ、シルヴァン様までいらっしゃるのですね」
「シルヴァン?誰それ?ゲームにはそんなキャラ、居なかったよ」

画面の端の方で見辛いですが、わたくしの友人のアリアンナ・ロードハイド侯爵令嬢のお兄様である、シルヴァン・ロードハイド侯爵令息の綺麗な黒髪が見えました。

「シルヴァン・ロードハイド侯爵令息。わたくしの婚約者になる方でしたのに、王家から待ったを掛けられた、とお父様が仰ってました」
「なんで待ったを掛けられてるの?」

アリス様が首を傾げているのでわたくしもつい、同じ様に首を傾げてしまった。

「ぐぅかわ。あざといのにあざとく無いってセレナなのに」

なにやら悶えていらっしゃいますが、大丈夫でしょうか?

「シルヴァンね。セレナに話しとく」

そう仰って、もの凄い速さでメッセージを送っています。
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