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セシリアが拐われてしまった
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ウィンストン家の馬車が到着した、と学園の者が戻ってきたアリアンナに声を掛けたので、セシリアに声を掛けようと会場内に目を向けた。
「セシリア様が……セシリア様がいらっしゃらない」
リリアンの悲痛な叫びにその場にいた者達の顔が青くなる。
皆、騒ぎの元であるミアが警備隊に拘束され既にこの場に居ない事で油断していた。
「マーカス殿下も居ない。しまった」
騎士訓練生のパーシモンが会場を見渡し、叫んだ。
「まさか、セシリア様を攫ったの?」
「あり得るぞ。マーカス殿下のあの執着は異常だ」
イザベルの顔色が白くなり、マキシムも悔しそうに眉を顰めた。
騒つく会場の中、周りの目が逸れセシリアが1人になった途端、マーカスがセシリアを攫い、行方をくらませたのだ。
王宮にて
アーロンはパーティー会場から先に戻り、父親であるアマルファ王に報告をする為、王宮の廊下を歩いていた。
漆黒の髪に青い瞳。何から何までアマルファ王に似ており、マーカスとは少しも似ていない。
アマルファ王の寵愛が誰にあろうともそれを今まで誰も気にした事もなかった。
「陛下に報告がある」
侍従に取り次ぎを頼み、王の執務室の前に立ち、どう報告するかを考えていた。
「どうぞ」
侍従が恭しく扉を開けると、部屋の中にはアマルファ王とシルヴァン卿が居た。
「失礼します」
アーロンが部屋に入ると、アマルファ王が目を上げ、ため息を吐く。
「マーカスがやらかしたな」
誤魔化しは出来ない様だ。
アーロンは頷くとサマーパーティーであった事をそのまま報告した。
「愚かだとは思っていたが、ここ迄とは思わなかった」
王命を勝手に破棄する、と言ったなどマーカスは王族としての自覚の無さを浮き彫りにしており、セシリアに対しての異常なまでの執着心は背筋が寒くなる。
「陛下、ご決断を」
シルヴァンが淡々とした声でアマルファ王を見た。
「ロードハイド侯爵令息。噂を真実である、と宣言せよ」
「御意」
アマルファ王は父親の顔では無く、為政者の顔でアーロンを見た。
「それと、陛下。1つ気掛かりな事もあります」
アマルファ王にアーロンはパーティーで見た現象を話し始めた。
「何処かの男爵令嬢が手を振り上げた時、その令嬢から黒いモヤの様なものが吹き出し、マーカスを包みました」
アーロンは2人の近くに居た為、薄いモヤの様な気配に気がついたが、会場に居た者達は多分気が付いていない。
「黒いモヤ?」
アマルファ王達が首を捻ったが、気のせいだろうと思った。
「セシリア様が……セシリア様がいらっしゃらない」
リリアンの悲痛な叫びにその場にいた者達の顔が青くなる。
皆、騒ぎの元であるミアが警備隊に拘束され既にこの場に居ない事で油断していた。
「マーカス殿下も居ない。しまった」
騎士訓練生のパーシモンが会場を見渡し、叫んだ。
「まさか、セシリア様を攫ったの?」
「あり得るぞ。マーカス殿下のあの執着は異常だ」
イザベルの顔色が白くなり、マキシムも悔しそうに眉を顰めた。
騒つく会場の中、周りの目が逸れセシリアが1人になった途端、マーカスがセシリアを攫い、行方をくらませたのだ。
王宮にて
アーロンはパーティー会場から先に戻り、父親であるアマルファ王に報告をする為、王宮の廊下を歩いていた。
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「陛下に報告がある」
侍従に取り次ぎを頼み、王の執務室の前に立ち、どう報告するかを考えていた。
「どうぞ」
侍従が恭しく扉を開けると、部屋の中にはアマルファ王とシルヴァン卿が居た。
「失礼します」
アーロンが部屋に入ると、アマルファ王が目を上げ、ため息を吐く。
「マーカスがやらかしたな」
誤魔化しは出来ない様だ。
アーロンは頷くとサマーパーティーであった事をそのまま報告した。
「愚かだとは思っていたが、ここ迄とは思わなかった」
王命を勝手に破棄する、と言ったなどマーカスは王族としての自覚の無さを浮き彫りにしており、セシリアに対しての異常なまでの執着心は背筋が寒くなる。
「陛下、ご決断を」
シルヴァンが淡々とした声でアマルファ王を見た。
「ロードハイド侯爵令息。噂を真実である、と宣言せよ」
「御意」
アマルファ王は父親の顔では無く、為政者の顔でアーロンを見た。
「それと、陛下。1つ気掛かりな事もあります」
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「何処かの男爵令嬢が手を振り上げた時、その令嬢から黒いモヤの様なものが吹き出し、マーカスを包みました」
アーロンは2人の近くに居た為、薄いモヤの様な気配に気がついたが、会場に居た者達は多分気が付いていない。
「黒いモヤ?」
アマルファ王達が首を捻ったが、気のせいだろうと思った。
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