[完結]18禁乙女ゲームのモブに転生したら逆ハーのフラグを折ってくれと頼まれた。了解ですが、溺愛は望んでません。

紅月

文字の大きさ
24 / 114

御前会議。

しおりを挟む
謁見の間を埋めているのは新アイテムの承認の為の錬成士達や法案審議の役人など大人達ばかり。

シルヴィーは来なくて正解だと小さく息を吐いた。
本当なら俺も居る方がおかしいが、今回はそうも言ってられない。

「では、新アイテムの承認についての議題から審議いたします」

ラリマーが書類を見ながら議題について話し始めた。

旧アイテムは精霊や魔獣の負担だけでなく、勇者や冒険者達にも負担を掛けており、早期の改善を望まれていた事から始まり新アイテムの効果は既に実証されている事が報告された。

ジルコニア伯爵達は興味がないのか欠伸を必死にかみ殺している様だが、お前らにも関係があるって事理解しろよ。

「……しかも、この旧アイテムは人間にも作用し行動を制御するものらしく危険だと判断され、既に製造、販売だけでなく使用も禁止する事になりました事も併せて報告します」

ジルコニア伯爵達がギョッとした顔でラリマー宰相を見ている。
慌てるのは当然だろうな。ジェイド総騎士団長の嫡男の様子を見れば旧アイテムで彼を支配しているのはまる解りだ。

「では、旧アイテムの排除と新アイテムの承認を認めよう」

国王の一言でこの件は決定となった。
ジルコニア伯爵が何かいいたそうな顔していたが、当然スルーされる。

「次は、錬成士カインの次期錬成士長への信任ですが……」
「信任!!ありえません。そんな平民が栄光ある錬成士長になるなんて、組織が瓦解します」
「ジルコニア伯爵令息、貴殿の発言は許してないが組織が瓦解するとは物騒な言葉だが、根拠でもあるのか?」

ぎろり、と現錬成士長が突然叫んだジルコニア伯爵の息子を睨んだ。

「平民は貴族よりも魔力が低い者ばかりです。そんな者達が栄光ある錬成士長の座に就くなど、組織が瓦解するのも目に見えております」

必死にジルコニア伯爵は言い訳を並べているが、こいつら本当に馬鹿だ。
貴族だって魔力の弱い奴もいる。逆に平民であっても強い魔力を持つ者は確実に居る。
其処をまるで分かっていない。

「国王陛下、では力量試しにこの魔法陣を発動させてみてはいかがでしょう」

俺が目で合図をすると魔術院の長官が恭しくシルヴィーの描いた魔法陣を差し出した。

「初めて見る魔法陣だが、見事な物だな」
「こちらはある一定の魔力が無いと発動しない物で、魔術院の者達でも発動出来るものは極限られております」

長官、試したんだ。

立派な白い髭を顎に蓄えて、どっかの魔法学校の校長みたいな好々爺っぽいが、こいつも見た目とは違いかなり強かな爺さんだ。

だけど、シルヴィーの魔法陣を見せたら狂喜乱舞してた。
根っからの魔術オタクの様だ。

シルヴィー、すまん。あの爺さんの暴走を俺は止められないから自分で逃げ切ってくれ。

意識が明後日に向かってたせいで爺さんの説明を聞いてなかったけど、此処は俺の出番じゃない。

「成程。ならば打って付けの物だな」

国王が納得したから魔法陣のテストが行われる事になり、公平を期す為コイントスで先に行う者を決めた。

「ジルコニア伯爵令息から試す様に」
「はい、有り難き幸せ」

小さな机に置かれた魔法陣は精密画の様に様々な呪文などが描き込まれている。
絵としても十分鑑賞の価値もあるらしが、魔術院の若い魔術師達は自分で描き写し、発動出来なくても御守りみたいに肌身離さず持っているらしい。

たった数日でこの浸透性。魔術院って怖い所だ。

ジルコニア伯爵令息が魔力を高め魔法陣に力を注ぎ込んだが何も起こらない。
何度も何度もそれこそ、のっぺりした顔に青筋立てているが、魔法陣はうんともすんともだ。

「何も起こらないですね」

ラリマー宰相が呆れた顔でジルコニア伯爵令息を見る。
ジルコニア伯爵令息が悔しそうに口を歪めているが、無駄だ。

「まぁ予想通り、かと。この魔法陣を発動させるにはレベル90近くの力が必要ですから」

爺さんの発言に周りは騒ついた。
当然だろうな。レベル90近くの魔術師なんてそうそう居ない。

俺だって発動出来るかどうかわかんねーしよ。
ついでに言えば、ジルコニア伯爵令息の魔力は多く見ても60前後だろう。しかも属性は土一択。実力は普通よりちょっと上、と言うところだ。
良くこれで錬成士長になれると思ったな。

「では、カイン錬成士。君の番だ」

錬成士長に促されて一礼をしたカインが魔法陣の前に立った。

ジルコニア伯爵令息は、どうせお前も出来ないだろう、とか思っているんだろうがその長い顎が外れる程驚きやがれ!!

カインはあの後、精霊王が派遣した精霊の指導を受け、魔力が飛躍的に上がったらしい。
レベルは多分100近い筈だし、複数の属性を使えるようになっている。

カインがゆっくりとした仕草で右手を魔法陣の上にかざすと、魔力を高め魔法陣に注ぎ込んだ。

さっきまでチラリとも反応しなかった魔法陣が柔らかな青白い光を帯び、ゆっくりとその光を四方へ拡げていく。

微かな響めきと、感嘆のため息が光を追いかけて行く。
足元を魔法陣の光が走るのを謁見の間に居る者達は目で追いかけ、床に光が溶け込むのをしっかりと目撃した。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした

ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!? 容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。 「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」 ところが。 ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。 無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!? でも、よく考えたら―― 私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに) お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。 これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。 じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――! 本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。 アイデア提供者:ゆう(YuFidi) URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464

《完》義弟と継母をいじめ倒したら溺愛ルートに入りました。何故に?

桐生桜月姫
恋愛
公爵令嬢たるクラウディア・ローズバードは自分の前に現れた天敵たる天才な義弟と継母を追い出すために、たくさんのクラウディアの思う最高のいじめを仕掛ける。 だが、義弟は地味にずれているクラウディアの意地悪を糧にしてどんどん賢くなり、継母は陰ながら?クラウディアをものすっごく微笑ましく眺めて溺愛してしまう。 「もう!どうしてなのよ!!」 クラウディアが気がつく頃には外堀が全て埋め尽くされ、大変なことに!? 天然混じりの大人びている?少女と、冷たい天才義弟、そして変わり者な継母の家族の行方はいかに!?

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』

透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。 「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」 そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが! 突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!? 気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態! けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で―― 「なんて可憐な子なんだ……!」 ……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!? これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!? ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆

悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない

陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」 デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。 そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。 いつの間にかパトロンが大量発生していた。 ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

処理中です...