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御前会議。
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謁見の間を埋めているのは新アイテムの承認の為の錬成士達や法案審議の役人など大人達ばかり。
シルヴィーは来なくて正解だと小さく息を吐いた。
本当なら俺も居る方がおかしいが、今回はそうも言ってられない。
「では、新アイテムの承認についての議題から審議いたします」
ラリマーが書類を見ながら議題について話し始めた。
旧アイテムは精霊や魔獣の負担だけでなく、勇者や冒険者達にも負担を掛けており、早期の改善を望まれていた事から始まり新アイテムの効果は既に実証されている事が報告された。
ジルコニア伯爵達は興味がないのか欠伸を必死にかみ殺している様だが、お前らにも関係があるって事理解しろよ。
「……しかも、この旧アイテムは人間にも作用し行動を制御するものらしく危険だと判断され、既に製造、販売だけでなく使用も禁止する事になりました事も併せて報告します」
ジルコニア伯爵達がギョッとした顔でラリマー宰相を見ている。
慌てるのは当然だろうな。ジェイド総騎士団長の嫡男の様子を見れば旧アイテムで彼を支配しているのはまる解りだ。
「では、旧アイテムの排除と新アイテムの承認を認めよう」
国王の一言でこの件は決定となった。
ジルコニア伯爵が何かいいたそうな顔していたが、当然スルーされる。
「次は、錬成士カインの次期錬成士長への信任ですが……」
「信任!!ありえません。そんな平民が栄光ある錬成士長になるなんて、組織が瓦解します」
「ジルコニア伯爵令息、貴殿の発言は許してないが組織が瓦解するとは物騒な言葉だが、根拠でもあるのか?」
ぎろり、と現錬成士長が突然叫んだジルコニア伯爵の息子を睨んだ。
「平民は貴族よりも魔力が低い者ばかりです。そんな者達が栄光ある錬成士長の座に就くなど、組織が瓦解するのも目に見えております」
必死にジルコニア伯爵は言い訳を並べているが、こいつら本当に馬鹿だ。
貴族だって魔力の弱い奴もいる。逆に平民であっても強い魔力を持つ者は確実に居る。
其処をまるで分かっていない。
「国王陛下、では力量試しにこの魔法陣を発動させてみてはいかがでしょう」
俺が目で合図をすると魔術院の長官が恭しくシルヴィーの描いた魔法陣を差し出した。
「初めて見る魔法陣だが、見事な物だな」
「こちらはある一定の魔力が無いと発動しない物で、魔術院の者達でも発動出来るものは極限られております」
長官、試したんだ。
立派な白い髭を顎に蓄えて、どっかの魔法学校の校長みたいな好々爺っぽいが、こいつも見た目とは違いかなり強かな爺さんだ。
だけど、シルヴィーの魔法陣を見せたら狂喜乱舞してた。
根っからの魔術オタクの様だ。
シルヴィー、すまん。あの爺さんの暴走を俺は止められないから自分で逃げ切ってくれ。
意識が明後日に向かってたせいで爺さんの説明を聞いてなかったけど、此処は俺の出番じゃない。
「成程。ならば打って付けの物だな」
国王が納得したから魔法陣のテストが行われる事になり、公平を期す為コイントスで先に行う者を決めた。
「ジルコニア伯爵令息から試す様に」
「はい、有り難き幸せ」
小さな机に置かれた魔法陣は精密画の様に様々な呪文などが描き込まれている。
絵としても十分鑑賞の価値もあるらしが、魔術院の若い魔術師達は自分で描き写し、発動出来なくても御守りみたいに肌身離さず持っているらしい。
たった数日でこの浸透性。魔術院って怖い所だ。
ジルコニア伯爵令息が魔力を高め魔法陣に力を注ぎ込んだが何も起こらない。
何度も何度もそれこそ、のっぺりした顔に青筋立てているが、魔法陣はうんともすんともだ。
「何も起こらないですね」
ラリマー宰相が呆れた顔でジルコニア伯爵令息を見る。
ジルコニア伯爵令息が悔しそうに口を歪めているが、無駄だ。
「まぁ予想通り、かと。この魔法陣を発動させるにはレベル90近くの力が必要ですから」
爺さんの発言に周りは騒ついた。
当然だろうな。レベル90近くの魔術師なんてそうそう居ない。
俺だって発動出来るかどうかわかんねーしよ。
ついでに言えば、ジルコニア伯爵令息の魔力は多く見ても60前後だろう。しかも属性は土一択。実力は普通よりちょっと上、と言うところだ。
良くこれで錬成士長になれると思ったな。
「では、カイン錬成士。君の番だ」
錬成士長に促されて一礼をしたカインが魔法陣の前に立った。
ジルコニア伯爵令息は、どうせお前も出来ないだろう、とか思っているんだろうがその長い顎が外れる程驚きやがれ!!
カインはあの後、精霊王が派遣した精霊の指導を受け、魔力が飛躍的に上がったらしい。
レベルは多分100近い筈だし、複数の属性を使えるようになっている。
カインがゆっくりとした仕草で右手を魔法陣の上にかざすと、魔力を高め魔法陣に注ぎ込んだ。
さっきまでチラリとも反応しなかった魔法陣が柔らかな青白い光を帯び、ゆっくりとその光を四方へ拡げていく。
微かな響めきと、感嘆のため息が光を追いかけて行く。
足元を魔法陣の光が走るのを謁見の間に居る者達は目で追いかけ、床に光が溶け込むのをしっかりと目撃した。
シルヴィーは来なくて正解だと小さく息を吐いた。
本当なら俺も居る方がおかしいが、今回はそうも言ってられない。
「では、新アイテムの承認についての議題から審議いたします」
ラリマーが書類を見ながら議題について話し始めた。
旧アイテムは精霊や魔獣の負担だけでなく、勇者や冒険者達にも負担を掛けており、早期の改善を望まれていた事から始まり新アイテムの効果は既に実証されている事が報告された。
ジルコニア伯爵達は興味がないのか欠伸を必死にかみ殺している様だが、お前らにも関係があるって事理解しろよ。
「……しかも、この旧アイテムは人間にも作用し行動を制御するものらしく危険だと判断され、既に製造、販売だけでなく使用も禁止する事になりました事も併せて報告します」
ジルコニア伯爵達がギョッとした顔でラリマー宰相を見ている。
慌てるのは当然だろうな。ジェイド総騎士団長の嫡男の様子を見れば旧アイテムで彼を支配しているのはまる解りだ。
「では、旧アイテムの排除と新アイテムの承認を認めよう」
国王の一言でこの件は決定となった。
ジルコニア伯爵が何かいいたそうな顔していたが、当然スルーされる。
「次は、錬成士カインの次期錬成士長への信任ですが……」
「信任!!ありえません。そんな平民が栄光ある錬成士長になるなんて、組織が瓦解します」
「ジルコニア伯爵令息、貴殿の発言は許してないが組織が瓦解するとは物騒な言葉だが、根拠でもあるのか?」
ぎろり、と現錬成士長が突然叫んだジルコニア伯爵の息子を睨んだ。
「平民は貴族よりも魔力が低い者ばかりです。そんな者達が栄光ある錬成士長の座に就くなど、組織が瓦解するのも目に見えております」
必死にジルコニア伯爵は言い訳を並べているが、こいつら本当に馬鹿だ。
貴族だって魔力の弱い奴もいる。逆に平民であっても強い魔力を持つ者は確実に居る。
其処をまるで分かっていない。
「国王陛下、では力量試しにこの魔法陣を発動させてみてはいかがでしょう」
俺が目で合図をすると魔術院の長官が恭しくシルヴィーの描いた魔法陣を差し出した。
「初めて見る魔法陣だが、見事な物だな」
「こちらはある一定の魔力が無いと発動しない物で、魔術院の者達でも発動出来るものは極限られております」
長官、試したんだ。
立派な白い髭を顎に蓄えて、どっかの魔法学校の校長みたいな好々爺っぽいが、こいつも見た目とは違いかなり強かな爺さんだ。
だけど、シルヴィーの魔法陣を見せたら狂喜乱舞してた。
根っからの魔術オタクの様だ。
シルヴィー、すまん。あの爺さんの暴走を俺は止められないから自分で逃げ切ってくれ。
意識が明後日に向かってたせいで爺さんの説明を聞いてなかったけど、此処は俺の出番じゃない。
「成程。ならば打って付けの物だな」
国王が納得したから魔法陣のテストが行われる事になり、公平を期す為コイントスで先に行う者を決めた。
「ジルコニア伯爵令息から試す様に」
「はい、有り難き幸せ」
小さな机に置かれた魔法陣は精密画の様に様々な呪文などが描き込まれている。
絵としても十分鑑賞の価値もあるらしが、魔術院の若い魔術師達は自分で描き写し、発動出来なくても御守りみたいに肌身離さず持っているらしい。
たった数日でこの浸透性。魔術院って怖い所だ。
ジルコニア伯爵令息が魔力を高め魔法陣に力を注ぎ込んだが何も起こらない。
何度も何度もそれこそ、のっぺりした顔に青筋立てているが、魔法陣はうんともすんともだ。
「何も起こらないですね」
ラリマー宰相が呆れた顔でジルコニア伯爵令息を見る。
ジルコニア伯爵令息が悔しそうに口を歪めているが、無駄だ。
「まぁ予想通り、かと。この魔法陣を発動させるにはレベル90近くの力が必要ですから」
爺さんの発言に周りは騒ついた。
当然だろうな。レベル90近くの魔術師なんてそうそう居ない。
俺だって発動出来るかどうかわかんねーしよ。
ついでに言えば、ジルコニア伯爵令息の魔力は多く見ても60前後だろう。しかも属性は土一択。実力は普通よりちょっと上、と言うところだ。
良くこれで錬成士長になれると思ったな。
「では、カイン錬成士。君の番だ」
錬成士長に促されて一礼をしたカインが魔法陣の前に立った。
ジルコニア伯爵令息は、どうせお前も出来ないだろう、とか思っているんだろうがその長い顎が外れる程驚きやがれ!!
カインはあの後、精霊王が派遣した精霊の指導を受け、魔力が飛躍的に上がったらしい。
レベルは多分100近い筈だし、複数の属性を使えるようになっている。
カインがゆっくりとした仕草で右手を魔法陣の上にかざすと、魔力を高め魔法陣に注ぎ込んだ。
さっきまでチラリとも反応しなかった魔法陣が柔らかな青白い光を帯び、ゆっくりとその光を四方へ拡げていく。
微かな響めきと、感嘆のため息が光を追いかけて行く。
足元を魔法陣の光が走るのを謁見の間に居る者達は目で追いかけ、床に光が溶け込むのをしっかりと目撃した。
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