[完結]18禁乙女ゲームのモブに転生したら逆ハーのフラグを折ってくれと頼まれた。了解ですが、溺愛は望んでません。

紅月

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ウィリアム視点 美しい魔法陣。

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「すみません。公爵様、公爵様のレベルを伺っても宜しいでしょうか?」

漸く魔法陣を描き上げたのか、シルヴィーがジルコン公爵に顔を向けた。

「100は超えているが?」
「よし、追加で木々の記憶も描き足せる」

まだ描くのか?と、思いながら紙いっぱいに描かれている魔法陣を見て、ほぅ、とため息を洩らした。

魔法陣、と言っても形は様々で、基本は漫画で見た事がある、円形の物だが、シルヴィーは円形の魔法陣に様々な魔法を組み合わせ、絵画の様な魔法陣を描く。

「美しいですな」

ジルコン公爵が、シルヴィーの魔法陣に賛美の声を向ける。

欠片も息子が死んだ、と思っていないのか、心さえ偽ってそう見せているのか、ウィリアムには判らないが、純粋にシルヴィーの描く魔法陣は美しい。

「効果はどのくらいで出るものなんだね?」
「検証をしていないので、はっきりした事は言えませんが、多分、1ヶ月以内には出ると思います」
「ほぅ、では新年の舞踏会には、なんらかの動きは有りそうだね」

ジルコン公爵の言葉に、シルヴィーは不思議そうに首を傾げたが、俺は嫌そうに眉をしかめる。

「俺は何もしないからな」
「おや、殿下は掃除はお嫌いの様ですな」
「なんで俺が、ジルコン家の掃除を手伝わなきゃならないんだよ」
「不用品を王宮に残しますが、宜しいですか?」

こいつヤダ。
俺が絶対、嫌がる形で後処理させようとしてるよ。

「王宮には、掃除好きが居るから、そいつに言ってくれ」

ラリマーなら、喜んで、ってか率先してやるぞ。

「年末の大掃除?王宮は広いから、大変そうですね」

解っててボケてんのか、素なのかわかんねーけど、シルヴィー、関係無いって顔すんな。

「描き上がりました。公爵様は魔法陣の真ん中に立って、魔力を魔法陣に注いで下さい」

そう言いながら、シルヴィーは部屋の窓を開ける。

見事な魔法陣に靴のまま乗るのが躊躇われたのか、ジルコン公爵は靴を脱ぎ、素足で魔法陣に足を乗せた。

複雑に絡み合う、黒いインクで描かれた魔法陣が、ジルコン公爵が足を乗せた途端、呼応する様に蒼緑に染まる。

静かに、力が注ぎ込まれる。
黒かった魔法陣が中心から波紋が拡がるように蒼緑になって、全ての魔法陣が蒼緑になった。

「発動」

重く響く声に、ウィリアム達は息を呑んで見守った。
魔法陣から次々と蒼緑の鳥や蝶だけで無く、花や兎などの小動物が生まれ、窓から外へと飛び出し、空気に溶けていく。

「美しいな」

どれだけ魔法が使える者がいたとしても、シルヴィーの様な美しい魔法陣を描く者は見た事がない。
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